ひーちゃんの外法旅行(現代編・その後)




龍麻「だから! 違うんだって言ってるだろ!」
如月「僕は何も言ってない」
龍麻「怒ってるじゃないか!」
如月「怒っていない」
龍麻「怒ってる!!」
如月「そう思うのは、君に何か疚しい事があるからじゃないのか」
龍麻「何だと!」


2人で仲良く昼寝を決め込み、起きた後は仲良く買い物に行き。
仲良く夕食を楽しんだまでは、良かった。
しかし、先に風呂を使った龍麻の湯上り姿を如月が見た時。
上記のような言い合いが始まった。


龍麻「俺はヤだって言ったんだ! それなのに奈涸さんが強引に迫ってきたんだよ!」
如月「強引にね」
龍麻「本当だってば! こんな…首に痕ついてるのだって、俺、知らなかったし…!」(赤面しながら首筋を抑える龍麻)
如月「それならそれでいいじゃないか。僕は何も言う気はないよ」
龍麻「その態度が怒ってるって言ってるんじゃないか! 何だよ、うじうじとしやがって!」
如月「うじうじとだって? 冗談じゃない、君こそ、さっきから何をムキになっているんだ。大体…」
龍麻「何だよ!」
如月「……いや。いい。何も言う気はない」
龍麻「言えってば!!」(如月のすぐ傍まで言って怒鳴る龍麻)
如月「……天戒とは、何もなかったのか」
龍麻「……な、何だよそれは……」
如月「……………」
龍麻「何が言いたいんだよ…」
如月「彼が、君は渡さないと言って僕に斬りかかってきたものでね」
龍麻「えっ……」
如月「彼は君に対して一方ならぬ想いを抱いていたようだ」
龍麻「そんな事……」
如月「いいんだ。彼の想いは、僕にも分からないでもなかったからね。だけど、君自身はどうなのかと思った」
龍麻「俺が何だよ……」
如月「何とも思わなかったかい」
龍麻「…………」
如月「…………」
龍麻「思ったよ……」
如月「…………」
龍麻「思っちゃ悪いかよ」
如月「…………」
龍麻「あいつ…は、俺と似ていると思ったから…。俺の痛みを分かってくれたし…。だから、そりゃあ、何とも思わないって言ったら嘘になるよ。それが悪い?」
如月「……だから僕は何も言ってないだろう」
龍麻「言えってば!」(がばっと如月に抱きつく龍麻)
如月「………・・」
龍麻「嫌じゃないのかよっ。俺がお前以外の奴の事そんな風に言って、嫌じゃないの!?」
如月「…………」
龍麻「翡翠っ」
如月「………ぃるだろう」
龍麻「え……っ…あ……!?」(いきなり如月に押し倒される龍麻)
如月「嫌に決まっているだろう」
龍麻「ひ、すい……?」
如月「よくもそう堂々と言ってくれたね…。僕が何とも思わないとでも思ったかい」
龍麻「…………」
如月「誰にも渡したくないと思っているのに……」(言って如月は龍麻の唇に、ちゅ、と音の立つキスをした)
龍麻「翡翠……」(かっと赤面する龍麻)
如月「僕を笑うかい」
龍麻「どうして」
如月「こんなに、みっともないくらい、僕は君に夢中だ……」
龍麻「……そうじゃなきゃ怒る」(如月の首に両腕を回す龍麻)
如月「龍麻……」
龍麻「俺だって…翡翠が、龍斗の方が良いって言ったらどうしようって…ずっと心配だったんだ……」
如月「馬鹿な……」
龍麻「本当だよ! だって龍斗は…あんな風にちゃんとしてるし、面白い奴だしさ……」
如月「龍麻。もうやめよう」
龍麻「龍斗と何もなかった……?」
如月「…………」
龍麻「……許さないからな。翡翠は俺のなんだから……」
如月「ああ……」
龍麻「……翡翠。好き……」
如月「僕もだ。龍麻。今夜は離さないよ……」
龍麻「…………」
如月「何だい?」
龍麻「今夜だけ…?」
如月「………いや」


短く応えた如月のその返答に、龍麻は殊のほか嬉しそうに微笑んだ。
そうして2人はお互い求め合うような激しい口付けを何度も交わした。もう何年も会えなかったような、そんな無我夢中のキスだった。
2人を邪魔するものは何もなかった。
静かな温かい時が、その夜はずっと続くかに思われた。

そんな2人が、互いにつけていた数珠が消えている事に気づいたのは、翌日の朝の事であった。




おまけ話・完




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