君が冷たい理由



  京一はひどい。

  いつもは優しいのだ、とは龍麻も思う。 いつも近くで戦ってくれる。いつも傍で笑ってくれる。 いつも支えてくれる。
  いつものアイツは優しい。
  だけど。

  アレの時は本当に嫌だ。


「 ん…! ぃ…っ…やぁっ、ああっ!」
  京一の乱暴な所作に、龍麻は悲鳴のような声をあげた。
「 京…待って、ま……や…ぁ、んっ…!」
  制止の言葉は邪魔だと言わんばかりに、京一は龍麻には応えず代わりにより一層強く自らの腰を打ち付けてきた。
「 ……っ!」
  あまりの痛みに一瞬声すら失って、龍麻はぎゅっと目をつむった。そんな閉じた瞳からは涙がこぼれた。


  放課後、「 今日、お前ン家行っていいか?」と聞いてきた京一に、龍麻は何ともなしに頷いた。 それから、ああ今日はやるんだろうな、などと思った。
  案の定、夕食を摂る前から始まって。


「 はっ…ぁあっ! きょ…も、だ、めぇ…っ!」
「 龍麻…まだ、だぜ…?」
  きつく身体を拘束された。ひどい痛みが連動して続く。
  強引に挿入を繰り返す京一に、 龍麻は気が変になりそうになりながらも、ただ喘いで助けを求めた。恥ずかしいくらいぼろぼろと涙がこぼれたけれど、それを拭うことも許されなかった。それでも痛みを緩和させるために、自分を犯す京一の首にしがみついた。

「 …っ…! あぅ…っ…い…いぁっ…!」
  痛い、という単語すら満足に言わせてもらえずに、 龍麻は抗議するように京一の背に爪を立てた。すると京一はそんな相手を余計にいたぶろうとでもするかのように、より一層龍麻の両足を大きく開かせ、その間に入っていた自らの身体を何度も揺らした。先刻より一層激しく貫いてくる。そうして苦しむ龍麻をどんどん追い詰めるのだ。
「 くっ…、やぁ…っ! や…め…きょ、いちぃ…」
「 すっげぇ…。…お前、やっぱ…最高ッ…」
  興奮したように京一は言った。うっすらと瞳を開くと、京一の薄く笑ったような顔が見えた。
  何だかその顔はすごく意地悪に見えた。

  バカ…やろう…。
  もうその言葉は言えなかったけれど。 龍麻はそれだけを心の中でつぶやいて、意識を奥へと閉まった。


  最初に京一とセックスしたのは、一体いつの頃だっただろう。
  ある日突然、京一は龍麻を抱いた。
  嫌だとは思わなかった。
  京一がバカみたいに繰り返した「好きだ」という言葉は本当だと思ったし、大体、龍麻自身が京一のことを好きだと思っていた。その「好き」は別にこうやって女のように扱われて抱かれたいなんてことではなかったのだが。
  京一に依存しているのは間違いなかったから。 京一にこれからも傍にいてもらう為には、 中に入れられるくらい、大した事ないと思った。
  思ったんだけれど。





「 あ、やべえ、もう始まってるじゃん」
  何だか騒がしい音がして、龍麻は目を覚ました。
  部屋の電気はついていなかったが、京一がつけたテレビの光がいやに眩しくて、龍麻は目を細めた。 身じろごうとしたけれど、身体が鈍い痛みを伴っていた。動けない、と思った。
  京一はベッドに寄りかかった格好でテレビを見ていた。背後からでは京一の顔を見ることはできない。 けれど投げ出して座っているような両足が見えて、ズボンは履いているらしいこと、それから上半身はまだ裸であることは分かった。もう少し目をこらすと、その逞しい背中と京一の赤い髪がおかしそうに揺れていた。テレビを見て笑っているようだった。
  むっとした。
「 京一…」
  なのに、その相手を呼んだ声はどこか甘えたようなもので、龍麻は自分で戸惑った。
「 ん…ああ、目、覚めたのか」
  京一が振り返って龍麻の方を見た。上体をぐるりと向けて、やや身体を浮かす。手にはビールの缶があった。
「飲むか?」
 差し出してきて、京一は口の端をあげて笑った。 テレビの差す明かりから京一の瞳がいやに綺麗に光った。
 けれど龍麻は黙って首を横に振った。
「 何、いらないのかよ?」
「 今…何時…?」
「 22時。 ひーちゃんも見るか? 俺、この番組毎週楽しみにしてんだよなー」
  そう言って京一は再び視線をテレビにやるべく、 龍麻に背を向けてしまった。痛みに苦しむ龍麻のことを気遣う様子は微塵もない。
  この野郎…。
  後ろから殴りつけてやりたい気持ちに駆られたが、如何せん今は身体が動かない。龍麻はただ悔しくていたたまれなくて、ぐっと唇をかんだ。


  京一は、ひどい。そう思った。
  いつもいつも。
  セックスの後の京一は冷たい。





  翌朝、 腰に鈍い痛みを感じながらも、龍麻は無理やり登校した。
  京一が昨夜うちに泊まったことはみんな知っているし、それで休んだら何を詮索されるか分からない。京一はバカだから調子に乗ってあることないこと話してしまうかもしれない(といっても、実際にやることはやっているのだが)。
  とにかく行為の後の次の日は、龍麻は気が気ではなくて、どんなにだるくても登校してしまうのだった。そして
京一の方は、ろくに挨拶もしないで部活があるとかで先に行ってしまっていた。
 何が部活だ。 いつも出ないくせに。
「 龍麻。おはよう」
  美里だった。龍麻がはっとして背後に立っていた美里に挨拶すると、相変わらずの菩薩スマイルで彼女はさらりと涼し気な声を出した。
「 昨日は大丈夫だった?」
「 なっ、 何の話…?」
「 もし何かあったらいつでも相談してね? 私は龍麻の味方だから」
「 み、美里?」
「 あ、私、生徒会の用があるの。悪いけれど、先に行くわね」
  美里は戸惑いまくる龍麻を置いてさっさと行ってしまった。早くなる心臓の鼓動を抑えきれずに、龍麻は冷たい汗をかきながら、まさか京一はみんなに喋っているのだろうかと不安になった。
  京一に対する怒りが、龍麻の中で加速度を増した。
「 おっ、ひーちゃん!」
  教室に入ると、そんな不機嫌の頂点に達している龍麻に、当の京一が何事もないかのような笑顔で真っ先に挨拶してきた。にこやかな、いつもの「相棒」の京一だ。昨夜のあれは一体何なのだと思うくらいの、いつもの、自分が大好きな京一。
「 遅かったな。遅刻するかと思ったぜ」
「 ………うるさい」
「 あ?」
「 黙れ」
「 ひ、ひーちゃん…?」
  驚いて聞き返す京一に、しかし龍麻は応えなかった。もう我慢の限界も超えていた。今まではいくら冷たくても、ひどい奴だと思っていても「自分も京一を好きで頼っている」という負い目から目をつむってもきた。
  でも、もう嫌だ。
  自分ばっかり損してないか?
  一度そう思ったらもう止まらなかった。龍麻は初めて京一に自分の不満を露にして、後はもう黙りこくった。
「 ひーちゃん、どうし…」
「 どうもしないよ。 鐘鳴ったぞ。さっさと席つけ」
「 ………お、おう」
  京一が戸惑って不安そうな顔をするのが目に入ったが、それでも無視した。荒々しく教科書やノートを出したが、とても勉強などする気分ではなかった。
  授業中、何度も京一が視線をこちらにやるのにも気がついていたが、仏頂面のままだった。京一がこんな風に不機嫌な自分に心配そうな顔を向けてくるということは、やっぱり京一は自分のことが好きなんだろうなとは思ったし、実際、好きでなかったら男とセックスしたいなんて考えないだろうとも思うのだが、でもこっちだってたまには冷たくしてやる、と龍麻は意を決して頑なな表情を崩さなかった。
「 なあ、ひーちゃん、何を怒ってるんだよ?」
  たまりかねたように京一が訊いてきたのは昼休みに入ってからだった。何度か試みるように明るく話しかけても、龍麻がぶすっとしたまま何も応えなかったからだろう。
「 なあ! せめて何にむかついているかくらい―」
「 別に」
「 別にってことはねえだろうが! 明らかに怒ってるだろ? 何だよ、俺が何したって言うんだよ!」
  しまいには京一も声が乱暴になった。龍麻は一瞬泣きそうになって、不快を保っていた表情を緩めた。自分に怒る京一というのに慣れていなかった。
 京一は京一で、龍麻の怯えたような哀しそうな顔を見て、途端に威勢の良い顔がしぼんでしまった。

「 あっ…。ひ、ひーちゃん、悪ィ、その…」
「 京一クン」
  その時、たまりかねたのか美里が2人の所にやってきた。
「 ちょっといいかしら? 話があるのだけれど」
「 えっ! い、いや、今俺はだな」
「 ダメかしら?」
  断るなんて許さないわよ?というようなオーラ。京一は渋々美里の後をついて、教室を出て行ってしまった。
  その後、案の定一部始終を見ていた醍醐と小蒔が近づいてきて、龍麻を心配そうに見やってきた。
「 どしたの、ひーちゃん? 京一とケンカでもしたの?」
「 ああ、お前も京一も何だかおかしいぞ。俺で良かったら相談に…」
「 みんな…知っているの?」
  龍麻は俯きながら言った。どうか赤面していませんようにと願う。
  その意に反して、2人は龍麻の質問にきょとんとした。
「 知っているって? 何が?」
「 分からないから俺たちが訊いているんだろう?」
「 え……」
  龍麻が顔をあげて2人を見ると、なるほど本当に事情は知らないのだろう、不思議そうな顔をしている友人たちの顔が見えた。少しだけ安堵した。しかし、それなら美里は?
「 美里…京一に何の話があるんだろう…」
「 え? ああ、それは京一とひーちゃんがケンカしてるっぽいから、京一を懲らしめに行ったんでしょ」
「 懲らしめ…?」
  龍麻が怪訝な顔をすると、桜井ははっとしたようになって慌てて両手を振った。
「 ああっ!  そうじゃなくって! ほら、美里ってひーちゃんびいきでしょ? だから京一に注意しに行ったんじゃない? 何だか分からないけど、ひーちゃんを困らすなって」
「 そんな…」
「 ま、まあ美里のことはあまり気にするな。 それよりお前たち、何を揉めているのかは知らないがこんな時だ。 あまり長引かせず、さっさと仲直りしろよ」
  醍醐がごほんと咳き込みながらそう言った。
  龍麻は黙って頷いた。



  午後の授業が始まる直前になって京一と美里は帰ってきた。
  美里は相変わらずにこにこしたままだったが、京一の方は妙な油汗をかき、何やら憔悴していた。それでも相変わらず龍麻の方をちらちらと見ては、ひどく気にしているような視線を送ってきていた。
  龍麻は醍醐に言われたことを片隅で気にしながらも、やはりそんな京一の視線をことごとく無視してしまった。
「 醍醐。 ちょっといいか」
  そんな憂鬱な一日が終わろうとしている放課後。
  京一は龍麻にではなく、醍醐のところへ一番に向かって行った。龍麻はそれを目にしないようにしながらも、やはり何となく気になって意識をそちらへと向けてしまっていた。
  だって京一はいつも放課後は一番に自分のところへ来るのに。
「 ああ、俺は構わんが。しかし…」
  醍醐がちらと龍麻の方を見たが、しかし京一は半ば強引に戸惑う親友を連れて、龍麻の方は見ずに教室を出て行ってしまった。

  何だよ。
  今度はお前が無視かよ。

  頭の中でそんな言葉が浮かび、またずきんと胸が痛む。
「 龍麻」
  その時、美里が寄ってきて龍麻の肩に優しく触れてきた。
「 京一君たちね、 屋上に行ったんだと思うわよ?」
「 え…。ど、どうでもいいよ、そんな事…っ」
「 駄目よ、 行って」
「 み、 美里…」
「 彼が冷たい理由…分かるかもしれないわよ?」
「 ……?」
  美里の菩薩スマイルの裏にある妖艶な雰囲気に飲まれながら、龍麻は背中を押されて教室を出た。



  屋上には美里が言った通り、 京一と醍醐がいた。
  声はかけられなかったから、ドアの陰に隠れて、そっと2人の様子を伺った。2人が出て行ってからあまり時間差はないと思うのだが、向かい合って喋る京一たちの様子は明らかにどこかおかしかった。
  いつもは堂々としている醍醐があたふたとして汗を大量にかき、先ほどまで困惑していた京一の方が、 どことなく強気の表情のような、そんな感じだった。
「 きょ、京一…お前な…」
「 いいから聞いてくれよ。 お前だから話すんだからよ」
「 し、 しかしだな」
  言いかけた醍醐を黙らせ、京一は堂々と言った。
「 お前はそういう顔をすると思ったよ。でもな、俺は…俺は本気なんだよ。ひーちゃんが好きなんだ」
  京一の言葉に龍麻ははっとした。じっと京一に視線を送る。いつも好きだと思う、強い眼を湛えていた。
「 好きなんて言葉じゃ括れねェな。愛してるって言葉も、何だか俺が言っちまうと嘘くさくてよ。だから…俺はひーちゃんとセックスするんだ。ひーちゃんを抱いている時だけ、俺はその時だけ、あいつを自分のものにできた気がして安心するんだよ」
「 せっ…!」
  目を回しそうになって、醍醐がくらりと身体を揺らした。
  親友の衝撃的な告白に面食い、気絶でもしかねないような様子だった。常識派の醍醐だ、それも当然であろう。
「 …俺、 知ってるんだ。ひーちゃんは俺が想うように、俺のこと想ってないってな。俺とは違って、ひーちゃんは俺とは寝たがらない。…まあ、当たり前だよな、俺と違ってただ突っ込まれるだけだし…」
「 ちょ…京一…ちょっと待ってく…」
「 だけど! 俺はひーちゃんが欲しくて仕方なくて…だからいっつも自分勝手に始めちまう。始まったらもう訳分かんなくて…あいつ泣いてんの分かってんのに無理やりしちまって…。ホント、合わせる顔ねーっていうか。だから、どうしてもやった後は、さ。何だか顔が見られねェんだ。どうしていいか分からなくなるんだよ」
  最早醍醐は顔をトマトのように真っ赤にして、汗を拭きながら立っているのがやっとのようだった。
「 …けど、だからって俺はあいつに謝りたくはねえんだ。そんなことしたら、余計あいつに悪いじゃねェか」
「 京一…」
 龍麻は思わずつぶやいていた。京一の名前を呼んでいた。どきどきした。鼓動が早くなって、何だか息苦しかったけれど、それでも、まるでもう一度告白されているような気がして、京一から目が離せなくなっていた。
  京一の方も最早独り言のように続けていた。

「 ったく、ホントどうしようもねェ…。こんな事本人前にして言えないしな。だから…悪いな、ひーちゃん」
「え…?」

  言った瞬間、京一がすっと龍麻がいる方向へと視線をやってきた。龍麻がいることを知っていたのだろう。真っ直ぐな視線が龍麻を捕らえてきた。
「 京一…」
  それで龍麻もドアの陰から、静かに京一の前に姿を現した。

「 た、龍麻…」
  醍醐がつぶやいたが、それもただ機械的に名前を呼んだだけだろう。2人にしろ、もう互いのことしか見ていなかった。
  京一が先に龍麻の方へと歩み寄った。
「 なあ、ひーちゃん。本当はさ、俺のこと…」
「 好きだよ…」
  龍麻はもう京一に抱きついていた。
「 好きでなかったら…あんな嫌なことできないだろ」
「 やっぱ嫌だったんだな…」
  京一が沈んだ声で言ったが、龍麻はその後ゆっくりと首を振った。
「 京一が俺のこと見てないような気がして…ただ、やられてるって思ってたから…だから嫌だったんだ。でも、京一のことはすごく好きだよ」

  だから。京一がすごく好きだから。
  素っ気無くされて、冷たくされたと感じてしまって、悲しかった。
  だけど、今は。

「 ひ、ひーちゃん」
「 俺、ごめんな…。何か、勝手にむかついてて」
「 そんな! ひーちゃん! ひーちゃんは悪くねえよ! 俺がもっと優しくできればさ」
「 ううん。 もういいよ」
  龍麻はそう言った後、少しだけ頬を染めながらそっと言った。
「 な、今日…うち来るか?」
「 え!? い、いいのか?」
  龍麻が頷くと、京一はぱあっと明るい笑顔になって龍麻のことをぎゅっと抱きしめた。
「 ひーちゃん! あのな、あのな、本当はもっとひーちゃんも気持ちよくなれるはずなんだよ! 俺が下手だから痛い思いもさせちまったけど! 俺、結構研究してんだぜ!」
「 バ、バカ…だなあ」
 京一の子供のように嬉々とした顔を見て、龍麻は苦笑しながらも、それでもとても嬉しくて幸せな自分を実感していた。

「 じゃ、よ! 早速行こうぜ! な、な!」
「 あ…醍醐…」
「 あん?」
  やっと思い出したようになって京一は醍醐の方へ振り返った。
  醍醐はぐったりとした様子で2人に背を向けたまま、よろよろと片手を振った。
「 お、俺のことは構うな。お前ら、もう行け」
「 …醍醐」
  龍麻は何だか恥ずかしくなって赤面した。京一の気持ちを知ることができたのは嬉しいけれど、醍醐に知られたのはやはり気まずい。
  龍麻の心根に気づいたのか、京一が少しだけ申し訳なさそうな顔をした。

「 ひーちゃん、ごめんな。内緒にしてようって言ってたのによ。けどよ、このまま誤解されたままだと、ひーちゃんが俺から離れちまうとか美里が脅すもんだからさ」
「 美里が?」
  そうだった。ここへ行くように自分を仕向けたのは美里だった。
「 ああ。だから、本人に直接言いにくいなら、第三者に告白して、それを間接的にひーちゃんに聞いてもらえばって言ってさ。俺もどっかで自分の想い話しておきたかったし。で、 醍醐に」
「 お、お前は俺を何だと…」
「 親友だよ。俺、いい加減、お前に隠し事してんのにも、限界感じてたしな」
「 ……」
  口をぱくぱくと開いて、醍醐は何か言おうとしたが、結局黙りこくってしまった。
「 醍醐にならいいだろ、ひーちゃん」
  京一が不安そうに龍麻の顔を覗きこんだ。そんな表情すら龍麻には嬉しかった。 だからすぐに「 うん」と頷いて見せた。
「 俺…京一の気持ち聞くことできたから…嬉しいよ」

  京一はちゃんと俺を好きでいてくれた。
  俺を大切に想ってくれていた。
  だったら、少しくらい乱暴だって。
  終わった後、ちょっとくらい素っ気無くたって。

「 京一。帰ろう」
  何だかそれすら愛しい。龍麻はやっと安心して、京一を見ることができた。



  ちなみに、後に残された醍醐は。
  未だ止まらない滝のような汗をそのままに。
  ふらふらと屋上の柵まで歩き、そこに身体を預けると、苦虫をかみつぶしたような顔で一人、つぶやいた。

「 美里め…。俺が何をしたというんだ。俺がこうなることを予測して、楽しんでやったとしか思えん」
  そして、意地でも美里の前では冷静でいてやろうと固く決意するのだった。

  去って行った2人の、幸せそうな後ろ姿を思い浮かべながら。



<完>





■後記・・・冷たい京一を書きたかったのですが、全然冷たくなくなってしまいました。まあ、いいか・・・ラブラブだから(ってーかバカップルも良いところ・・・)。そしてこんなどーしようもない話なんですが、あやる様に受け取って頂きたく・・・。あと18禁的な要素の部分は、「もっとエロイの書いて!」とリクエストして下さった方に奉げます(笑)。つ、疲れた。