12月18日(火)〜懐かしい場所〜


アンコ「あ、来た来た。龍麻君、こっちー!!」(待ち合わせ場所でぶんぶんと手を振るアンコ)

龍麻「な、何だ!? も、もしかして今日はお前が相手とか言わないよな!?」

アンコ「……何よ、そのものすご〜く嫌そうな反応は」

龍麻「いや別に…。でも遠野は参加しないって言ってたから」

アンコ「しないわよ。言ったでしょ、予定は詰まってるンだから! 残念ながら私が出られる余地はないわけよ。でも今日はそろそろ呑気な龍麻君にコナかけとかなきゃと思ってね。幸い今日の相手もまだ来ていないようだし」(ちらと腕時計を見ながら。まだ待ち合わせ時刻にはやや早いようだ)

龍麻「何をかけられるんだ?」(ぽけー)


アンコ「……やはり忘れているようね。この企画最大のイベントを!!」(ずばっ!と龍麻を指差すアンコ)


龍麻「何だよ…」(すごく嫌そうな龍麻)

アンコ「龍麻君。この企画はただ単に毎日希望者と1日デートすればいいってものじゃないのよ。いわば今までのデートは予行演習みたいなもの! 本番はクリスマスイブだって言ったでしょ!!」


龍麻「そうだっけ」

アンコ「そうなのよ(おのれ、知らばっくれる気ね…)。龍麻君には今までデートした人たちの中から、たった1人をイブのデートの相手として最後に指名してもらわなきゃいけないんだから」

龍麻「最後って…。大体、これいつまで続くわけ?」(ウンザリ)

アンコ「実は今日を入れてあと2日で終了よ(メモを出しながら)。今日が18日でしょ。明日の19日でラスト、そして翌日に私とその他実行委員たちと会議をして、龍麻君に最終的な発表をしてもらうことになってるから」

龍麻「は? 何なのそれ? あと2日で終わるのはいいとして…何、次の日会議? それ俺も出るの? そんでもって実行委員なんて遠野の他にいたの?」

アンコ「あーもう、そんなにいっぺんに訊かないの! と〜にかく。誰を指名するのか決めておいてよ。どうせもう候補はいるんでしょ」

龍麻「し、知らないよ…。俺、誰か1人なんて選べな―」


アンコ「な〜んにも聞こえません。あ、ちなみにお客さんの支持によると、今は天童様と壬生君の一騎打ちって感じよ。どう? どっちかが相手ってのは」


龍麻「な、何言ってんだよ…。大体何だよ、お客さんの支持って…」←引き気味です

アンコ「受け龍麻君を支持して下さるとてもありがたい方々のことよ。とにかく、いい!? 今までのデートの相手で良かった人でもよし! 今日と明日の2人でお気に入りが現れたらそれでも良し! イブに1番過ごしたいのは誰なのか、絶対に答えてもらいますからね! …おっと、そろそろ時間ね。それじゃね、今日も頑張ってね!」(言うだけ言って去って行くアンコ)

龍麻「お、おい、遠野ー!!」


―遠野がいなくなり(どっかに潜んでいるのだが)、一気に周囲がしんとなる公園―


龍麻「……はあ。全く勝手なんだからな…。誰か1人選べって言われたって……」


嵯峨野「た、龍麻。待ったかい」(突然現れた嵯峨野)

龍麻「ん……?」(ふっと声をかけられて嵯峨野の方に視線を向ける龍麻)

嵯峨野「きょ、今日は僕と君にとって忘れられない夜になりそうだね…っ」

龍麻「………あり得ないし」

嵯峨野「なっ…! 何だよ、緋勇君ッ!! 僕と周囲の人たちとで、随分顔を合わせた時の反応が違くないかい!?」(精一杯『龍麻』呼びもしてみたのに)

龍麻「あぁ〜あはは。悪い悪い。嵯峨野君…だっけ? 藤咲元気?」(軽いノリの龍麻。龍麻はあまり親しくない人には無理やり自分を作って不自然な態度をとってしまうクセがある)

嵯峨野「別に亜里沙の事はいいじゃないかッ! 僕にも九角や壬生君の時のような積極的なアプローチをしてくれよっ」


龍麻「……何で嵯峨野君が俺があいつらと接した時の様子が分かるの?」


嵯峨野「そ、そ、それはだね…ッ(焦)!!」

比嘉「あ、いたいた! 緋勇!!」(慌てて駆けてきたのは比嘉焚実である。←知らない人のために一言付け加え。彼は番外編に出てくる龍麻の前の学校の同級生です)

嵯峨野「……!!」(びくりぎくりとする嵯峨野)

比嘉「悪い! ちょっと遅れちゃって…! これでも急いで来たつもりなんだけどさ。やっぱ新宿は遠いよ」

龍麻「比…嘉? う、わー! ホントに比嘉なの!? すっごい久しぶりー!!」(比嘉の手を取って喜ぶ龍麻)

比嘉「ハハッ。ホント久しぶりだよな! お前、全然連絡くれなかっただろ。転校する前、引越しの後片付けとか終わって落ち着いたら電話くれって言ったのにさ」

龍麻「あ、ごめん…。何か色々バタバタしてて…」


比嘉「ハハハ、嘘だよ、気にするなよ! 元気そうで良かったよ。安心した」(にっこり)


龍麻「………」


比嘉「ん? どうかしたかよ、緋勇」(何やらじーっと見つめられてきょとんとする比嘉)

龍麻「ううん…。いやでも何か…久しぶりだなあって思ってさ……」

比嘉「おいおい、どうしたんだよっ。それ、さっきも言っただろー?」(おかしそうに笑って龍麻の肩を叩く比嘉)


龍麻「うん、そうなんだけど。そうなんだけどさ! …でも、懐かしいんだよっ。すごく懐かしいっ!!」←《力》とは無関係の普通人に会えた幸せをかみ締めているようです

比嘉「そうだよな。俺も緋勇に会えて嬉しいよ! ……ハハ、けどさ。お前の噂は結構聞いていたんだぜ? さとみが大宇宙学園高校の本郷さん?って人と仲良いらしくってさ。緋勇の友達なんだろ?」

龍麻「え、桃香ちゃんと青葉さんって知り合いだったんだ? あ…だからあの日も2人で異様に盛り上がってたのか(汗)。まあ、どこで繋がってるか分からないもんだな。でも、そうならそうで俺の所にも顔出してくれればいいのに。こっち来たついでとかでも」

比嘉「いや、いいんじゃないか。あいつは『邪観察者』を自認しているから」(ちょっと呆れたように)


龍麻「え? 何それ?」(???の龍麻)←うちサイトを知らないお客様へ…当サイト「銀の竜」設定では、うちのさとみちゃんとコスモピンクは「天童様と龍麻をくっつけたい」という野望を持っています。共通の嗜好により、友情が芽生えた。


比嘉「まあ、とにかくさっ。今日は久しぶりにめいっぱい遊ぼうぜ! 緋勇、どっか行きたい所あるか?」

龍麻「ハハ、ホントこのノリ懐かしい! 比嘉の事だからゲーセンとか行こうって言うんだろ?」

比嘉「あ、バレてるか(笑)。地元のゲーセンばっかだからさ、こっちにはどんなのがあるのかちょっと興味あるよなぁ。でもさ、緋勇が行きたい所あるなら、そこでもいいぜ。今日はとにかくお前優先!」

龍麻「ええ〜何だよ、それ! あ、でも……」(不意に何かを思い出したよになり、黙り込む龍麻)

比嘉「?? どうかしたか?」

龍麻「…あの、さ。俺、急に行きたい所できちゃったんだけど…。いいかな? 比嘉にはつまんない所だけど…」(ちょっと申し訳なさそうにする龍麻)

比嘉「え? 別に俺は何処でもいいぜっ。じゃあそこ行こう!」(清清しい比嘉)


龍麻「うんっ! サンキュー比嘉! それじゃ早速行こう! ……あ、でも、そういえば嵯峨野君は…?」←よく思い出したな龍麻!

比嘉「え、誰かいたのか?」

龍麻「うん…。今日の相手だと思ってたんだけど…。あれ、何処行ったんだろ?」(きょろきょろ見渡すも、いつの間にか嵯峨野の姿は何処にもない)

比嘉「え? あれ、俺、もしかして日にち間違えたか!? てっきり今日は俺の番だって思ってたんだけど…」(手にしたチケットを取り出す比嘉。今日は間違いなく比嘉君の日です)

龍麻「いやあ…何だったんだろ。まあ、いいか! 行こう、比嘉!!」(仲良く公園を出て行く2人)



アンコ「……嵯峨野君、ルール違反はしないようにね。君はクジに外れたんだから」(植木の陰、冷めた目で目の前の嵯峨野を見やるアンコ。どうやら委員のアンコが嵯峨野を連れ出したようです)

嵯峨野「うう…。だって誰も来ないなら今のうちと思って…。夢の中で呪ってやるぅ…」

アンコ「よさんか!」(べしりと嵯峨野をはたくアンコ)


―移動後―


比嘉「はは、なるほどな!」(着いた所に納得して頷く比嘉)

龍麻「ごめんな。折角新宿まで来てくれたのにさ。また舞い戻っちゃって」

比嘉「ああ、いいよいいよ。何だかんだ言って、俺地元好きだしさ。お前も懐かしいだろ? 特にこの明日香はさ」(比嘉の高校であり、龍麻の通っていた明日香学園高等学校である。校門をくぐり、校庭を歩く2人。グラウンドでは部活動の生徒がいるが、校庭にはまばらにしか生徒はいない)

龍麻「うん、実際はこの高校ってちょっとしかいなかったけど…。結構好きだったなあ」(校舎を見上げ、目を細める龍麻)

比嘉「中、入るか?」

龍麻「え? い、いいのかな…。俺、もう部外者だし…」(遠慮気味の龍麻。しかし実際は入りたい様子だ)

比嘉「馬鹿、そんな事気にするなよ! お前の教室だった2ーCとか…行こうか?」


―校舎内―


比嘉「まあ、学校なんてどこも変わらないだろうけどな―」(ガランとした教室に入りながら。外は夕暮れ時、窓から差し込む夕陽が眩しく2人を照らしている)

龍麻「うん、そうだけど…。でも、何だかやっぱりいいな」(教室をぐるりと回った後、窓際の席に座る)

比嘉「……緋勇」(龍麻の前の机に寄りかかって立つ比嘉)

龍麻「ん?」

比嘉「俺でさ…何かできる事あったら言ってくれよな」

龍麻「ど、どうしたんだよ、急に…?」

比嘉「ん…。ハハ、そうだな、俺らしくないかな」(照れたように笑う比嘉)

龍麻「………ううん。そういうわけじゃない。いつでも優しいのは、比嘉、変わってない」

比嘉「…さとみにさっ。ちょっとだけお前の事聞いてて(赤面)。でさ、今回のこの企画もアイツに勧められて申し込んでみたんだ。ハハ、お前の仲間って面白い事やってるよなあ」

龍麻「全く恥ずかしいよ…」(ため息)

比嘉「いや、そんな事ないって! …けどさ。すごいなって思った。いっつもお前と一緒のはずの仲間がさ、あんなにお前とデ…デートとかしたいって思ってるなんてさ」

龍麻「あ、あのさっ、比嘉、それはーッ!!」

比嘉「ああ、いい、いい! 何も言わなくて! 俺もそういう話、さとみで結構慣れてきてるから。それにさ、そういうのは、それだけお前がみんなに慕われて信頼されてるって証拠だろ? いいんじゃないか。俺はそう思ったよ」

龍麻「で、でもさ…普通じゃないだろ、こんなのって」(少しだけふてくされたようになる龍麻)

比嘉「……でも、緋勇が相手ならそういうのも分かるよ」

龍麻「え……」(ぎくりとして顔を上げ、比嘉を凝視する龍麻)

比嘉「あ、ごめん! こ、こんな事言うつもりじゃなかったんだけどさっ(焦)!!」(慌ててぶんぶんと両手を振る比嘉)

龍麻「あ…う、うん……」(困惑したように俯く龍麻)

比嘉「……けどさ、緋勇、結局どうするんだ? 誰か1人選ばなきゃいけないんだろ?」

龍麻「………馬鹿みたいだよ」

比嘉「緋勇……」

龍麻「そんな事できるわけないじゃん。大体、俺、そういうの嫌いなんだよね。誰か1人とどうのこうのってさ。俺って外面いいからすぐ誤解されるけど。ホントは面倒臭いの、嫌いなんだ」

比嘉「ハハハ…そうだったよな」(苦笑する比嘉)

龍麻「そうだよっ! 最初はさ、お前の事だって『何だ、この如何にも正義を人型にしたかのような爽やか男は!?』って思って引いてた。絶対知り合いになりたくないって感じでさ」

比嘉「ボロクソだなあ、お前」

龍麻「真っ直ぐな奴って嫌いなんだよ。………けどさ。俺の周りはそんな奴ばっかりで」

比嘉「そうか」

龍麻「そうだよ。みんなイイ奴でさ。ホント、嫌になるんだよな。ウンザリ」

比嘉「ふーん」

龍麻「ウンザリなんだけど……」

比嘉「うん」

龍麻「……結構好きだったりもして」

比嘉「……緋勇ってそれだから駄目なんだろ」

龍麻「そうだよなあ…。俺のこういう訳の分からないところが―」

比嘉「すっごく可愛いんだよな」

龍麻「は…はあ!?」(ぎょっとして顔を上げる龍麻)

比嘉「まあ、いいじゃないか。みんな嫌いでみんな好き……なんだろ。それでいいんじゃないか」

龍麻「何だよ、それ……」(ぶうと口を尖らせる龍麻)

比嘉「でもさ、お前変わったよ」

龍麻「え…そう、かな?」

比嘉「ああ。それってやっぱり今の仲間たちの影響なのかな。それを考えると何かすっげェ…フクザツなんだけどさ」

龍麻「何、妬きもち?」(からかうように訊く龍麻)

比嘉「まあ…そうかな」

龍麻「ま、真面目な顔して答えるなよ…っ」(赤面)

比嘉「ハハッ。もしさ、誰も選べなかったら俺にしとけよ! いい誤魔化しができていいんじゃないか? 俺は大歓迎」(爽やかな笑みを向ける比嘉)←しかし案外策士かもしれん…。



アンコ「うーん、放課後の教室っていうから何かあるかと思ったけど…。親密度がまだ『緋勇』だから難しかったのかしら?」←教室の外の廊下から耳をすまして

嵯峨野「大体、仲間の人たちはズルイよ。緋勇君と接触が多いから有利だ! 僕たち脇キャラにも『龍麻』と呼ばせるだけの猶予をくれよ!!」←更にその後ろにはぐいぐいとアンコの服の裾を引っ張り駄々をこねている嵯峨野が…

アンコ「あーうっさい!! 呼びたきゃ勝手に呼んでなさい!!」



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