Aの選択をした場合





「おい、待ちやがれ!」
「は、離せよ…!」
 天童に腕をつかまれ、出て行こうとしたところを阻まれた龍麻は、戸惑ったような声を出しつつ天童の拘束から逃れようとした。
「何で逃げやがるんだ! 出て行くなら、出て行く前にきっちり答えを聞かせろ」
「何だよ、天童は…っ!」
 龍麻は言った後、きっとして天童の方を睨みつけた。そうして怒りをそのままぶつけるように、自由な方の片手で天童の胸を叩いた。
「何でそんな事訊くんだよっ!? 俺が天童のことを憎いか、だって? 馬鹿じゃないのか、お前…! 本当に…馬鹿じゃないのか!!」
「……違うのか」
「憎い奴の誕生日に…何で俺がわざわざ祝いに来なくちゃいけないんだよっ! 何でお前のとこのあんな鬼道衆連中と合わせて…こんな事しなきゃいけないんだよ!」
「……そうか」
 それを聞くと天童は龍麻の拘束を解いた。龍麻は自然に落ちる涙を必死に拭いながら、けれど立ち去ることはせずにただ俯いていた。
「……てめえのことを泣かせたら、このゲームは終わりだったな」
 天童がつぶやくように言うと、龍麻もはっとしたようになって顔をあげた。
「まあまあ楽しかったぜ。…礼を言ってやる」
「何だよ、それ……」
 龍麻は言った後、一瞬だけ躊躇したような顔を見せたが、やがて天童の腕をつかむと身体を寄せて押し殺すように言った。
「俺…帰りたくない……」
 天童が何も言わないと知ると龍麻はより一層辛そうな顔をしたが、今度はぎゅっと天童の腰に両腕を回し、離れたくないというように抱きついてきた。
「ゲームなんかもう知るかよ…。俺、このままお前といたいよ…」
「馬鹿な奴…」
 思わずつぶやくと、龍麻はそんな天童の方は見ないで声を荒げた。
「そうだよ、俺は馬鹿だよっ! こんな自分勝手な奴を…好きになっちゃったんだから」
「龍麻…」
 その言葉で、天童もようやく龍麻の身体に両腕を回した。多分、龍麻が痛がるだろうほどに強く。
 そして不敵な笑みを閃かせると言った。

「なら…ここに俺といろ。そばに…置いてやる」
「うん……」

 こうして2人は最早企画立案者の鬼道衆たちが入る隙もない程のラブラブモードに突入して。
 九角天童の誕生日は、この上もなく熱く過ぎていくのであった。



<完>





◆一言コメント…何となく誘い受ひーちゃん。どうも私の中での九主イメージは天童が龍麻を好きなのは間違いないとしても、それ以上に龍麻が受っぽく天童にべた惚れって感じなのかもしれないです。


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