ひーちゃんの外法旅行(江戸編・その後)




現在、鬼道衆の一部では、ちょっとした悩みが浮上していた。


九洞「おい、澳継。俺たちが留守の間に、一体若に何があったんだ(汗)?」
桔梗「本当に…天戒様、何かに憑かれちまってんじゃないだろうねえ…」(ため息)
風祭「何言ってんだよ。何かにって、思いっきり『アレ』に憑かれてんじゃねえか!」(びしっと広場に向けて指を差す風祭)


異形の群れ「ピギャーオ、グギャーオ!!」
美里「さあ、お前たち! 今度はそこでバック転よ! 一列に並んで、GO!」
異形の群れ「くるっとくるっと…ぐるぐるぐーるぐる……」(次々にバック転を決めて行く異形たち)
美里「うふふふ…そうよ、うまいわ。いい子ね」
龍斗「すごーい、すごいぞ、葵〜異形たち〜わ〜」(ぱちぱちぱち)
天戒「うむ、全く見事な術だ」(その横で実に感心しきりの様子で頷く天戒)
村人たち「すごいすごい! やんややんや!」(皆物珍しそうに集まって美里と異形の曲芸を楽しんでいる。子供らもはしゃいでいる)


風祭「……ついでに言うと、たんたんと村の連中も憑かれてる」
九洞「まあ…そうなんだが・・…」
桔梗「一体あの娘は何者なんだい? すっかりこの村に馴染んでいるみたいだけど…」
風祭「そういや、翡翠が何とかって奴だって言ってたんだけど…。忘れた」(頭を抱えて悩む風祭)
九洞「その何とかってのは何なんだ」
風祭「うるせえなっ。仕方ねえだろ、忘れちまったんだから! 大体なっ。お前らがいない間、ホント色々大変だったんだぞ!!」
九洞「しかし俺も会ってみたかったな。その師匠にうり二つの龍麻とやらに」
風祭「また会えるってよ」
九洞「ふっ。おい、澳継。お前、何だか寂しそうじゃないか?」
風祭「ばっ…! だ、誰が!!」
桔梗「
それにしても、天戒様、本当に嬉しそうだよ…」
九洞「ん……」


美里「次はこの村の人たちに出血大サービス! 異形さんたちと、広場でダンスー!!」
子供たち「わーいわーい一緒に踊る〜!!」
龍斗「わーい俺も〜」
天戒「はははははっ。龍、そんなに急ぐと転ぶぞ!」


風祭「……な、何か御屋形様、すげえハメ外してねえか(汗)」
九洞「……あんな風に笑う若を久しぶりに見たな」
桔梗「それを言うならたーさんもさ。子供みたいな顔して……」
風祭「あいつは元からあんな感じだぞ」
九洞「うーん、そうだったか…?」
桔梗「まあ何があったか知らないけど、この村にいい風が吹いたのは間違いないみたいだよ」
九洞「……そうだな。そうかもしれん」
風祭「でもよー」
九洞「ん?」
風祭「俺たちって、何かすごい大事な使命を抱えてんじゃなかったのか?」
九洞「…………」
桔梗「…………」
風祭「俺の気のせいか?」
九洞「いや…確かに……」
桔梗「あたしも、何だか自信がなくなってきたよ(汗)」


龍斗「葵〜かっこいい〜vv 今度はあれ! みんなで空飛んでばびゅーんとするやつが見たい!」
美里「うふふふふ……ひーちゃんの頼みなら何でも聞くわよv そおれ〜」
異形の群れ「ばっびゅーん【飛】!!」
龍斗「天戒、あれ見ろよ。爽快だな!」(天戒の腕を掴んで可笑しそうに笑う龍斗)
天戒「うむ…そうだな…」(晴れ晴れとした顔で空を見上げる天戒)


こうして。
何やらすっかり鬼哭村に馴染んでしまった美里葵様は、風祭たちの苦悩をよそに、しばらくの間村に居座り続けるのだった。
どうやら「違うひーちゃん」にちやほやされる事に喜びを見出したらしい。
鬼哭村が「異形の住む恐ろしい場所」として、江戸の町人たちにより一層畏れられるようになるのは、このすぐ後の事である。


美里「うふふふふふふ……v」




おまけ話・完



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