第59話「ラスボス襲来」


政宗と元パンダこと小十郎が豊臣秀吉のいる領地へと向かった頃。
武田軍領地、またその他の領地周辺でも、朝を待たずして布陣の整った織田軍による奇襲攻撃が勃発していた…!


佐助「旦那、そっちは大丈夫!?」
幸村「佐助かっ! お館様はご無事か!?」
佐助「まだ武田軍本陣にまで火の粉は上がってないからそっちは心配要らない。ただ織田の奴……自分たちに服従を誓う者の領地には踏み込まないと言ってたクセに、この各所のゲリラ攻撃だろ。幾ら何でもこんなムチャ、軍を統制する幹部たちがいなくなっているとしか思えない」
幸村「それは……ど、どういう事だ?」
佐助「魔王自身はせせこましいのが如何にも嫌いな御仁だから、こういう風に好き勝手暴れさせることに不自然は感じないけど。たぶん、濃姫や蘭丸たちなら、今後の支配を考えて、前田を始めとした同盟軍との関係も考慮した戦をしたはずだ。なのに、この異様な数の地雷に爆弾兵だろ…明らかにこれらを動かしているのはあのヤバイあいつ…明智の仕業だと思う」
幸村「明智!? あの明智光秀か!?」
佐助「お館様は本陣を動けない。いつ織田信長が仕掛けてくるか分からないからね。当初の予定通り、先陣は真田の旦那と島津公に任せるって事だから、とにかくこのゲリラ兵たちを抑え込みながら、旦那は明智を探してくれよ。俺サマも何か分かったら逐一報告するから」
幸村「わ、分かった…! 佐助、お前も油断するなよ!」
佐助「だーれに言ってるのサ? それじゃ、俺サマはこの事を島津公にも知らせてくるから! じゃあね!」(言うと共に姿を消す佐助)
幸村「明智、光秀…! 森の秩序を乱し、このように礼を失した戦を仕掛けるなど許せぬ…! 織田信長ともども、この幸村が…む!?」

――気合を入れた幸村の背後にかつてない殺気。

幸村「誰だ!? ……!? き、貴様は…ッ!?」
???「……くだらぬ蟻どもめ。屠っても屠ってもキリがないわ。これでは魔王も紛れて見えぬ。くだらぬ粉塵など撒かぬが良かろうに……」
幸村「な、何故貴様がここに…!?」
???「………? 貴様なぞ雑魚に用はない。織田信長はどこだ。或いは、武田の首領でも良いぞ……どちらも我の野望には邪魔な者」
幸村「なっ…! だ、誰が貴様なぞに我らがお館様を…! まずはこの真田源次郎幸村がお相手致す! ――豊臣、秀吉ッ!!」
秀吉「……我は時間が惜しい。遊びはせぬぞ……」


幸村が思わぬ形で豊臣秀吉と対峙、その戦火を切り拓こうとしている頃。


政宗「どうなってんだ…!? 戦というよりこいつは…!?」
元パンダ「豊臣側のどうぶつ達も殆どが領地を捨てて避難している様子…! これは明らかに織田側の奇襲を受けたものと!」
政宗「奇襲!? 織田軍の大半は武田の方へ行っているんじゃなかったか!? それに豊臣側にはザビーだの松永だのの配下もいて、それなりの手勢も揃っていたはずだ!」
半兵衛「その…通りだよ……」
政宗「竹中!?」
元パンダ「貴様だけか!? 他の者は!?」
半兵衛「まったくやってくれるよね…。大体、ザビーや松永は君たちが早々に彼らの頭に手を出してくれたんじゃないか…。大将のいない有象無象など何の役にも立たないよ。所詮、利益だけで繋がっていた連中だ…」
政宗「おいお前! 怪我してんのか!?」
半兵衛「触らないでくれ…ッ! 僕は誰にもやられていない!!」(しかし明らかに息を継ぎ、苦しそうにする半兵衛)
元パンダ「……貴様、やはり病を」
政宗「病!? お前……どっか悪かったのか!?」
半兵衛「どこから聞いた噂なのか知らないけど…、フッ…森のどうぶつ達も与太話をするのが好きらしいね…」
元パンダ「この竹中は豊臣秀吉の優秀なブレーンとして以前より名の知れた者でしたが…。普段は城に籠り外に姿を見せる事はめったになく、この痩身から言っても何らかの病を負っているのではと常々話されていたのです」
半兵衛「ふん…」
政宗「そうなのか…? まぁ確かに…。お前は、あんまり戦い向きの見てくれはしてねえもんな」
半兵衛「甘く見ないでくれないか…。君たち如き、秀吉が出るまでもない。僕一人でだって…」
政宗「足下フラフラで何言ってんだよ!? 大体、この様子は何だ!? 織田の野郎に攻められたのか!? お前の大将は何処へ行ったんだよ!?」
半兵衛「ふん……君には…‥関係、ない、事だろう…?」
政宗「関係大ありだッ! 俺だってこの森の住民だぜ!」
元パンダ「政宗様…?」
政宗「そうだろ。一時的に、だがな。ここは……割と、好きだぜ。だからなぁ、こんな風に、この辺りが地雷原になって荒れているのも、火の海に包まれることも、到底許せる事じゃねーんだよッ!」
半兵衛「………」
政宗「お前らの森だろ!? 何でこんな事になっちまってんだ!?」
元パンダ「政宗様!?」
政宗「!?」
爆弾兵「死ねええええ!!!!」(突然背後から襲ってくる、背中に爆弾を背負った兵隊)
政宗「ちいッ!!」(刀を出してそれを迎え撃とうとする政宗)
元パンダ「政宗様!?」
爆弾兵「……!? うおおおおおおお!!!」

―大きな轟音と共に爆発音が響き渡る。咄嗟に半兵衛を託された元パンダ・小十郎は、轟音と共に土煙に巻かれた政宗の姿を目視することができない!!

元パンダ「政宗様!?」
半兵衛「……何故」
政宗「……ったく。こいつら。人間だな」
半兵衛「!!」
元パンダ「政宗様…!」(ほっとしつつも、政宗が横抱きにしている者を見てぎょっとする)
政宗「おい、変だと思ったんだ。この爆弾兵……どうぶつじゃねえ。人間じゃねえか…」
半兵衛「……君には呆れるよ政宗君。君を殺そうとした特攻兵を助けたのかい?」
政宗「俺の質問に答えろ。こいつは爆発のショックでのびちまって口がきけねえ。お前ン所の豊臣や織田軍が大量に入手したあのバナナ爆弾…。それを何処からか運びこんでお前らに流し、こうして自らも特攻かまして戦に参戦している奴らは……人間、なんだな?」
半兵衛「……当たり前じゃないか。森のどうぶつ達があんな物騒なものを扱えるわけがない。いつだって戦を起こすのは人間だ。僕たちのようなね」(言うと同時に、半兵衛の身体が煌煌と光り出す! それに戸惑ってこじゅは思わず支えていた半兵衛から身体を離した)
元パンダ「む…! た、竹中、お前…!」
政宗「……!!」
半兵衛「……何だい、何を驚いているんだい、片倉君。君だってこの間これをしたばかりだっただろう。何の事はない、ただの脱皮じゃないか」(半兵衛の猫耳と尻尾は取れ、完全なヒト型となる。※以前にも説明しましたが、この森のどうぶつ達の基本外形はほぼヒトです・爆)
政宗「猫は仮の姿、か」
半兵衛「全てはこの森を掌握する為だ。ここは神の住まう土地。そして神が見捨てた土地でもある…。僕はそこで絶望を味わった秀吉に…、彼の力になりたかった、それだけさ」
元パンダ「神が見捨てた、だと…?」
半兵衛「しかしまっとうな戦がここで通用しない事ももう少し考慮に入れるべきだった…。僕とした事がぬかったよ。……明智は個人の欲のみで動く俗物でね。彼の望みははただこの森を混沌に陥れる、それだけなのかもしれない。だから僕らについたり織田についたり忙しない……それも理解しているつもりだったのだけれど…」
政宗「お前らの領地を攻めているこの特攻兵どもは明智の手の者って事か?」
半兵衛「名目上は織田軍だよ。彼はああ見えて魔王の優秀な臣下の一人だ。…だからこそ、時にはその頭脳であの魔王すら手駒にする」
政宗「魔王を駒に…?」
元パンダ「政宗様!!」
政宗「!!」
半兵衛「は……。まさかこうも早く登場するとはね…。まぁそうか。暴れることこそ至上。高みの見物は性に合わないって事だね」
???「ふうぅ……。実に、つまらぬ夜よ……乾くわ」
政宗「……ち。単なるオッサンのくせによ…! 夜なんかに見ると、本物の魔王に見えるから参るぜ」
元パンダ「織田信長…!!」

織田信長「おうおう……小粒な獣が3匹か……。酒宴の前の余興にもなりはせぬわ……」


――3人の前に突如現れたのは織田軍の将・魔王こと織田信長。

以下次号…!!




つづく



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