Aの選択をした場合
天童が待ちきれないというように、龍麻の腕を引っ張った時だった。 「………!!」 龍麻が不意に、涙をこぼした。 「おい…何を泣いていやがる…」 「うるさい……」 龍麻は言われて初めて自分の涙に気づいたのか、慌てて手のひらでそれを拭った。けれどその後の言葉は出せないでいる。 「うるさいで分かるか。俺は何で泣いているのかって―」 ピ―――――!! 「………!!?」 天童が龍麻に近づこうとした瞬間、いきなり笛の音が部屋中に響き渡った。 そうして、そうこうしている間にだだだと鬼道衆たちが2人の間を取り囲む。 「ゲームオーバーでございます、御屋形様」 「何だと…」 「ひーちゃん様を泣かせてしまいました。残念ながら、ここまででございます」 「ふざけるな! おい、龍麻!!」 「………」 「黙ってねえで顔をあげろ!て めえ、何とか―…」 後を続けようとした天童だったが、強引に顔を上げさせた龍麻を見て、思わず絶句した。 そこにいたのは……。 「残念だったわね、九角君?」 「み、美里葵……!」 「うふふ。龍麻が泣いたらゲームオーバー。それは最初から言ってあった事でしょう?」 「だ、だからって、何でてめえがいきなり龍麻とすり替わってやがる…っ! おい、龍麻の奴はどこへ行った?」 「貴方はそんなこと知らなくていいのよ。それより、嬉しくないの? 菩薩眼であるこの私が、わざわざ貴方の誕生日をお祝いに来てあげたのよ?」 「いらん!! 俺はお前だけはいらん!!」 「まあ…ひどい言い方」 そうは言ったものの、美里の方は別段気分を害する風もなく淡々としていて、やがて龍麻の制服を脱ぎ捨てると(一体いつ脱がせたんだ、美里!)、いつものセーラー姿になって天童のいた席に座りこんだ。 「さあ、気を取り直して飲み直しましょう。私に勝ったら…龍麻に会わせてあげてもいいわ。無理でしょうけどね」 「……言いやがったな。やってやろうじゃねえか」 「うふふ…。やっぱり九角君はそうでなきゃ。ほら、そこの下僕たち、何をぼさっとしているの!? さっさとお酒を持ってきてちょうだい!」 「は、はいぃっ!!」 美里に命令されるまま、鬼道衆たちはばたばたと忙しそうに部屋を出て行った。 こうして、ある意味「運命の2人」は、天童の誕生日に一晩中龍麻を巡っての飲み比べ競争を展開したのであった。 |
<完> |
◆一言コメント…結構気に入っているラストです。天童様と美里様、最強カップリングが夜を徹しての飲み会…!鬼道衆たちのこき使われる姿が目に浮かぶようです。それで、ひーちゃんはどこへ行ったのかというと…美里様によってお隣のお座敷でぐーぐー寝かされているのです。2人に寝込みを襲われたかどうかは…秘密♪