A.「告白する」を選んだ場合。



「ひーちゃん…」
「京一?」
突然自分のすぐ後ろに立っている京一に、龍麻は驚いて振り返ろうとしました。
がしかし。
「きょ…」
「ひーちゃん…俺さ…冗談なんかじゃないんだぜ?」
「え……?」
不意に背後から龍麻を抱きしめてきた京一のその言葉に、龍麻は声を失いました。
「いつもさ…言ってるよな。好きだとか、一緒にいたい、とかさ」
ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めて、京一は龍麻の耳元で真摯な声で言いました。
「ひーちゃん、いつもかわすんだよな。軽くよ。それって実は結構キツイんだぜ?」
「京一……」
「なあ、ひーちゃんはどうなんだ? 俺の事嫌い?」
「…………」
「俺とさ、今日2人っきりでデートしようって言われて、何とも思わなかった?」
「………友達だもん」
「……ひでェの」
「京一だって」
「は?」
切り返されたその言葉に、今度は京一が面食らった顔を見せました。
けれどすっと自分の手に触れてきた龍麻の温かい熱にまた意識を引き戻されて。
「龍麻?」
そっと呼ぶと、龍麻は微かに震えたような声を出しました。
「いつも軽く言うから…信じていいか分からない」
「な…?」
「ああいう台詞って…あんな風にほいほい言うもんじゃない」
「だ、だってよ…」

本当にひーちゃんが好きだから。

そう言おうとして、けれど龍麻はぎゅっとそんな京一の手首を掴んでそれを制しました。
そしてその甲にそっと唇を当てて……。
「京一のこと…すごく好きだ…」
とても静かな声でそう言いました。
「ひーちゃ……」
けれど京一が感激に目を輝かせた、その直後。
「今の台詞、信じたろ?」
「へ……」
「こういう風に言わなきゃ……駄目だってこと!」
龍麻は悪戯っぽい笑みを向けるとさっと身体を捻り、ボー然としたような京一に自らのつけていたエプロンを思い切り投げつけました。
「わっ…!?」
「お前の為に夕飯作るのなんかやーめた! ピザにするからな!」
「んな…!? な、何でだよ、ひーちゃん!?」
「何でも!!」
そして龍麻は実に楽しそうにくるくると笑うと、後は慌てる京一には構わずに。
先ほどの台詞の心意も決して話さずに。
……嘆く京一にピザの宅配の電話をさせたのでした。


この2人、くっつくのも時間の問題なのだろうけど…。



【END12】



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