第33話「触れたから良くない?」


ばさらの森武闘会。Bブロック準決勝が始まろうという頃。
会場から少し出た所で。

政宗「よお。その仮面。暑くないのか?」
竹中「……政宗君か。何か用かい?」
政宗「用って程のもんはねェがな。アンタ、この森に来てどれくらいになるんだ?」
竹中「何故そんな事を訊く?」
政宗「俺はこの森に世話になってからまだ一月程しか経ってねェが、ここの奴らがこの大会をスゲー大切にして、色々思い入れてんだろうって事くらいは分かるぜ。まぁ、祭りはド派手に楽しくやらなきゃ損だしな?」
竹中「………」
政宗「そんなPartyに無粋な真似するなんざ、アンタはきっとこの森の出身じゃねーんだろうと思ってな」
竹中「フッ…。一体何の話をしているのか分からないが。けれど確かに、僕と秀吉はこのばさら森の出身じゃない。君と同じ、人間界の住人だよ」
政宗「何…?」
竹中「動物の姿になった方が彼らに受け入れられるのも早いと思ったんでね。君のところの片倉君と同じように、ここでは異なる姿を取ってこの大会に参加している。……あぁだが、片倉君は大丈夫かい? 大きな怪我をしたと聞いたけれど。きっともうパンダの姿でいる事は叶わないだろうね」
政宗「テメエ…! 何で小十郎の事を…!?」
竹中「ハハ……こんな小さな森だよ? 噂なんて何処からでも流れてくる。まぁ、そんな事はどうでもいいじゃないか。僕は僕の目的の為にこの森にいる。政宗君、君には関係のない話だ」
政宗「そうとも思えねェ。……答えろ。さっきの試合、妙なもん投げ入れたのはテメエだな」
竹中「さっきの試合?」
政宗「とぼけるんじゃねえッ! 忍と女の試合だ。爆煙でごまかしたつもりだろうが――」
竹中「妙な言い掛かりはよしてくれ。大体、仮にあの北条の忍を勝たせたとして、僕に何の得があるって言うんだい? 勿論、豊臣方の僕としては織田側の人間が負けてくれるのに越した事はないけれど。ここにいる以上、敵は織田だけじゃない、北条だって同じ事さ。それに……」
政宗「むっ…」(ハッとして背後を振り返る。突然現れる影)
風魔「……………」
竹中「ほうら、政宗君。君が僕にいらぬ嫌疑を掛けるものだから、彼にまで無駄に疑われて、恨まれてしまったじゃないか。彼は誰の手を借りずともあの女を倒せた。そうだろう、風魔小太郎君?」
風魔「……………」←殺気オーラが濃くなる

秀吉「半兵衛」

竹中「…あぁ、秀吉。どうしたんだい、まだ君の試合までは間がある。こんな途中経過など見に来る必要はないと言っただろう?」
秀吉「貴様は何をしている」
竹中「別に、何も? あぁ、こちらの政宗君と風魔君が僕と親しくなりたいらしくてね。話しかけてくれたものだから」
秀吉「……行くぞ」
竹中「分かったよ。それじゃあ、お二人とも。また会おう」
政宗「おいッ! まだ話は――……ちっ!」
風魔「………」
政宗「……アンタも気付いていたようだな。テメエの試合だ、そりゃ当然、か」
風魔「………」
政宗「その様子だと、アンタ自身、あの竹中の野郎に助太刀される謂われはないようだな。…だが、奴はこの大会を操作している、それは間違いねえようだ。…明智は織田軍だったはずだが、或いはあいつも……」
風魔「………」
政宗「小十郎がやられたんだ、こっちも無関係ではいられなくなったな」
風魔「………」
政宗「…ははっ。何か、喋んねーのに、アンタの考えている事が分かった気になるから不思議だぜ。アンタもそうなのか。この森を弄られるのはむかついてるらしいな?」
風魔「………」(黙って飛び退り、消える)
政宗「ったく。ノーテンキな森の祭りだと思っていたのに。まぁ、勝者にゃ何でも望みを叶えるなんて言ってんだ、そうも言っていられねーか」

幸村「政宗殿〜!」

政宗「お、幸村」
幸村「ハアハア……。その、なかなか戻ってこられぬ故、どちらへ行かれていたのかと。もうすぐ佐助の試合が始まりますぞ」
政宗「おっ、そうだ、次はアンタんとこの忍だったな。よし、応援に行ってやるか。対戦相手は誰なんだ?」
幸村「それが皮肉な事に、佐助の許婚なのです」
政宗「許婚ェ!?」



審判「これより! Bブロック準決勝! かすがvs猿飛佐助の試合を執り行う! 始めえ!!」
観客「どわああああああ」
かすが親衛隊「うわあああああああん!!! かすがちゃああああああんっ!!!」
かすが親衛隊A「嘘だと言ってくれかすがちゃあああああああんっ!!!!」
かすが親衛隊B「その美しきボディが既に誰かのものだなんてイヤアアアアア(号泣)!!!」
かすが親衛隊C「しかもそこの猿だなんてイヤアアアアア!!!」(ダンダンと悔しがって地面を叩く)
かすが親衛隊D「婚約破棄してえええええ(滝涙)!!!!」


かすが「……おい。猿飛」(俯いたままふるふると肩を震わせる)
佐助「はいはーい。お手柔らかにねっ。しっかし、相変わらず凄い人気だねえ。主にマニアな方々から」
かすが「猿飛ィ……!!」(チャキンとクナイを手にして襲いかかるかすが)
佐助「うおっとお! ちょっとちょっと、いきなり攻撃って、そりゃないんじゃない? もっと正々堂々とさあ」
かすが「黙れ! 試合前に偽りの噂を流し、私を動揺させた卑怯なお前なぞに言われたくはない!!」
佐助「は? 何偽りの噂って? 俺様さっぱり意味分からないんですけど」
かすが「観客席にいる連中の事なぞどうでも良いがッ。お前のせいで…お前のせいで、よりにもよって謙信様が…!」(わなわな)
佐助「ん? 謙信公がどうかしたの? ってか、昨日の毛利戦、大丈夫だったみたいだね。随分長いこと闘っていたみたいだから、怪我とか平気かなって思ってたのよ。うちの大将も気にしてたし」
かすが「黙れえっ!!」
佐助「うわっ! だから、そんな殺気立って攻撃しないでって。俺様が避けるの上手くなかったら死んじゃうよ?」
かすが「まさに殺すつもりで攻撃している!」
佐助「へ? 駄目でしょ、この大会って相手殺したらその場で失格――」
かすが「どうでもいいわあっ!」
佐助「うひゃー!!」


政宗「おい、何だこの試合。猿飛の野郎、逃げてるだけじゃねえか」
幸村「やはり許婚を攻撃するのには躊躇いがあるのでしょう。佐助め…そもそも、大切な許婚をこのような危険な大会に出したのが間違いなのだ!」
政宗「けどよー、それってホントの話なのか? 何かその件について、あの忍のネーチャンが相当怒っているように見えるんだが……」
幸村「間違いありませぬ。何せ某、佐助当人からこの話を聞いたのですからっ! 知った直後は、さすがにお相手が我が武田と敵対する上杉方の忍とあって途惑いもしましたが……、お館様も祝福して下さり、今では某も佐助の友人として、この縁を心より祝ってやりたいと思っております! 何でも上杉謙信公も大変喜ばれているとのことで、武田と上杉、今回だけは協力してこの婚儀を盛大に執り行ってはどうかとの話も!」
政宗「ふうん? …おぉおぉ、けどあの女忍、マジで殺す勢いだなありゃ…」
幸村「そ、そうですな…。何というか、鬼気迫るというか…」(ごくりと唾を飲み込む幸村)


佐助「ちょっと旦那をからかってみただけだって〜! そんないきりたつ事ないじゃない! たかが許婚って言ったくらいで。何て言うのかな、そう! 軽い冗談よ、ジョーダン!」(かすがからの攻撃を避けながら言い訳をする佐助)
かすが「その冗談が既に森中に広がりきっているのはどういうわけだあっ!!」
佐助「そりゃあ…もう、武田軍みんなが喜んでくれたもんだから? 何というか、早まった大将を筆頭に皆がお祝いの準備とか始めちゃってえ。だからサ、この際ホントに結婚しちゃう?」
かすが「ふざけ……!」(あまりの怒りに、攻撃の勢い余ってもんどり打って倒れそうになるかすが)
佐助「おっ、危ない!」(それをすかさず受け留める佐助)


かすが親衛隊「ぎゃああああああ! かすがちゃんが舞武台であからさまに婚約者と抱き合ったあああああ【涙】!!!!!」


かすが「う……」
佐助「大丈夫か、かすが? だからそんなムキになっちゃ駄目だっていつも言ってるだろ?」
かすが「な…な……」
佐助「ん? あ? あー、あはは、咄嗟に抱きとめたから…あはは、あー気持ちいい」


かすが親衛隊「ぎゃああああああ! 猿の忍がかすがちゃんを抱きしめるついでに、あのグラマラスなお胸をさわさわしてるうううううう【悶】!!!!!」←いちいち解説じみた親衛隊


佐助「さわさわなんて、何か失礼な言い方だなあ。まるで俺様がムッツリみたいじゃん。なあ? 全部不可抗――…!?」
かすが「おのれ猿飛ィ〜!!!」←これまでにない火事場の力が噴出した!!
佐助「ハッ!? やば……っ」
かすが「うおおおおおおお!!!!!」(フツーにアッパーカット)
佐助「ぐはあああああああ!!!!!」(ふっ飛んだ)


審判「……ッ!! じょ……」


佐助「い……イチチチ。あ…あーりゃりゃ。ちょっと調子に乗り過ぎちゃったみたいね(汗)」


審判「場外! 猿飛佐助選手、場外です! 勝者、かすが選手!!」
観客「どわああああああ!!!!」



政宗「……おい、何か凄まじくあっさりと猿飛の奴、負けちまったぞ?(つーか、あいつ、はなから勝つ気なかったんじゃねーか…?)」
幸村「くっ…、や、やはり……、男が何かを成さんという時に、こここ、恋など……! 持ち出してはならぬのだ…!」
政宗「あん?」
幸村「うおおおおおお! お館様あああああ! この幸村、猛省致しましたあぁッ!! 気を引き締めまする〜【燃】!!!!!」
政宗「………何なんだ」


こうしてかすが選手のナイスバディを堪能できた代償に佐助は敗北。
以下、次号…!!




つづく



戻る