B.「気まずくなった」を選んだ場合。



「ん? ひーちゃん、どうしたよ? 何か落ち着かなくねえ?」
龍麻のおろおろとした態度にようやく京一が気がついて言います。
「だ、だって…何か周り、カップルばっかりだから…」
「はあ? そりゃ遊園地なんてそんなもんだろ。ましてやこんなシチュエーションじゃな」
「きょ、京一は…恥ずかしくないの?」
「何で」
「だ、だって……」
言いづらそうにしている龍麻に、京一はひどく真面目な表情を見せていました。
それからそっと龍麻の顔を伺い見て言います。
「なあ、ひーちゃんは俺といるのが嫌か?」
「え?」
「恥ずかしい?」
「そ、そんなわけじゃ……」
「じゃ、さ」
そう言って京一は不意に龍麻の手を取り、どんどんと歩き始めました。
「京一…?」
途惑う龍麻にはお構いなしに京一は歩き、それからパレードをしている賑やかな通りからはすっかり外れた、人通りの少ない場所まで来ると。
さっと龍麻に向き合い、にっと笑いました。
「な。ここなら誰も見てないぜ?」
「あ……」
「ここならひーちゃんも恥ずかしくねえだろ?」
「お、俺、別に……」
「今日はよ。俺、我がままだけど絶対ひーちゃんと2人でいたいから。もう少し一緒にいてくれよ?」
「………そんな風に言うの、京一らしくないよ」
「へへ…そうかあ?」
「そうだよ……」
けれど龍麻は口ごもりながらも、不意に京一にこつんと頭をもたげかけ。
「ひーちゃん…?」
ぎゅっと抱きついてきました!
「京一……」
「ひ、ひーちゃん? どうした…?」
「俺……どうしよう……どうしよう、俺……」
「ひー……」
「俺…すごく…京一のこと、好きみたい……」
そして龍麻は突然京一に告白してきました。
これには京一も驚いているようです。
「ひーちゃん……」
「京一の俺への気持ちなんてさ…俺の想いとは別なのにさ……」
「な、何だよそれ……」
「な…今だけ…」
「ひーちゃん、ちょっ……」
「今だけ、一緒にいよ?」
「バカ、今だけとか言うなよ…!」
京一はこれには少しむっとしたようでしたが。
いつも人より余計に考え込む龍麻の、精一杯のその台詞です。
京一はごくんと自分の言いたい事を飲み込むと、龍麻の背中をそっと優しく抱きとめました。
「……龍麻」
そしてひどく静かな声でそう名前を呼び、龍麻の額にちゅ、と口付けました。
「好き…京一」
すると龍麻はもう一度つぶやくようにその台詞を繰り返し、京一に抱きつく腕に力をこめたのでした。



【HAPPY END2】



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