B.「風呂入ってくる」を選んだ場合。



「駄目だ……」
熱いシャワーを浴びながら、京一は悶々とした思いを振り払えずにいました。
意気揚揚と龍麻の部屋に来たまではいいけれど。
龍麻の笑顔とか、龍麻の安心しきった態度とか。
そういうのを見てしまうと、自分の気持ちをあからさまに龍麻にぶつけるのは悪いような気がしてしまう。
こう見えて蓬莱寺京一、人に気を遣う事にかけては天下一品なのです。
特に相手が龍麻なら尚更だったり。
「はー…何やってんだ、俺は…」
そして京一が煩悩を打ち払うべく、ばしゃばしゃと頭から湯を浴び龍麻の事を振り払おうとしたその時でした。
「京一〜」
「!!!」
浴室のガラス戸の向こうから龍麻が声をかけてきました。
「な、何だよ…?」
「俺もメシの支度終わったしさ。一緒に入るから!」
「は、はあぁ〜!?」
「何だよ、嫌なわけ? お前、自分ばっかさっぱりしてメシにしようって、勝手過ぎない?」
「だ…だだだだってだな…!」
「そりゃ京一の誕生日だからお前優先だけど。でももう服脱いだし。入るからな〜♪」
「ひ、ひーちゃ…!」

ガラリ。

「………っ」
もくもくと白い湯気が沸き起こる浴室内とはいえ。
京一、視力はとても良いのです。
勢いよくガラス戸を開けて中に入ってきた龍麻と面と向かう形になって、「見えない」わけがありません。
すっぽんぽーんな龍麻とご対面♪(その際、自分もすっぽんぽんだけどそんな事はどうでもいい)
「お邪魔〜」
「…………」
「うう〜さっむい。京一、シャワー貸して!」
「…………」
黙ってそれを差し出す京一に、龍麻は嬉しそうに熱い湯を身体に当てていっています。
それから茫然と立ち尽くす京一にようやく不思議そうな顔を向けます。
「……? 京一、どうかしたか?」
「…………」
「何だよーそんな急に入ったからってむくれるなって。確かに狭いけど、2人で入れない事ないんだから」
そうして龍麻は身体の一部にまだ石鹸の泡を残している京一に気づき、シャワーのお湯を向けながらにっこりと笑いました。
そして手を伸ばして。
「京一、泡残ってる。そのまま湯船入るなよ〜? もう、しょーがないなあ」
「…………」
言って、龍麻は自らの手で京一の身体の泡を洗い流してやりました。


プチ。


「あれ、何の音、今の……」

(がばああっ!!!)

「ぎゃっ!!」


銀の竜的「がばあっ」久々に登場。


「きょきょきょ京一〜!! ななな何してんだああああっ!!!」
「俺のせいじゃねー!! こうなるのは自然の理だー!!!」
「ななな何訳分からな……ひゃあっ!? ど、何処触っ…ひあぁ…っ」
「俺の理性は完全に消えたー! めちゃくちゃに抱いてやるぜ龍麻! 覚悟しろー!!」
「いやだあああああ!!!」



……しかしこれは誰がどう見ても京一の方が正しいのではないでしょうか。(そうか?)
もくもくもくと立ち上る白い湯気の中で。
更に別の湯気が立ち上ったのは、言うまでもありません。
良かったね、京一。



【HAPPY END13】




《戻》