A.「手を握る」を選んだ場合。



「ひーちゃん、何で謝んだよ」
京一はそう言って今度は自分から龍麻の手をぎゅっと握りました。
「きょ、京一…」
「別にいいじゃんか。結構さ、現実のよりああいうのの方が怖かったりするよな?」
京一が思いやってそう言うと、龍麻は一気にしんと黙りこみ、それからぐっと唇を噛みました。
それからぽつりと。
「………ホントはいつも怖い」
「え?」
京一が驚いて顔をスクリーンから外すと、龍麻は焦ったようになり慌てて視線を逸らせました。
それでもそんな龍麻に京一は余計目が離せなくなって…。
「ひーちゃん……」
暗闇の中でそっと呼ぶと、しばらくは何の反応もありませんでしたが。
やがて、ゆっくりと。
龍麻の怯えたような瞳がスクリーンから漏れる光によってちらりと見えました。
京一はそれに思わず引き込まれ、息を飲みました。
「………すっげー…」
キレイだ。
頭の中でぽっかりとそんな事を思っていると、龍麻は逆に見つめられて途惑ったのか、困惑したように京一から手を離そうとしました。
けれどそれで京一もはたと我に返り、慌てて龍麻の手を握り直しました。
「ひーちゃん、逃げるなよ」
「きょ……」
「今はずっとこうしてようぜ…な?」
そうして握った手にぎゅっと力をこめると。
「…………うん」
やがて小さく漏れた龍麻のその言葉。
2人は暗いスクリーンの中でいつまでも互いの熱を感じあっていました。



【HAPPY END9】



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