11月21日(水)〜笑顔の裏に秘めたもの〜


龍麻「あー!!」(待っている相手を見てすっごく嬉しそうに)

劉「へへッ。よ、アニキ」

龍麻「今日、劉なんだ!! わー、俺、何か嬉しい! お前と会うのも久しぶりだしっ。な、じゃあ今日、何処遊び行く? 何かうまいものとか食いに行くかッ!?」(笑顔全開)

劉「…………」(ちょっと困った風に笑う劉)

龍麻「……? ……劉、どうかしたか?」

劉「……アニキ。わいな、アニキと行きたい所あるんやけど」


龍麻「え? …う、うん。それはいいけど…?」


劉「ほな、行こか」(さっさと先に歩いて行ってしまう劉)


龍麻「あ…! ま、待てよ、劉!!」(慌てて後を追う)



―移動後―


龍麻「劉…? ここは…?」(人気のない、鳥の声のみ聞こえる山林の一角。二人がいる所だけ妙に平地で、周囲を大木が囲んでいる)


劉「………龍山先生にちょい頼んでな。丁度良い場所借りられたんや」(龍麻に背を向け、刀を抜き取る)

龍麻「借りたって……ここ、何なんだ……?」


劉「まァ…体のいい、戦闘場所やな」(振り返ってすっと龍麻を見やる)


龍麻「劉……?」


劉「アニキ。勝負してや」

龍麻「え…な、何言ってんだよ、劉…っ」


劉「……アニキとデートか。そんなんできたら、えらい楽しくて…幸せなんやろうけど。けどな、アニキ。わいはまだそんな幸せ、いらないんや」


龍麻「………劉」


劉「わいが欲しいのはアニキの強さや。アニキの《力》や。わいが見たいんは……腑抜けのアニキと違うで」


龍麻「…………」


劉「わいかて、弱くはないで? ……試してみるか?」


龍麻「…………」


劉「アニキ。どうなん」

龍麻「………いいよ。勝負してやるよ、劉」(戦闘の構えに入る龍麻)

劉「へへッ……アニキ、おおきに」



―数時間後・辺りの雰囲気は一変している。平地は一部抉られたように穴が開き、周囲もしんと静まり返っている―


劉「ぷはーッ!! やっぱ、アニキは強いなァ」(どっかと仰向けにぶっ倒れる)


龍麻「当たり前だ。俺は天下の主人公だぞ。弟なんかに負けられるかよっ」(でもぜはぜは言っている龍麻。最近のデートで身体がなまっていた模様)


劉「……ほんまや。わい、まだまだやな」


龍麻「…………」

劉「ほんま……まだまだや」

龍麻「……劉、何落ち込んでんだよ……」(劉の傍に行って顔を覗きこむ)


劉「……そら落ち込むわ。わいはまだアニキにとって、ただの弱っちい弟でしかないんやもん」


龍麻「な、何そんな卑屈になってんだよ…っ(焦)。嘘だよ、お前弱くなんかないよ! 俺だってホントは内心すっごく焦ってたんだからさ。お前、すっげえいろいろ技持ってんだもん!!」


劉「…………アニキて、ホンマ優しいんやな」


龍麻「ばっか、慰めとかで言ってんじゃないの(べちりと劉を叩く)! そ、それに…っ」


劉「ん?」


龍麻「俺、何か自分が恥ずかしくなったよ。お前はこんな真剣に自分の力磨こうとしているのにさ…。俺がしっかりしなきゃいけないのに、全然…。情けないのは俺の方だよ」(しゅん…となる龍麻)

劉「アニキ……?」


龍麻「……お前がさ、俺に勝負挑んできたのもびっくりしたけど。さっきはさ…本当はお前が俺のこと、俺の《力》にしか興味ないっていうことが、すごくショックだったんだ」

劉「あん…? 誰がそんな事言うたん?」(びっくりして上体を起こす劉)

龍麻「だ、誰って…! お前だよ! 闘う前に言ったじゃないか! 欲しいのは…俺の強さだけだって。それって、俺っていう人間自体には興味ないって事だろ…っ」(やや泣きそうになりつつ声を荒げる龍麻)


劉「ア、アニキ…!? わ、わい、別にそんな意味で言うたんと違うんやけど…っ」(悲しそうな龍麻にオロオロする)

龍麻「じゃ、どんな意味だっていうんだよ! どうせ俺は腑抜けだよ! こんなくだらない企画に参加してさ、修行もしないで遊び呆けてるよ!!」

劉「わあ、アニキ! なな泣かんといて!」(龍麻の肩を抱く劉) 


龍麻「う、うるさい…っ! 泣いてなんかないぞ! ただ、お前がひどい事言うからじゃないか!」(じわと目が潤む)


劉「ご、ごめんな、アニキ。わい、日本語慣れてないよって…っ。違うんや、わい、ただ早くアニキより強ぅなりたくて。アニキの力、超えたい思うてて! ……でなきゃ、わいはいつまで経ってもアニキの特別になれへんやろ?」

龍麻「……劉?」

劉「わいな。アニキ護れるくらい、アニキが頼れるくらい強い男になりたいから。でなきゃ、いつまで経ってもアニキのこと、堂々とデートに誘ったりできひんもん。わいがアニキのことどれだけ必要としてるか、アニキ、分かる?」(龍麻の涙を拭いながら)

龍麻「……馬鹿。そんなの、こっちの台詞だよ……」(ちょっと気まずそうに俯く龍麻)

劉「アニキ……」

龍麻「俺…今だって劉のこと、すっごく頼りにしてんだからな。何だよ、今日は俺、お前と一緒で…すごく嬉しかったのに…1人でどんどん先行ってさ…っ」

劉「……そうか。アニキ、ごめんな。ほな、今日はこれからずっと一緒にいよな? わいも、アニキと一緒で嬉しい」(にっこり)



アンコ「ぐはあっ!! 戦闘の影響でテープ録音失敗してる〜!! き、貴重な記録があぁ〜」(大木の陰でもがくアンコ)



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