質問52「娘を嫁にやるなら…?Part2」

夕刻。
バッティングセンター《アラキ》にて。
マスター不在につき、カウンターには珍しく修司の姿が。


杉本「はぁーあ、やれやれ。金利上昇で毎月の支払いが何万も上がっちゃいましたよ」
平 「まったく、景気上昇なんて一体何処の上流階級だけの話だってんだよなぁ?」
杉本「ですよ! あ〜、でもこうなったらやっぱり繰上げ返済にしようかなぁ。元本を減らしておけばもうちょっとは…」
平 「やめとけ。今の生活が余計カツカツになんだろ。元々杉ちゃんの10年完済って目標が高いんだよ。ケチな生活してっと子どもが卑屈になるぞ?」
杉本「うぅ〜。でもローン返済早く終わればその分貯金に回せるし〜」
椎名「うわぁ…。何かここの空間だけイヤな話してますねぇ。杉本さん、そんな不景気なため息ばっかりついてると、ますます髪の毛薄くなっちゃいますよ?」
杉本「(キッ)煩い! 気楽な独身貴族には分からない悩みってのがあるんだよ、こっちには! 色々と!」
平 「おう、そうだそうだ。大変なんだ妻子持ちは。どうだぁ、テメエに分かるか修司?」
修司「妻も子もいないんで分かりませんねぇ」
平 「(むっ!)なら正人は……分かるわけねェな」
正人「俺ァ今月の自分の生活自体がやべえよ。この間、万年金欠の隆にやたら集られたから」
数馬「そうやっていつまでもイイ先輩ぶってるとそのうち自滅しますよ? 先輩みたいな人は妻や子が出来た後も他人にイイ顔し続けてさ、自分の家庭もほっぽって。最悪、借金の保証人とかになっちゃったりする可能性もあるから」
正人「………(怒)」
杉本「まっ、まあまあまあ(焦)!!」
椎名「数馬……お前はよー本当に……」
平 「正人は大丈夫だ。何せ俺の娘を嫁にやってもいいランキング2位! 3人中の!」(※質問8参照)
正人「3人中かよ! こいつに勝っても嬉しくねんだよ!」(修司をキッと睨みつけながら)
修司「やっぱコウ君が1位なんだ?」←何か嬉しそう
平 「そりゃそうだろうがよ! 後ろにいるおっさん連中にも訊いてみろ! 全員が全員口を揃えてそう言うはずだ!」
椎名「あっ、じゃあその3人の中に俺入れたら?」
平 「無視」
椎名「おぉいっ!!」
数馬「はーい! じゃあボクが入ったら〜?」

そこらへんにいたオッサン連中全員「お前だけは嫌だ!!!」

数馬「……もう何なんですか、いきなり〜」
平 「テメエみたいな小生意気なガキに娘をやれるか!!」
杉本「同感」
椎名「まったく」
数馬「あのね。椎名さんだって対象外なんだからね。この人たちはみんな光一郎さん支持派だって」
修司「でもコウ君は駄目だよ」
平 「あ? 何で?」
修司「トモがいるから」
正人「………」(嫌そ〜な顔)
修司「同じ理由でトモも駄目だけどね」
数馬(相変わらずギリギリな発言するなぁ、この人)
杉本「あ〜。でもさ、確かに光一郎君ってトモ君の保護者みたいな存在だもんなあ。親、いないも同然なんだっけ? 全く、あんな良い子ども達をほっとく父親の気が知れないよ」
正人「もういいだろ、そんな話」
平 「いやいや、しかし言われてみればもっともだ。光一郎の性格を考えたら、トモが一人前になるまでぁ、自分が嫁を取るなんて気にはとてもなれないだろうよ! コウはトモの兄貴と父親の両方をやってる感じだもんなぁ!」
椎名「って事はトモが早く嫁に行けばいいわけだ! 俺、名乗り上げ〜!」
正人「椎名っ【怒】!!」
椎名「じょ、冗談だよ。冗談〜…」
杉本(目が本気だったな)
平 (目が本気だった)
数馬「バカだねえ」

光一郎「どうも」(遅れて登場本日の主役)

平 「おっ、噂をすれば!」
椎名「コウ〜! トモを嫁にやるならこん中で誰がいいー!?」
正人「早速かよテメエは! 冗談だっつっただろ!」
光一郎「は?」
平 「いやいや、アホはほっといていいからここ座れ。あれ、そういやあトモ迎えに来たのか? トモいねえぞ、今日は何かさっさと帰っちまった」
光一郎「あ、いいんです。あいつ今日は裕子の所に」
数馬「またぁ? ……ねえ荒城さん。たまには遊んであげなよ、あの人ともさぁ。でなきゃボクが全然トモ君と遊べない」
修司「俺だってトモと遊べないよ」
数馬「……光一郎さん、何か言ってあげて下さい。この人ホント訳分かんないですよ!」
光一郎「本当、訳分かんないな(笑)」
修司「……何だよーそれー(笑)」
椎名「なあなあコウ! 幾ら顔が良くてトモが多少懐いてても、そんな訳分かんない奴にトモをくれてやるのは嫌だよなあ?!」
光一郎「え?」
杉本「まだ言ってる…」
平 「ある意味しぶてえ…。正人が横でキレてるぞ…」
正人「……【怒】」←でも怒鳴り疲れた
数馬「あのね光一郎さん、さっきみんなで話してたの。トモ君の代理お父さんである光一郎さんとしては、トモ君を嫁にやるならこの中で誰が一番ふさわしいと思うかって」
正人「んな話してねえだろっ!」
光一郎「それと似たような話題、前もなかったか?」
平 「しかし実際どうなんだコウ? 俺もなぁ、娘を持つ身として言わせてもらえば、やっぱ相手の経済力の有無ってのは無視できねえな。勿論、互いの波長があうってのが一番大事なんだろうけどよ。可愛い娘に余計な苦労はさせたくねえだろ?!」
光一郎「は、はあ…」
正人「コウはトモの親父じゃねえっての」
数馬「トモ君、娘にされてるし」

修司「お金なんかどうでもいいでしょ。コウ君、トモの為に貯金してるしね」

数馬「え?」
平 「あ?」
杉本「は?」
椎名「……何それ? 何、コウってトモの為に貯金してんの!? マジで!?」
光一郎「……いや。まあ……そんな大した額じゃないです。バイト代で余ったら…」
修司「違う違う、絶対毎月貯金してるの。自分の食うもん減らしても貯金してる」
光一郎「してねえよっ。修司、お前余計な事言うなよ!」
正人「…………」←ややボー然。知らなかったらしい
椎名「やばい…俺、負けた…(涙)」
数馬「……ねえ。それってトモ君は知ってるの?」
修司「知ってるわけないねえ。なぁコウ兄ちゃん?」
光一郎「………」←むっとしてる
平 「くーっ! やっぱコウ! お前、俺の娘貰ってくれ〜!! ってか、お前こそ親父の鑑だーっ!!」(ばしばしと肩を叩く)
数馬「だから光一郎さんはトモ君のお父さんじゃないって…」
杉本「……ローン完済したらなんて言ってないで、俺も娘の通帳開こう……」
椎名「俺も! 俺もトモ貯金しよう! そしたらまだ望みあるよな!」←立ち直り早い(ってか壊れてる)
正人「椎名っ。お前はさっきから煩ェんだよっ!!」(蹴)
椎名「痛っ! 何すんだよ正人!」
数馬「八つ当たりでしょ……」(ため息)


修司「……ね? だからトモは駄目なんだよ。この中の誰も敵わない。……誰も取れっこないよ(笑)」



【完】