C.「黙って俺についてこい!」を選んだ場合。



「俺、帰る!」
そう言ってぷんぷんと頭にきたような龍麻に、しかし京一ははーとため息をついた後。
髪の毛をぐしゃりとやってからぽつりとつぶやきました。
「……あのなあ」
「!?」
そしてさっと龍麻に追いつくとそのままぐっと腕を掴み、無理やり自分の方を向かせました。
「な…何するんだよ、離せよ…!」
「くだらない事でむくれてんじゃねえよ」
「……っ!?」
急に冷たい声でそんな事を言う京一に、いつもの優しい笑顔はありませんでした。
龍麻はびくりと肩を揺らし、抵抗する事も忘れて目の前の親友を見つめます。
「あのな、俺はひーちゃんと一緒にいたくて来てんだよ、ここに」
「そ、そんなの…」
「そんなのひーちゃんの知った事じゃないよな。でもな、こんなくだらない事で今日を終わりにしたくねえの、俺は。俺がどんだけこの日を楽しみにしてたか、ひーちゃん知ってっか?」
「………そんなの」
「やっぱりひーちゃんの知った事じゃねえ?」
「…………」
黙り込む龍麻に京一はため息をつきつつも、そっと掴んでいた手を離し。
やがてぽんぽんと優しく龍麻の頭を撫でました。
「京…一?」
そうして京一は驚いて顔をあげる龍麻に口の端だけで笑うと、そっと龍麻の唇に掠める程度のキスをしました。
「きょ…っ」
みるみる真っ赤になる龍麻。けれど京一はただ笑うだけです。
そして余裕の態度で言いました。
「ひーちゃん。今日は俺と一緒にいろよ。そういう約束だっただろ?」
「………」
「違うか?」
「……違わない」
「よし」
そして素直にそう言う龍麻に、京一は満足そうに目を細めました。
そしてぎゅっとその手を握って。
「だったら俺について来いって。ホントに怖かったらさ…俺がちゃんと護ってやっから」
「………絶対」
「ん?」
「離したらダメだからな……」
「ははっ…分かった分かった。じゃ、ほら行こう?」
「うん…っ」
京一の不敵な態度に龍麻も却って安心したのでしょうか。
京一に握られた手をぎゅっと握り直すと、ようやく安心したようににっこりと笑って。
龍麻も京一と並んで歩き出すのでした。



【HAPPY END6】



《戻》