質問54「雨の日って好きですか?」 |
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北川兄弟宅、アパートにて。 修司「あ〜雨止まないなぁ、トモ」 友之「うん」(窓の外の景色をボーッと眺めている) 修司「湿気凄いし暑苦しいしぃ。あ、でもトモは暑いの平気だっけ」←この人はそんなトモを鑑賞中 友之「うん。ちょっと暑いくらいのがいいよ」 修司「ヘンな奴〜。だからこの家は真夏になってもクーラーつけないのか。…というよりも、クーラーなんてないもんな」 友之「扇風機ならあるよ。つける?」 修司「扇風機…。ああ、あれか。確か正人君が持ってきたってヤツ」 友之「うん。正兄がもういらなくなったからって」 修司「嘘だな」 友之「嘘…?」 修司「そうだよ。わざわざお前達の為に買ったなんて言ったら、トモもコウ君も遠慮すると思ってさ。だから言わなかったんだよ」 友之「……そう、なの?」 修司「そうだよ。愛だねえ」 友之「………」 修司「しかしなぁ、あのお兄ちゃんもどうせならエアコン買ってくれっての。なぁ? 村さん相手なら結構値切れただろうしさ」 友之「……正兄、クーラーは身体に良くないって、前言ってた」 修司「はぁ? それじゃ敢えて扇風機にしたのか? ……参るね全く」 友之「………」(じいっと修司を見やる) 修司「ん? 何?」 友之「修兄って、正兄の事何で嫌いなの…」 修司「んん?」 友之「会う度、喧嘩してるし…」 修司「トモが正人君のこと嫌いだから」(ニヤリ) 友之「ぼっ…僕は、正兄、嫌いじゃない…!」 修司「嘘だぁ。いっつもオドオドびくびくしてんじゃん。意図せず会っちゃったら『やばいっ』って顔してるしさ」 友之「し、してない…」 修司「してるしてる」 友之「してないっ」 修司「はははっ。何だよトモ、そんなムキになっちゃって。別に正人君には言わないから大丈夫だぞ? 修兄ちゃんにはちゃんと本心を言いなさいって」 友之「本当に嫌いじゃないよっ。正兄は……少し……怖い、だけ」 修司「……ふうん?」 友之「何…?」 修司「あ〜何かそれもいいなあって思って。俺もたまにはトモに『修兄って怖い』って言われたいっ」(唐突にむぎゅっ!と抱きしめる) 友之「……ッ!!」←あまりに突然で声も出ない 修司「でも正人君のキャラだとこういう事は出来ないからなあ。それはきついか」(パッと離す) 友之「……ぷはっ」←息詰まってた 修司「あのねえ、トモ。俺も正人君の事別に嫌いじゃないよ。向こうは俺のこと大嫌いみたいだけど。俺自身は何とも思ってないから」 友之「………」 修司「だから喧嘩もしてるつもりないよ。正人君がガガーッって噛み付いてきてるだけ」 友之「でも、修兄も時々何か言い返してる」 修司「うお、言うなあトモ。……ま、つい口が出ちゃう時あるのは、俺もまだまだだって事で許してよ」 友之「………」 修司「トモ。仲良くして欲しいとかは言うなよ。それは却下」 友之「……言わない、けど」 修司「なら、いい。あぁ、俺にとってあのお兄ちゃんはこの天気みたいなもんだな。人によっては…というか、大半の人間は奴を天気で喩えたら<快晴>って言うんだろうけどさ。……あいつは雨だよ、俺にとって」 友之「雨?」 修司「うん。嵐、とまではいかないけどね」 友之「曇りでもない?」 修司「曇りぃ? ……ま、まあ曇りでもいいかな。その中途半端さが何か面白いからさ(笑)」(「こいつ意味分かってて言ってんのか」と心の中で苦笑する修兄) 友之「………この話。正兄が聞いたら、きっとまた怒るね」 修司「そうだなあ。ま、いつもの事じゃん? 俺は別にいいけど? 言う?」 友之「正兄に? ……言わない」 修司「そう? まあ俺は何でもいいけどな」 友之「……でも、僕は雨好きだよ」 修司「ん?」 友之「晴れも好きだけど…。あ、学校行く時は雨だとやっぱり面倒だなって思うけど…。でも、こうやっている時とかは……雨の方がいいって思うから」 修司「こうやってる時? 何で?」 友之「………っ」 修司「ん? 何、トモ?」 友之「だって…」 修司「うん?」 友之「雨だと…。修兄が『やっぱり今日は出かけるのやめた』って言う事…多いから」 修司「え?」 友之「雨でも晴れでも…修兄がいなくなるの、いつも急だけど…」 修司「……うん?」 友之「でも、今日は雨だから行くのやめたんでしょ?」 修司「……そうだなぁ」(再び友之を引き寄せぎゅっと抱きしめる修司) 友之「修っ…修兄?」 修司「それ半分」 友之「半分?」(無理やり身体を動かして修司を見上げる友之) 修司「うん。その理由、半分。でもね、あとの半分は違うよ」 友之「?」 修司「確かにさ、トモに『行ってきます』って言おうと思って来たんだけど、トモの顔見てたら、あ、今日はやっぱりずっとこうやってトモ見てたいって思ったんだよな。だから」 友之「だから…?」 修司「だから、今日のお出掛けは、やめ」 友之「………」 修司「何? 何黙ってんのー?」 友之「あっ…。えと、嬉しいなって思って…」 修司「うんっ。俺もそう言いながら照れるトモの顔見れて幸せー!!」(ぎゅうううぅっ) 友之「ちょっ…苦しっ…」 修司「うん、決めたっ! よーし、俺も正人君に負けない為に大奮発しよっ! 北川兄弟の為にエアコン買ってやる! 夏に向けて!」 友之「え?」 修司「だってさぁ、正人君何か最近ずるいじゃん? 俺もうかうかしてらんないもんな」 友之「………」 修司「? 何? どうした、考え込んじゃって」 友之「うん…。あの、扇風機貰ってから、何か修兄と同じ風に言う人多くて…。何で正兄がずるいの?」 修司「ん?」 友之「それで…コウ兄が何か買ってくれるって言った人にはその場ですぐ断れって」 修司「……うーん。それはキリがないからなのか、コウ君もようやく危機感を覚えてきたって事なのか」 友之「???」 修司「まあどっちでもいいや。とにかく、エアコンは買うからな♪」 |
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【完】 |