11月19日(月)〜薄幸の文学美青年〜


水岐「……フッ。遂に僕の出番か……」(かなり自分に酔いながら登場)


―待ち合わせ指定となっている某公園。まだ待ち人の姿はない―


水岐「ああ、緋勇君…僕の可愛い天使…。今まで醜く汚い俗物共に君の美しい魂がさらされてきたのかと思うと、僕のこの胸は張り裂けんばかりに痛い…痛いよ…! しかしもう大丈夫だ。その疲れた心も身体も僕が全て洗い流してあげるからね。そして共に永遠の愛を語り合おう…」(うっとり)

アンコ「あの〜。今日のデートを引き当てた水城涼さん、ですよね」(恐る恐る)

水城「ん…何だい君は。サインかな。残念だけど、今日の僕はある人のためだけに存在する身だ。君の気持ちに応えることはできそうもない」(ダメダメと首を横に振る)

アンコ「は…? いえ、あの、アタシは一応、今回のこの企画の運営委員というか、管理人の代理というか…」


水岐「ああ、そうかい。それがどうかしたのかい。どうでもいいけど、こんな企画をいくら計画しても無駄さ。いくら愚弄な庶民たちに公平な手を差し伸べようとも、最後に彼と結ばれるのはこの僕しかいないのだからね」


アンコ「あの、でもまだ投票では貴方に一票も入ってませんけど」


水岐「………………芸術家とは、時に孤独なものさ」(冷たい視線)


アンコ「えーと、あのですね。まあ、そんな話はどうでもいいんですけど。今日はちょっとしたアクシデントが起きまして」

水岐「何だい? 彼との麗しき喜びの再会を前に…はっ! ま、まさか緋勇君に何か…!?」


アンコ「ああ、いえいえそういうわけじゃ。ん…でもそういうことになるのかしら?」

水岐「何だと言うんだ、はっきりしたまえ!!」(激昂)


アンコ「えーとですね、ぶっちゃけて言うと、今日のデートは中止です」



―カッポーン……―(←妙な間)



水岐「…………へ?」

アンコ「だから、デートは中止。龍麻君は、今日はここには来ません!」


水岐「何を…何を言っているんだ、君は…? 大体―」


アンコ「はーいはいはい、説明します! 確かにクジを行いました。順番を決めて、龍麻君には鬼のようなスケジュールで毎日皆さんとデートしてもらうことになってます。でもね、アクシデントってのはつきものでしょ? 特にこういう企画では」


水岐「だからそのアクシデントとは一体何だ!? 彼がどうかしたのか!?」(段々顔が醜くなっていく天才詩人)


アンコ「えーっと。龍麻君、昨日のデートのお相手、霧島君と遅くまで星観測に行ってて昨夜は一睡もしてないんですって。それで今日はダウンしちゃって来られそうもないって。龍麻君も人間だからね、休ませてあげないと可哀相でしょ? あとでメインの方々とのデートも控えているのに、こんなところで倒れられちゃ、こちらとしてもかないませんしね」


水岐「な…な……なな……」(茫然)


アンコ「運も実力のうちです。こういう事もあるわよ。そのデートに決まった日取り・曜日は勿論、その前のデートの相手にもかなり自分の予定左右されるからねー。今回は前にいた黒い悪魔を恨むしかないわね。ったく、昨夜はあの悪魔、かわい子ぶって龍麻君にそりゃあもう…ぶつぶつ」


水岐「……し、しかしじゃあ、明日は僕だな!? これは延期という事だろう!?」(縋るように)


アンコ「駄目ですよー。明日は明日で別の人が来ることになってるんだから。言ったでしょ、中止だって! ま、縁がなかったと思って諦めてちょうだいねっ」(かなり無神経な発言)

水岐「………ふ……ふふふふふ………」(俯いたまま、肩を震わせている)


アンコ「でもこういう事もあるのね〜やっぱり。でももし壬生君、京一君の順番が続いてたら、一体どうなっちゃうのかしら。京一君や壬生君デートがこんな風に中止になったらえらい事になりそうだわ。日程の調整とかしなくて平気かしら〜ぶつぶつ」(まだ気づいてない)


水岐「所詮……この世の中とは、斯くも暗く……絶望に満ちているノダナ……」(プシュウウウウ〜)


アンコ「はっ!! きゃ、きゃあーーーーー!!」


水岐「ピギャアアアアーーーーー!! コウナッタラ、コンナセカイブチコワシテクレルーーー!! シギャアアアーーー!!」(外法で半魚人に変身した水岐)


アンコ「きゃあきゃあきゃあきゃあ!!! お、おおおお落ち着いて下さい、水岐さん…ッ!!」


水岐「ダマレオンナ!! マズハキサマカラマッサツシテクレルーーーー!! ピギャーーー!!」


アンコ「うぎゃあー! ままま待ってよーッ!! 元々悪いのは霧島君と、こんな余裕のない計画を立てた企画者で〜! アタ、アタシはただの代理人なのよー!?」(逃げ惑うアンコ)


水岐「モンドウムヨウシャギャーーーー!!」(追いかけまくり!!)



―公園内、一時騒然。その時―


龍麻「ふああ……。ごめーん、遅れた……」(よろよろと登場する龍麻)


水岐「……ピギャ!?」(驚愕!!)

アンコ「あ!! た、龍麻君、今日はお休みするって…!!」

龍麻「あ、遠野。うん、そう思ったけどさ。お前が今日の奴、キャンセルにするって言っただろ。そういうのって何か不平等じゃないか。後から段々気になっちゃってさ」


アンコ「龍麻君〜vvv 貴方ってば何てイイ人なのッ【愛】!!」

龍麻「よせよ〜。言っておくけどな、俺はこの企画に賛成しているわけじゃないぞ。でもな、一回やるって言った以上は責任持つよ。文句ある?」

アンコ「ないない全然ない〜! さっすが龍麻君ッ! みんなのアイドルなだけあるわ♪」(両手もみもみ)


龍麻「……おい、それ以上言うと帰るぞ」(実に嫌そう)


アンコ「ああん、ごめんごめん〜。でもほら、ね! 良かったわね! ね、水岐君?」(半魚人姿の水岐の背中を叩く)


龍麻「ん…? あれ、今日って……水岐? って…え…? 何、お前……この寒いのに海とか行って泳ぐ計画なわけ…? だとしたら、俺、やだぜ?」(寒そうにする龍麻)←フツーはそれどころではないのでは…


水岐「……………」


アンコ「(焦)ああーっ、えっと、そうねっ。確かにその格好じゃちょっと街には行けないわよねッ! あ!! そだそだ、それにそこらの服もかき集めとかないとねっ」(混乱のため、何を話しているのかも分かっていないアンコ)

水岐「………ピギャアー(号泣)!!」(泣いて走り去る水岐…どうやら龍麻に人外の姿を見られた事がショックだったらしい)



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