質問56「子どもより子ども?」 |
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レンタルビデオショップ「淦」にて。 何故か今日は雪也と寛兎でお店の留守番。 寛兎「なー桐野」 雪也「ん。何?」 寛兎「この間、涼一の所行ってお仕置きされたのか?」 雪也「!! な…何の話?」 寛兎「《質問53》で連れて行かれただろー。涼一が怒ってて桐野にお仕置きするって言ってたぞ」 雪也「し、知らない。寛兎の聞き間違いじゃないの」 寛兎「……桐野、子どもに嘘ついていいのか」 雪也「えっ」 寛兎「子どもは大人の嘘を見て育つと、自分も平気で人に嘘つくようになっちゃうんだぞ。桐野は俺を嘘つきな可愛げのない子どもにする気か?」 雪也「いや…そんなつもりはないんだけど。というか、寛兎こそ、その言い方が既に子どもらしくないよ【困】」 寛兎「周りがヘンな奴ばっかりだから擦れちゃったんだな」 雪也「え」 寛兎「かと言ってガキばっかの学校もつまらない。分数の割り算とかしてんだぞ、今頃」 雪也「寛兎、もう分数の割り算出来るの?」 寛兎「余裕」 雪也「本当?」 寛兎「本当だぞ。でも自分で言うと自慢になるから、創、言ってくれ」 雪也「えっ!?」(ぎょっとして振り返る。いつの間にか店にやってきていたらしい) 創「……その会話には俺も入らなくちゃならないのかな」 雪也「創、いつからそこにいたの?」 創「結構前かな。寛兎が桐野君で遊ぼうとしていたからいつ止めようかとも思ってたんだけど。何だか面倒で黙ってた」 雪也「は、はあ…。というか、俺で遊ぶって…」 寛兎「創〜。俺の自慢しろよ〜」 創「何で俺がお前の代わりにお前の自慢をしなくちゃなんないんだ? …けど、まあ。今日は大人しくしていたようだから、一回くらいはいいか…」 寛兎「いいー♪いいー♪」 雪也「???」 創「桐野君。ほら、こいつって家庭の事情ってやつで屈折してるから学校にあまり行ってなかっただろ? でも家に通いの家庭教師が3人程ついててさ、もう小学校の教育課程は全部終わってるらしいんだよ。一応親父さん、こいつを私立の名門中学に入れたいらしいし」 雪也「へ、へえ? 寛兎、そんなに勉強出来るんだ? 凄い」 寛兎「凄いだろー」 創「今って中2くらいの範囲やってるんだっけ」 寛兎「おう。2元1次方程式のところやってる。英語は時制」 雪也「英語も…? 本当に凄い寛兎。俺が小学生の頃なんて、英語なんて考えもしなかったよ。数学だって、あ、算数か。計算が遅くてさ、先生からプリントの宿題たくさん出されたりして」 創「へえ。…桐野君の小学校時代って興味あるな。こいつと違って素直な可愛い子だったんだろうね」 雪也「そ、そんな事、全然。昔っから暗くてさ。いつもガキ大将みたいなのに苛められてたよ。その子、クラスのみんなに『お前ら桐野とは遊ぶな!』なんて命令したりして」 創「ふうん? ……それって、あれだよな」 雪也「は?」 寛兎「あれだ」 雪也「あれって?」 寛兎「涼一みたいな奴がいたんだな」 雪也「え??」 寛兎「しかも。何か本物がそろそろやってきそうで憂鬱だ」 涼一「来ちゃ悪いかっ!!」(バーンっっ) 寛兎「……本当に来た」 雪也「涼一」 涼一「雪っ。お前は何で俺が迎えに来る時の待ち合わせ場所をいっつもこの店にするんだよ!? 家で大人しく待ってろっての! いちいちこのウザ連中と顔あわせていかなきゃなんないだろ!?」 創「酷い言われようだな」 寛兎「バーカカーバ」 涼一「……ふん。テメエ、さっきの自慢話聞いてたぞ。何が2元1次方程式だよ! 笑わせんじゃねえ、んなの俺だって出来るっつーの!」 創「おいおい…」 雪也「涼一…今のはさすがに恥ずかしいよ…///」 涼一「バカっ。勘違いすんなって。俺がこいつくらいの年にはって話だよ! 俺だって家に常駐のカテキョが1人いて、おまけに通いは各主要教科毎に一人ずついたぞ!」 雪也「え? 本当に?」 涼一「何だよ雪! 本当だって、俺はこいつみたいにそういう自分の境遇を語ったり才能をひけらかすような真似しないから今まで黙ってただけだって! でも本当! 俺、ガキの頃《神童》とか呼ばれてたし!!」 創「……これまでの沈黙も今日の言動で台無しだけどね」 涼一「何っ」 創「まあまあ。けど、君が利発な子どもだったんだろうなってのは分かるよ。チェスだって一通り学び終えたの確か6歳の頃だって言ってただろ」 涼一「ん、ああ。学校行くようになってからつまんなくなってやめたけどな」 雪也「凄い…」 涼一「!! そ、そうか雪!? 俺、凄いか!?」 雪也「うん凄いよ。やっぱり涼一は凄い」 涼一「……!! へへ…へへへへへ」 寛兎「キモ〜」 涼一「はんっ、何とでも言いやがれ! そういうわけで、俺とお前じゃ確実に俺の方が上! 頭の良さは勿論、顔も財力も一番大事な性格も全部俺の方が上だ! だからこれ以上雪にまとわりつくんじゃねーぞ! 分かったか!?」 雪也「涼一…またそんな事言って…」 創「まあいいんじゃないの。もう慣れたよ」 寛兎「ふん、だけど年は俺の方が若い」 涼一「あぁ!?」 創「寛兎。お前もまたかき回すなよ。悔しいのは分かるが(笑)」 寛兎「だって創、こいつむかつく。けど、俺がぴちぴちの18才くらいになってる時、お前はもういい年したオッサン。桐野だって若い俺の方がいいって言うに決まってるな」 涼一「何だと!?」 寛兎「大体、性格だって俺の方が桐野に向いてる。俺は桐野の理想のタイプにぴったりだから」 涼一「な、何だよ雪の理想のタイプって!? どういうのがタイプだよ!?」 寛兎「お前、そんな事も知らないのか〜ほーへーふーん」 涼一「!!!!!」 創「だからお前はそう煽るなって」 涼一「ゆ、雪っ。お前の理想のタイプって? それって何だよ? だって俺の方がこいつより頭いいし顔いいし、性格だって俺の方がいいだろー!?」 雪也「え」 寛兎「桐野〜。俺は謙虚だから性格だけ訊く〜。俺の方がこいつより性格いいよな〜」 雪也「あ、の」 涼一「雪っ。何でそこで言い淀むっ。すぐに俺のがいいって言え!!」 雪也「う、うん。涼一も寛兎もいい性格してるよ」 涼一「……何かその言い方険がねえか」 雪也「! そんな事ないって。創、何とかしてよ!」 創「桐野君、俺を巻き込むような言い方やめてくれないか」 雪也「え?」 涼一「創っ! テ、テメエ、何でこういう時いつもお前ばっか雪に頼られるんだよ!? クールな風を装いやがって〜!!!」 寛兎「創、おいしいとこばっか持ってってずるいぞ」 創「ほらね」 雪也「………」 涼一「で、雪の理想のタイプってのは、どういうタイプだよ!?」 雪也「あ、その話終わってなかったのか…」 涼一「当たり前だろ!」 寛兎「俺も訊きたい」 涼一「! お前〜やっぱり知らなかったんだな、適当言いやがって〜!!」(ぎゅううぅと首を絞める) 寛兎「死ぬ〜」 雪也「!! 涼一!! そういうのはやめろって言ってるだろ!!」 涼一「びくっ」 雪也「寛兎、大丈夫か?」 寛兎「桐野〜」(ぎゅうううと抱きつく)←ずるい 涼一「………」 創「剣君。今、何考えてる?」 涼一「……別に」 創「ま、いじけるのは勝手だけど、どれだけマセてても寛兎が子どもだっていう事は君にも分かってるよな」 涼一「まあな…」 創「じゃあ君の方が大人な分、ここは抑えてくれよ。後で桐野君に不必要に甘えるのもなしだぜ」 涼一「ガキって得だよな」 創「は?」 涼一「俺と奴の今の一連の言動にそんな差異もねえのに。雪はバカうさぎは甘やかして俺には怒鳴ってんの。すげえ不公平…」 創「……差がないって自覚あったの」 涼一「あのなあ、俺があわせてやったの。バカうさぎに!」 寛兎「何か言ったか?」 涼一「フン、何も言ってねーよ。雪〜。俺が悪かったから、もう行こうぜ〜」 雪也「あ、うん」(寛兎を遠慮がちに解く) 涼一「今日さ、夕飯あれが食いたい! 雪がこの間作ってくれたやつ! トマトで煮込んださ〜…」←そしてあっという間に立ち直り去って行く涼一 雪也「ああ、あれか。うん、いいよ。じゃあ帰りにいつものスーパー寄って…」←それにあわせる雪也 寛兎「じゃあな〜」(手を振ってお見送り。案外あっさり引く) そして2人、退出。 創「………」 寛兎「? 創、どうした」 創「ん…。いや、剣君は気づいてなかったけどさ。桐野君は剣君にだって十分甘いだろ。行こうって言われてすぐ頷いてたし、夕飯のリクエストされて嬉しそうだった。少し怒ったって一瞬で許してる。ああいうのに何も感じない剣君ってのは本当に不思議だな」 寛兎「桐野じゃなくて?」 創「桐野君のは、あれは性格だろ」 寛兎「涼一だって単なる鈍感だ。桐野もだけど。2人揃って天然に鈍い」 創「まあな。……ところでお前。ホントに子どもか?」 寛兎「子ども〜」 |
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【完】 |