質問60「○○聞かれるのは恥ずかしい?」 |
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放課後の教室にて。 友之「あ…拡、どうしたの…?」 沢海「友之? 友之こそ、もう帰ったんじゃなかったのか? 何でこんな遅くまで」 友之「うん。図書室で今日の宿題……」 沢海「宿題? 今日、宿題なんて出てないよな? 明日の予習って事?」 友之「違う。あの、国語の時間の時に出せなかったやつ…」 沢海「ああ、感想文? 友之、授業中に書ききれなかったんだ?」 友之「うん…。感想文って…苦手だから…」 沢海「そっか。でも、あんなの深く考えなくていいんだよ。思った事そのまま書けばさ」 友之「うん…でも、それが難しいよ」 沢海「そうか? そんなもんかな…。で、書けたの?」 友之「あの…っ。それより、拡、その手どうしたの…?」 沢海「え? ああ、これ? 部活中にちょっと怪我しちゃってさ。爪やっちゃったみたいなんだ」 友之「剥がれたの…?」 沢海「ううん、全部はいかなかった。大丈夫、ちゃんと保健室で手当てしてもらったし」 友之「痛い…?」(近づいて何となく沢海の手に触れる友之) 沢海「……っ。へ、平気だよ? 全然…大丈夫」 友之「でも、痛そうだよ」 沢海「そ……本当大丈夫っ。え、えーっと! ホントに!」←折角触ってもらってたのに思わず自分から手を引っ込めちゃう拡 友之「……本当に?」 沢海「……うん。ありがとう、心配してくれて」 友之「ううん」 沢海「…あー…。えっと…その、それで、友之はもう帰る? 帰るなら一緒に帰ろう? 俺、こんなだから今日はもう部活は終わりだし。あ! 友之さえ良かったら帰りどっか寄ってかないか? な、何かさ、美味しい物とか! ケーキなんかどう? 俺、奢るし!」 友之「あ……駄目なんだ」 沢海「えっ。な、何で…」 友之「その…さっきの、感想文。まだ書けてなくて…。でも図書室の先生が今日はもう用事があって閉めなくちゃいけないから、教室でやってって言って」 沢海「そ、そうか…。でもさ、そんなのあとは家でやればいいんじゃないか? 帰ってからとか…」 友之「でも先生が今日中に出せって…。終わったら職員室の先生の机に置いて、そしたら帰っていいって」 沢海「な、何で友之だけっ!? だって、あれ他にも出来てない奴いたぞ! そいつら普通に帰ってたじゃないか!」 友之「そう…なの?」 沢海「そうだよ! 何だよ、友之だけそんな…っ!」 友之「………」←自分だけだったと知らなかったらしい 沢海「あ…!」←失言に気づいた 友之「……でも、出してから帰るって言っちゃったから。やっぱり、提出してから帰る」 沢海「と、友之、その…」 友之「拡は先帰っていいよ…?」 沢海「嫌だよ!」 友之「……っ」(びくっ) 沢海「あ…ご、ごめんっ。け、けどさ、それなら俺も待ってるからっ。な、終わったら一緒に帰ろう? だって一緒に帰れるなんて滅多にないしさ…!」 友之「でも…まだまだ終わらないと思うよ…?」 沢海「全然平気っ。俺はいつまででも待てる!」 友之「………」 沢海「も、もしかして迷惑か? 俺が待ってるの…。べ、別に、友之が書いたの見ようなんてしないし…」 友之「ううん…違うよ。あの、ありがとう。…急いで書くね」 沢海「! あ、ああ! 待ってる!」 そして5分後……。 友之「あの…拡…」 沢海「えっ? どうした? もう書けた?」 友之「え? う、ううん、だってまださっきから5分しか経ってないよ…」 沢海「え。あ、そうなんだ? じゃ、どうした?」 友之「……ずっと見てられると、気になるよ」 沢海「え?」 友之「ず、ずっと…そうやって、何で見てるの?」 沢海「……ええっ!? 俺、もしかしてずっと友之見てた!?」 友之「気づいてなかったの…?」 沢海「ごめんっ。何か俺、ちょっと違う世界いってた…(汗)! いや、何ていうか、こんな放課後の教室で友之と2人っきりなんて信じられな……じゃなくてっ。ご、ごめん、もう見ないよ! もう大丈夫! 続けて?」 友之「う、うん…」 沢海(うわ、ホントに全然気づいてなかった…。無意識のうちに凝視してたのか俺…///) そしてさらに5分後……。 友之「ひ、拡…」(居た堪れなくなったように原稿用紙から顔を上げる友之) 沢海「え、何? お、俺、今度はそんなじっとは見てなかったと思うけどっ。そりゃ…時々はちょっと見てたけどっ」←見てたのか 友之「で、でも…その、幾ら使ってない方の手でも、ずっと触られてたら気になるよ」 沢海「……うわあっ!? 何、俺まさかずっと友之の手に触ってた!?」 友之「………拡、わざとやってるの?」 沢海「!! ちがっ! 絶対違うっ! ほ、本当に無意識! 知らない間に触ってた! ホント! 友之の手、白くて小さくて可愛いなあと思ってたら……って、だから違ーうっ!!」 友之「………」 沢海「本当ごめんっ。もう邪魔しない! あ、俺前向いてるよ、それならいいだろ!? 安心して書けよ、な?」 友之「……うん」 沢海(やばい…俺、欲望に忠実過ぎだろ…/// でもこのシチュエーションがあまりにも…!) そしてさらに数十分後……。 友之「…――拡。拡…っ」 沢海「え……? あ…ごめん…。もしかして、俺寝てた…?」 友之「うん…///」 沢海「そっか…。今日ちょっと疲れてたからかな…。友之はどう? 感想文書き終わったか?」 友之「ううん…」 沢海「あ、まだ? 俺はいいよ。俺は友之が終わるまで待ってるから気にしないで続けて」 友之「でも、あの……気になるから……」 沢海「え? 何が? あ、俺がこうやって寝てたの気になったか? そ、そうだよな。友之が必死に課題やってるのに目の前の席で突っ伏して寝られたら気分悪いよな。ごめんな…っ」 友之「ううん…違うよ…。で、でも…」 沢海「? でも?」 友之「その…でも、気になったから…。……言」 沢海「え? 何?」 友之「拡の寝言…」 沢海「………ええっ!? お、俺何か言ってた!? 寝言!?」 友之「……っ」(こっくりと頷く中で何故か赤面の友之) 沢海「!!!!!」 友之「あの、やっぱり家帰ってから書く事にしたから。もう帰ろう…?」 沢海「え、いや、その、ちょっ…。あ、あのさ…友之? 俺はどんな寝言を…?」(恐る恐る) 友之「………」 沢海「……(汗)」 友之「……言えない」 沢海「!!!!!」 友之「もう帰ろう…っ」(そそくさとカバンにノート等詰め込み、先に教室を出ようとする友之。何故か妙に逃げ腰) 沢海「ちょっ…ちょっと待って友之…! それ凄く気にな…いや、訊くの怖いけど、でも放置も気になるっていうか…! と、友之っ! 友之、待てって!!」 友之「……っ」(どびゅーっ)←早足 沢海「と、友之〜(焦)!!!?」←自分も駆け足 結局、友之は自宅に帰ってから何とかかんとか感想文を書き終えた……が。 「何で学校で終わらせてこなかったんだ?」という光一郎兄の質問には、暫し沈黙した後、「恥ずかしかったから…」とだけ答えたとか。 沢海の発言の何が恥ずかしかったのは、遂に友之の口から語られる事はなかったという…。 |
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【謎のまま完】 |
タイトルの「○○」っていうのは寝言の事です。