「雨」 〜本日の訪問客・霧島諸羽〜 |
霧島「先輩、来ましたよ」 龍麻「うわ〜」 霧島「何ですか、その反応は」(両手を腰に当ててため息をつく霧島。何だか偉そう) 龍麻「いや…お前、来るの遅かったな」 霧島「はは…待っていてくれてました?」 龍麻「いや別に」 霧島「ひどいな、先輩」 龍麻「そんな事よりさやかちゃんの失踪事件。あれ大丈夫だったのか? お前も大変だっただろう?」 霧島「ああ、あれですか…。まあ、何とかなりましたから。それにさやかちゃんにもいい貸しを作る事ができましたしね」 龍麻「………貸し(汗)?」 霧島「ところで先輩、いくら外が雨だからって、毎日家の中にいて息詰まりません? 何なら散歩がてら外に出て、そのままどこかで食事でもしませんか」 龍麻「……ええ〜」 霧島「そんなに嫌そうな顔をする事もないでしょう。僕、奢りますよ?」 龍麻「バカ、後輩になんか奢ってもらえるかよ」 霧島「龍麻先輩ってそんな事気にするんですか? おかしいな、どうでも良い事じゃないですか。第一、誘っているのは僕の方なんですよ」 龍麻「煩いな、気にして悪いかよ。でもな、それとは関係なく、俺は別に外になんか出たくないんだよ」 霧島「どうしてです?」 龍麻「面倒臭いから」 霧島「勿体ないなあ」 龍麻「お前は如何にもアウトドア派だから外出るの好きなんだろうけどな。俺は嫌なの。俺はここでゲームをやる。外へは行かないぞ」 霧島「分かりました。じゃあ僕が何か作りますよ。それならいいでしょう?」 龍麻「えっ、霧島、料理なんかできるのか?」 霧島「別に普段はやらないですけどね。本でも見れば大抵のものは作れますよ」 龍麻「器用な奴〜」 霧島「………そうでもないですよ」 龍麻「……? 霧島?」 霧島「はい?」 龍麻「あ、いや…。何か…?」 霧島「どうかしました?」 龍麻「いや、何か…さ。お前って霧島だよな」 霧島「……何ですかそれは。ひどいな、先輩は。あまりにも会っていなかったから忘れてしまったんですか、僕のこと?」 龍麻「いや…そういうんじゃないけど。何かいつものお前って感じがしないから」 霧島「……………」 龍麻「お前、いつものキラキラオーラはどうしたんだよ」 霧島「出てないですか」 龍麻「出てないぞ。それに、何か元気ない。猛烈に暗い」 霧島「そうですか…?」(やや俯き加減になる霧島) 龍麻「おい霧島、お前、本当に何か変だぞ」 霧島「……何でもないですよ。僕もまだまだ修行が足りないって事です」(言いながら龍麻の傍に歩み寄る霧島) 龍麻「修行がって…? あ……ッ!?」 霧島「……ははっ。先輩、隙だらけですよ?」(いきなり龍麻を押し倒した!!) 龍麻「きっ…! お、重い…っ。何すんだよ、霧島!!」(思いっきり下に組み敷かれて両手も拘束される龍麻) 霧島「あはっ。先輩、身体なまってるでしょう? この程度の力も跳ね除けられないなんて、先輩こそ、ホントどうしちゃったんですか?」 龍麻「知るかよ、煩いな! いいから離れろっての!!」 霧島「……………」 龍麻「霧島! 離せ! 本当に怒るぞ!!」 霧島「……嫌です」 龍麻「!?」 霧島「だから……本当に嫌なら、先輩が自分の力で僕から逃れて下さい」 龍麻「お前……」 霧島「………できないみたいですね。先輩、本当は……《心》じゃなくて、《力》を失くしてしまったの間違いじゃないんですか」 龍麻「……………」 霧島「黙秘ですか」 龍麻「もう一度だけ言うぞ。離れろ」 霧島「……………」 龍麻「お前…今日、別人だ。俺よりよっぽどおかしくなってる」 霧島「知っていますよ、そんな事」 龍麻「知ってる? じゃあわざとおかしな奴を演じてるのか?」 霧島「先輩。一体僕のどこが変だって言うんです? 確かにいつもと違う僕だって事は認めますけどね…。そういつもいつもあんなテンションではいられませんよ」 龍麻「な……ッ」(ほとんど絶句) 霧島「ああ、でも誤解しないで下さい。別に『あっちの僕』も僕は僕です。別に演技ってわけじゃないですから」 龍麻「……じゃあ…?」 霧島「先輩。一体どちらの面が本当の僕かなんて…僕自身、どうでも良い事なんですよ」 龍麻「え……」 霧島「今言ったでしょう…そのどちらともが、僕の本質だと思うから」 龍麻「……お前の言っている意味が分からない」 霧島「嘘ですよ。先輩は分かっています。先輩は僕と同じだから。同じところにいる人間だ」 龍麻「霧島…?」 霧島「龍麻先輩。僕は決して先輩を特別扱いなんかしません。貴方には…僕の近くにいてもらわないと困るんです」 龍麻「何それ…命令かよ…」 霧島「そう取ってもらっても一向に構わないです。知ってました、先輩? 僕ってすごく我がままな奴なんですよ。自分の思う通りにいかないと…ホント、頭にくるんですよね」(天使の微笑み) 龍麻「………お前…めちゃくちゃ怖い」 霧島「嫌だな、僕は心優しい男ですよ? 少なくとも龍麻先輩には、ね」 龍麻「……ならいい加減どけよ。重いっつーの」(何だか悔しそうな龍麻) 以下、次号… |