「雨」
〜本日の訪問客・醍醐雄矢〜


醍醐「龍麻。邪魔をするぞ」
龍麻「あ、醍醐! ちょっと待って…今いいところだから」(必死)
醍醐「……またゲームか?」(龍麻の横に座りながら)
龍麻「ちょっとちょっと待って! 今コイツ倒したら戻ってセーブするからさ」
醍醐「…………」
龍麻「へへへ、やった、レベルアップ〜! 『弱い奴は死にやがれ』〜!!!」
醍醐「………龍麻(大汗)」
龍麻「待ってって言ってるだろ。……はい、セーブ。終わり! 何?」
醍醐「何、じゃないだろう」
龍麻「……あ、醍醐が怒ってる」
醍醐「怒ってはいないさ。呆れているんだ」
龍麻「………ぶう」
醍醐「いじけても駄目だ。お前が病気なのは裏密からも聞いたし、実際俺もそれはそうだと思う。…こんなお前の姿を見たらな(ため息)」
龍麻「俺は別に病気じゃないよ。ただゲームをしていたいだけ。それの何がいけないんだよ」
醍醐「今、東京がこんな状態になっているのにか? 俺たちの街が太陽の昇らない、こんな陰気な街になってしまっているのにか?」
龍麻「……俺の街じゃないもん(ぼそ)」
醍醐「龍麻!?」
龍麻「わーごめんごめん! 俺、最近どうも…? だから黙っていようと思ってるんだけど、ついつい何かイケナイ事を言っちゃうんだよな…」
醍醐「……まあいいさ。だがな、龍麻。今、みんなが大騒ぎをしているのは知っているな」
龍麻「あ、何でも俺と旅行に行く相手を誰にするか決めているんだって? 俺、今旅行とかしたくないんだけど」
醍醐「龍麻」
龍麻「わーまた俺は! ごめん醍醐〜(大焦)!!」
醍醐「……(汗)。あのな、龍麻。確かに今、それであいつらは皆大騒ぎさ。みんながお前と、この街を救いたいと思っているんだ。それは勿論、俺も同じだ」
龍麻「俺を救う?」
醍醐「そうだ」
龍麻「俺って何かピンチな状態なの?」
醍醐「ああそうだ」
龍麻「ふーん、そうなんだ……」
醍醐「…………」
龍麻「それで俺はどうしたらいいの?」
醍醐「お前は誰を選ぶ」
龍麻「え?」
醍醐「これから毎日、お前のところに仲間たちが来る。公平を期する為に全員だ。そして皆が皆、龍麻、お前に自分を選んでくれるように言ってくるだろう。だが…選べるのはたったの1人なんだぞ」
龍麻「ああそういえば…一昨日、裏密さんがそんな話をしていたよね」
醍醐「していた」
龍麻「…………」
醍醐「ゲームをしていたいから、行きたくないでは済まんぞ」
龍麻「………別にそんな事は言わないけど」
醍醐「ゲームをしていたいから、仲間たちを部屋に通すのが嫌だというのもナシだぞ」
龍麻「今こうやって醍醐を入れてるじゃん!」
醍醐「…………」
龍麻「……ねえ、醍醐」
醍醐「何だ?」
龍麻「醍醐は…醍醐もやっぱり、俺に選んで欲しい?」
醍醐「共に心を探す旅にか?」
龍麻「そうだよ」
醍醐「…………」
龍麻「醍醐はいつもみんなに遠慮して引いているところがあるけど」
醍醐「…………」
龍麻「今回はどうなの?」
醍醐「…………」
龍麻「醍醐?」
醍醐「…俺はな、龍麻」(急にがばりと立ち上がる醍醐)
龍麻「……っ?」
醍醐「俺は、ただ…悪いと思っているだけさ」
龍麻「な、何を……?」
醍醐「…………」
龍麻「どうしたんだよ、醍醐…? 何か変だよ?」
醍醐「……ああ、そうだな。変なのはお前じゃない。きっと、俺だな」
龍麻「…………」
醍醐「だが龍麻。お前の心はどうしても取り戻さなければ、な…」
龍麻「…………」
醍醐「お前がどう思おうとだ」
龍麻「……俺が何を考えているのか、なんて、醍醐に分かるの?」
醍醐「……分かりたいんだがな」
龍麻「…………」
醍醐「俺は帰る。明日からの仲間たちの話…ちゃんと聞くんだぞ」
龍麻「醍醐、そんなんじゃ、俺はお前を選ばないよ」
醍醐「…………」
龍麻「俺、ただ説教されただけじゃん」
醍醐「仕方がないさ。これが俺の性分なんだ」
龍麻「…………」
醍醐「じゃあな」
龍麻「………何だよ。俺が心を失くそうがどうしようが…お前がそんな顔する事ないのに…」



以下、次号…







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