「御門と闘う」を選んだ場合



「あははははははーーー!! よくぞ言ったわッ、我が弟ッ!!」

 どこからともなく、甲高い声が鳴り響きました。
「と、伊周兄さん!?」
「さあ龍麻ッ!! あたしと一緒に、このくそ生意気な御門の当主をけちょんけちょんにぶちのめすのよーーー!!」
「…ふん、こちらが招いてやったとも知らずに…」
 御門さんがそうつぶやいたのにも構わず、龍麻の兄・伊周は実に愉快そうな笑みで龍麻を見つめました。
「まーったく、いつまでもドン臭いコって思っていたけど、一人でこんな所まで来られるようになったのねぇ。偉いわ、龍麻」
「に、兄さん…」
 龍麻はこれまで伊周兄さんに誉めてもらったことが一度もありませんでした。なので、ちょっぴり嬉しい気持ちになりました。

 けれど、そう思ったのも束の間。

「…晴明様の御前を汚す不届き者め…。これでもくらいなさい…! 天后不動明斬扇ッ!!」
「ぎゃああああーーー!!」
「わああああーーー!!」
 突然、どこからともなく聞こえてきた厳かな声と共に発せられたもの凄い力に、龍麻と伊周は否応もなく吹き飛ばされ、あっという間に塵と化してしまいました(うそ)。

 そうして…。

「う…ん…」
 ふと気づくと、龍麻は元の書庫に戻っていました。
「あれ…? 一体…」
 けれど、身体を起こそうとして、ふと気づきます。そばには伊周兄さんがいて、龍麻のことをかばうように寄り添い、そして自分は再起不能になっていたのです。
「に、兄さん……!」
 龍麻は今までのことが夢でなかったこと、そして伊周兄さんの、兄さんとしても最初で最後の優しさを見たのでした(でも実は死んではいない)。


 …こうして龍麻は相変わらず阿師谷の一族として平穏に、でも時に兄さんたちからいじめられながら暮らしましたが、あれから伊周兄さんだけは、龍麻に対してちょっぴりだけ優しくなってくれました。
 時々、そんな伊周兄さんがベッドに忍び込んでくるのが玉に傷だけれど・・・!




<完>





★後記★・・・こちら、阿師谷伊周×龍麻でジ・エンド♪……龍麻を庇って、伊ちゃんちょっと男らしい?


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