11月27日(火)〜風に乗って、青空の中〜


龍麻「………あ!!」

京一「よ、ひーちゃん」(ベンチに座っていた京一。龍麻を見てにっと笑い、片手を挙げる)

龍麻「今日、京一かぁ…。だったらわざわざここで待たなくたって、学校終わった後言えば良かったのに」

京一「バーカ、何言ってンだよ。こういうのは雰囲気も大事だろ〜? 公園で待ち合わせデート! いいじゃねェかよ」

龍麻「ふ〜ん、そんなもんかな。でも京一とデートって言ってもな〜」(ストンと京一の横に座って照れくさそう)

京一「………」(笑顔のままじーっと龍麻を見つめる京一)


龍麻「な、何だよ…?」(焦)


京一「……ひーちゃんよー。今までの奴と何処行ったりしたんだよ?」


龍麻「え? んーと…色々。醍醐とはk−1観に行ったし、霧島はプラネタリウム。一昨日のアランとは美術館行ったよ」


京一「………昨日は?」

龍麻「あ、昨日はな、休みだったんだ! 企画者が疲れたとか言って」←すごく嬉しそう


京一「ひーちゃんも疲れたか?」

龍麻「え? ……そりゃ、まあ……。変な所連れて行く奴とかもいるしさ」(ちょっと苦い顔)


京一「そっか」(何となくぼーっと空を見上げる京一)


龍麻「………京一?」


京一「んー?」(空を見上げたまま)

龍麻「あ…え、えーと、さ。きょ、今日何処行く?」


京一「そうだなぁ。ひーちゃん、どっか行きたい所とかあるか?」

龍麻「え、俺? お、俺が考えるのか? ん〜と、そうだな…う〜〜ん……。……何か、京一とどっか行くって言ったら、ラーメンくらいしか思い浮かばないな」


京一「ヘヘツ、そだな。それも悪くないけどな。でもよ、たまにはどっか違うトコ行こうぜ」(やっと龍麻を見て笑う京一)


龍麻「(何となくほっ)……うん! そうだな、折角だもんな!」


京一「よっし、じゃあ行こうぜ、ひーちゃん! へへっ、実はさ……あれ!」(何やら入り口近くを指差す京一)


龍麻「ん? あ、自転車……?」


京一「どっか遠出しようと思ってさ。チャリなんて普段乗んねェけど、これもたまにはいいかと思ってよ」


龍麻「へえ…。そういや、俺も全然乗ってないなあ」

京一「俺、漕ぐからな! ひーちゃんは後ろ! 言っておくけど、立ち乗りだかんな!」

龍麻「わ、マジかよ〜。俺、立ち乗りってしたことないんだよ〜」(でも興味津々)


―数十分後―


京一「どうだ、ひーちゃん! めっちゃくちゃ飛ばしてんだろ〜!!」(公道脇を全開に走らせる京一。車を抜きそうな勢い)


龍麻「すっげー! 速い〜! 超〜気持ちイイ!!」(京一の肩に掴まって立ち乗りの龍麻、大喜び)


京一「まだまだ飛ばすぜー! おっ、あっち下りの坂道あんだよ! 行くぜ、ひーちゃん!」(ドピューー!!)


龍麻「うわー! こ、怖ェー! わははは、でも面白い〜!」(もの凄い加速をつけて坂を下って行く自転車に大はしゃぎ)

京一「よっし、更にスパート〜!!」(下り坂なのに更に漕ぎ出す京一。危険なので真似するのはやめましょう)

龍麻「わーっ! ば、馬鹿馬鹿、あ、あぶなーッ!!」(ギュウンッとスピードの増す自転車に真剣にびびり出す龍麻)


京一「な〜に情けない声出してんだよ、ひーちゃん! まだまだ飛ばすぜー!!」(嬉々とする京一)


龍麻「きょ、京一ッ! お前っ、絶対車の免許とか取るのよせよなー!!」



―更に数時間後…恐怖の自転車走行が一段落して―


京一「うおっ、結構イイ眺めだな〜。割と遠くまで来ちまったな!」(高地に建つ住宅街を抜け、小高い丘から眼下の街並みを見下ろす)


龍麻「ホント。でも東京でも、まだこんな緑の残ってる場所あるんだな。宅地開発は進んでるみたいだけど」(自転車を降りて傍の手すりに寄りかかって遠くの景色を眺める)


京一「そういやひーちゃん、折角東京に転校してきても、あんまり名所見物とかってしてねェよな」

龍麻「う〜ん、そういえば。それどこじゃなかったし」


京一「あ、じゃあもっとメジャーな観光地とか行けば良かったな。こんな郊外の方来ちまってさ」(ぐしゃりと髪の毛かき回して残念そう)

龍麻「えー? そんな事ないよっ。俺、すっごく楽しいもん! チャリの2人乗りなんてした事なかったし。京一めちゃくちゃ飛ばすからすげースリルもあったしさっ」

京一「そっか。ひーちゃん、楽しいか?」


龍麻「あったり前だろー? 何しみじみ訊いてんだよー?」(隣に立つ京一の顔を覗きこむ龍麻)

京一「………」

龍麻「……? 京一……?」


京一「……何でもねェよ。あ、ひーちゃん、冷たい風に当たって寒くなってないか? ほら、これ!」(自分のマフラーを龍麻に巻いてやる京一)


龍麻「え、い、いいよ。そしたら京一が寒くなるじゃん! 俺は平気だって…っ」


京一「ばっか、ひーちゃん。俺とひーちゃんの間で遠慮はナシだぜ? ……何つっても俺とひーちゃんはよ……」(龍麻にマフラーをかけたまま手を止める京一)

龍麻「……きょ、京一……?」(戸惑いながら京一を見上げる龍麻)

京一「……へへッ、何でもねェよ! それよりよ、こんな企画やらされて、もし疲れたら俺に言えよ! 俺がアンコや、馬鹿な企画者の目の届かない所にひーちゃんを連れて行ってやるからさ!」(明るく言いながら、さり気なくそっと龍麻を抱きしめてくる京一)

龍麻「きょ、京一…っ? ちょっ…!」(赤面)

京一「ひーちゃん護ってやれるのは俺しかいねェんだからよ! な、ひーちゃん…?」(ぎゅっと強く抱きしめてくる京一)

龍麻「あ……だから、自転車……? もしかして今日、遠野は…?」(京一の腕の中で身じろぎながら周囲を見ようとする龍麻)

京一「へへへ〜!! 完全に撒いてやったぜ!! 今は俺とひーちゃんの2人っきりだ!!」(得意気)

龍麻「京一…。はは、もう…しょーがないなぁ……」(しかしすっかり大人しくなる龍麻)

京一「ひーちゃん…。今日はよ、ずーっと一緒だな。ずっと、2人でいような」



―その頃のアンコ―

アンコ「キーッ! あんのアホ京一の奴〜! 一体龍麻君を何処へ連れて行っちゃったのかしら〜【怒】!! こういう抜け駆けにはペナルティをつけなければ! 見てらっしゃい〜!!」(実に悔しそう)



戻る