12月 2日(日)〜休日の生物準備室〜


龍麻「ふわあ……。何か良く寝たなあ……」(目をこすりつつ)

アンコ「龍麻君! 何を呑気な事言ってんのよ! もうこっちはホント大変なんだからねッ!」

龍麻「あ、遠野。何か久しぶり。今日から再開なんだろ? 俺、ゆっくりできたあ」(何だか嬉しそう)

アンコ「もうもう【怒】! 龍麻君はそれで良かったかもしれないけど! 企画者の突然のアクシデントのせいで、計画がめちゃくちゃ崩れちゃったのよ! クジでここ数日の日程を当ててた人たちがみんな中止になっちゃって!!」

龍麻「それはしょうがないんじゃない? それも運ってことで」

アンコ「……もしその中に壬生君がいたって言ったら……どうするつもり……【怒】」


龍麻「え…し、知らないよ、俺はそんなこと……!」(戸惑う龍麻)


アンコ「…ちなみに鳴瀧さんもいたのよ。企画者は勿論、アタシまで拳武の暗殺者集団に狙われちゃうわよ!」(怯え!!)


龍麻「だから俺にどうしろっつーのさ」


アンコ「企画者の意向としてはクジのやり直しよ。でもそのせいで元々は龍麻君とデートできるはずの人たちがあぶれちゃうでしょ? もう参加者がパニックになっちゃって! だから、今日は龍麻君はここに隠れていて!」(龍麻にメモを渡す)

龍麻「は? か、隠れるって…じゃあ今日はデートはなし?」


アンコ「とにかく、今月のデートの順番を残った参加者で取り合いだから、私と企画者はこれからそっちで会議なの! でもその間に抜け駆けして龍麻君を誘う人も出ちゃうかもしれないから! いいから君はそこへ行って匿ってもらってなさい!」

龍麻「あれ…こ、ここって……。今日休みなのに、学校開いてるの?」(メモを見て驚く龍麻)


アンコ「開いてる開いてる! さあ、行った行った! ……ついでにその人とデートしてきてもいいのよ?」(ニヤ)


龍麻「はあ!? な、何言ってンだよ、遠野!」(何故かムキになる龍麻)


アンコ「それじゃあね! とにかくアタシは忙しいから! じゃあね!」(ダッシュで行ってしまうアンコ)

龍麻「はあ……もう、いっつも強引なんだからなあ……」



―移動後―


龍麻「失礼しまーす。先生、いますかー?」(ガラガラと学校の生物準備室を開ける)


犬神「ん……。何だ、緋勇。日曜日に」(椅子に寄りかかって、本を読んでいた犬神が振り返る。傍にはいつもの煙草とコーヒーが)


龍麻「え、来ちゃいけなかったんですか?」

犬神「俺は別に構わんが」

龍麻「良かった。でも先生は休みなのにどうして学校に?」


犬神「教師も楽じゃないんだぞ。休みでも仕事がありゃ、来なくちゃならん時もあるさ」


龍麻「へえ〜。あ、ところで先生、そのコーヒーいいなあ」(傍に寄って羨ましそうにする龍麻)


犬神「フッ…。こんなもんでいいならやってもいいがな。しかしお前は、最近はいいモン食わせてもらったりしてるんじゃないのか?」(龍麻に傍の椅子を勧め、煙草を咥える)


龍麻「え? 何でですか??」

犬神「毎日連中一人一人とデート三昧なんだろう? 随分引っ張りだこらしいじゃないか」

龍麻「せ、先生も知ってたんだ…。俺の知らないところで勝手に決まってたんですよ!」

犬神「まァ、そんなにムキになるな。たまにはいいんじゃないか。奴らも喜ぶだろう」

龍麻「……そういえば先生は参加者じゃないんだ」


犬神「あん? ……馬鹿、俺が参加してどうする」


龍麻「あ、そ、そっかッ。俺、何言ってんだろ…!」(自分が何気なく言った台詞に焦り、真っ赤になる龍麻)


犬神「………」(物珍しそうに龍麻を眺める)

龍麻「……っ。な、何ですか、先生」

犬神「……ん? いや別に、な…。しかし緋勇。お前も随分―」(言いながら腕をにゅっと伸ばして龍麻の前髪に触れる犬神)


龍麻「わ…せ、先生…?」


犬神「……初めて見た時はこんな風に思わなかったんだがな……」(さらりと龍麻の髪の毛を撫でて離す犬神)


龍麻「え? な、何を…?」

犬神「……お前はしっかりしているようで、抜けているところがあるから、目が離せないということだ」


龍麻「は…? な、何だよそれっ! 俺、まるで子供みたいじゃないですか!!」


犬神「違うのか?」(すぱーと煙草の煙を吐き出す)

龍麻「違います! 俺って結構年の割に色々苦労もしてるから、精神年齢だって結構高い方だと思うし!」(威張り)


犬神「フッ、そうか…。それは悪かったな」(楽しそうに笑う犬神)

龍麻「……うー。何か軽くあしらわれているような気がする」

犬神「そういえばコーヒーだったな? 少しぬるくなったが……」


龍麻「あ、全然いいです。俺、先生の一口貰う! あと先生、何かお菓子とかは〜?」(きょろlきょろ)

犬神「菓子、ねえ……」

龍麻「先生、ブラックコーヒーか煙草しかないなんて、何か身体に悪そうですよ。もっといいもんも置いておけばいいのに」

犬神「大人な緋勇の好みに合うもんがなくて悪かったな」

龍麻「うっ…。棘のある言い方だなあ」


犬神「それより緋勇。遠野から聞いたが、お前、今日は誰とも会わないでいるために隠れていなきゃならないんだろう? こんな所でのうのうと菓子なんか探していていいのか?」

龍麻「え? だって俺、ここで隠れてろって言われたから」(犬神のカップを奪ってコーヒーを飲む龍麻)

犬神「ん……? そうなのか?」←実はアンコからは何も聞いてない

龍麻「いいよ、誰か来ても。俺、今日は先生とここにいるって言うから。今日の俺の相手は先生ってことにしておいて下さい。あ。それいい考え! ね、いいですよね?」

犬神「俺がお前とここでデートか?」

龍麻「…先生は嫌かな……?」(少し恐る恐る)

犬神「……まあ、俺は構わないけどな。ただ、俺は仕事をするから、あまり煩くするなよ」

龍麻「あ、はい! じゃあ俺ここで先生の仕事終わるの待ってるから! どうせならその後どっか遊びに行きましょう!」

犬神「………緋勇、お前な―」

龍麻「えーいいじゃん、先生! 俺、先生といると楽なんだ。だから、今日だけ!!」

犬神「……まったく、そういう事を平気な顔で言うな。俺とて、それほど安全な男じゃないんだぞ」(苦笑)



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