質問61「家族が自分の学校へ来るのは嫌?」

光一郎の大学。
その表門付近にて。


ユズル「おおおおお! もしやっ! もしやそこにいるのは友之君ではっ!?」
友之「あっ。ユズルさん…!」(物凄くほっとした顔)
ユズル「何でっ!? どうしてここにっ!? うわあうわあ、というか、何で俺はここで君に会えたんだあっ! これってもしや運命!?」
ハルナ「こんな往来でぎゃあぎゃあ騒ぐな」(ばしっ)
ユズル「いてっ」
ハカセ「ひひ人は突然の幸運が己の身に降りかかると、こここんなみっともない反応を、と取る…。ま、学んだ」
ユズル「いってぇ…。って、ハルナ!? ハカセまで!? 何でお前らこんな所にいるんだよ!?」
ハルナ「何でと言われても、今さっきお前と共に講義を終わらせ一緒に出てきたんだろうが」
ユズル「でもノート買いに行くって言って別れたろっ!」
ハカセ「ははハルナの動物的勘で、なな何となく後にしたんだ。ノートは」
ユズル「くっ!」
ハルナ「物凄く悔しそうだな?」
ユズル「っていうか、お前っ! 今一体何で俺の後頭部殴ったんだよ!? しかも思いっきり! かなり痛かったぞ!」
ハルナ「大袈裟な奴だな。雑誌だ、ただの」(丸めて片手に握っていたものをすちゃっと見せる)
ユズル「またお前はそんな怪しげな雑誌を堂々と手にしやがって…! そんなもんで人の頭を叩くな! うつる! 近づくな、変態がうつる〜!!」
ハルナ「貴様…! マジで訴えられたいようだな」
ユズル「こっちの方が訴えてやる! この暴力男女!」(ファイティングポーズで応戦の構え。何気にフットワーク軽し)
ハカセ「とと友之君、ちょっと離れていよう。きき危害が及ぶと、たた大変だから」
友之「あ、あの…(汗)?」
ユズル「はっ!? おい、ハカセっ! そう言って一人だけ出し抜いて友之君をどっかに連れて行こうとするなっ」
ハルナ「そうだぞハカセ。貴様、そんなにこすい奴だったのか? お前だけは正々堂々とした奴だと思っていたのに」
ハカセ「つつつまらない言い掛かりは、よよよせ。とと友之君が呆れている」
ユズル「うっ」
ハルナ「むう…」
ハカセ「そそそれに、ぼぼ僕らが集まっていると、ただでさえ目立つ。周囲の注目をああ浴びる事は、とと友之君の望むところでも、な、ないはずだ」
ハルナ「悪かった」
ユズル「うん…。反省した。ごめんね友之君」
友之「えっ…」
ハルナ「私とした事がついこのユズルにつられてしまった。まさか友之、お前がここにいるなどとは思わなかったのでな。お詫びにこれから何処か良い所へ連れて行ってやろう。何処がいい? 寿司か、中華か、それとも一流ホテルの特上スイーツか?」
友之「あの…あの…」
ユズル「おいハルナ! お前は何だってホテルとか言うんだよ!」
ハルナ「あ?」
ユズル「どうもお前のそういう発言はいちいちエロい! 友之君をホテルに連れて行ってどうしようってんだ!」
ハルナ「お前が考えてる事」(ニヤリ)
ユズル「なっ…!? ななな何だとお〜!?」←動揺
ハカセ「煩い」(どかっ)
ユズル「いてっ」
ハルナ「ぎゃっ」
ハカセ「とと友之君をここ困らせる輩は、こここの僕がよ容赦しないぞ。いい加減、鎮まれ」
ユズル「は、は、ハカセ君…(涙)?」(両手で頭を抑えながら)
ハルナ「……貴様、六法で人を殴るとは何事だ。司法の神が泣いているぞ」(同じく頭を抑えながら)
ハカセ「友之君。そそそれで、今日は、どどどうしたんだい?」(やや屈んで目線を合わせつつ友之に訊く。2人は無視)
友之「あ、あの…コウ兄、は…?」
ハカセ「きき北川なら、ま、まだ授業中だよ。今日はぼぼ僕らより1コマ多く、とと取ってるからね」
友之「あの、今日約束してるんです…。学校終わったら、一緒にナイター観に行こうって…」
ハカセ「や、野球かい? ああ、そそそういえば、とと友之君は、野球ファン、だ、だったね?」
友之「はい」
ユズル「まだ野球って終わってなかったんだ」
ハルナ「興味がないから知らん。しかし友之? それで待ち合わせ場所はここなのか? よくあいつがお前をこんな人目の多い場所で待てと言ったもんだな」
友之「……ち、違うんです。僕、勝手に来ちゃって…」
ユズル「え?」
友之「待ち合わせは駅だったんですけど…。ここまで来たんなら、コウの大学見てみたいって…思って。い、1度だけ見に行きたいって言った事あったけど、見てもしょうがないからって言われて…。そのままで…」
ハルナ「ふーむ。それは《見てもしょうがない》じゃなくて、《来たら危険だから》の間違いじゃないのか?」
ユズル「俺らみたいに善良な学生だけじゃないからねえ。大学ってのは」
友之「……?」
ユズル「光一っちゃんの気持ちも分かるなあって事。友之君、会えたのは嬉しいけどさ、確かにあんまりほいほい一人でこんな所来たら危ないよー。大学生って暇な奴多いから、友之君みたいな可愛い子が一人でウロウロしてたら、絶対声掛けて捕まえて、そんでもってどっか連れて行っちゃおうって奴、出てくると思うもん。百人くらい!」
友之「ひゃ…百人…?」
ハルナ「お前、幾ら何でも話を誇張し過ぎ」
ハカセ「そうだぞ。せせ、せいぜい、二十人くらいじゃないか?」
ハルナ「……ハカセ」
友之「ど、どこか連れて行くって…何でですか?」
ユズル「そりゃあ、折角可愛い子をゲットしても他の奴の目に晒されてたら横取りされるとも限らないし。とにかく早いとこ人気のない所へ移動して、そんでもってさっさと2人っきりになろうと思うんじゃない?」
ハルナ「その割にはここで随分ぎゃあぎゃあと騒いでいたがな」
ユズル「むっ! 俺は善良な学生の方なの! 今のは悪い奴のたとえ!!」←ホントか?
ハルナ「なるほど。しかしまあ、ユズルの言う事も一理ある。もし私ならば、やはりとりあえずは車に拉致だな。狭い空間で2人きりなら尚更相手を御しやすいし。周りが暗ければ尚グッドだ。暗示もかけやすいだろう」
ユズル「……ハルナ。お前は一体何の話をしてるんだよ【怒】」
ハカセ「ぼぼ、僕は普通に、け健全に、明るいカフェでチョコパフェコースが、い、いいと思うんだが」
ユズル「そうそう、攻めるならそういう系だよな! 友之君には過激なの駄目だって。ま、俺は甘い物なら当然、自分が作ったものを食べさせたいね!」
ハルナ「ふん、貴様らの魂胆はミエミエだ。健全と言いつつ、そこには1つのパフェを2つで分けるだの、お口アーンして食べさせてあげるだののシチュエーションがついてるんだろうが」
ハカセ「そそ、それは必須だろう」
ユズル「いいだろ、食べさせてあげるくらい!」
友之「…………」←完全に置いてきぼり
ハルナ「ふん、私に言わせればそっちの方がよっぽどいやらしい。『私には下心なんてありません』という顔をして、徐々に毒牙に掛けていこうという戦法だろ。そんな焦らしプレイよりも、鈍い友之のような奴には、真っ向勝負でさっさと押し倒してしまった方が分かりやすいんだ。お前ら、そんなちんたらデートコースでどうやって服脱がすところまで持っていく気だよ。一ヶ月後か? 一年後か?」
ユズル「お前なー! その即物的な物言いよせよなー! いつものノリとはいえ、友之君を前に許さないぞっ」
ハカセ「そそそうだぞハルナっ。ま、また六法で叩かれたいかっ!?」
ハルナ「私はお前たちの本心を引き出してやろうとしているだけだ。友之がここにいた。フェイントでな。そして私たちはその友之を見つけた。絶好のチャンスだ。それで本当に手も握らなくて平気なのかと訊いているんだ」
ユズル「……そりゃ、まあ。手ぐらいは握りたいよな」
ハカセ「に、握りたい」←ヲイ
ハルナ「そうだろうそうだろう。他の人間が手を出さないうちに、何処か安全な場所へ移動させてやりたいだろう?」
ユズル「それは…まあ、そうだな?」
ハカセ「それは最初から僕も、おお思っていた事だ」
ハルナ「それでもってその後はどうせなら2人きりでイイ事したいだろ?」
ユズル「ゆ、誘導尋問だっ!」
ハカセ「異議有り!!」
ハルナ「どこがだ!? 全く、お前ら2人してどうしようもない嘘つきだっ。もっと正直になれ、正直にっ。友之が目の前にいるんだぞっ!?」(びしりと友之を指差すハルナ。珍しく興奮中)
友之「……っ」(びくっ)
ユズル「あ、友之君が怯えてる! もうハルナっ。とりあえずお前駄目っ。もう退場!」
ハルナ「何だと!」
ハカセ「ユズルに一票」
ハルナ「ハカセ貴様っ」
ユズル「ダメダメっ。もう友之君、こっちおいで! ごめんねこの変態が訳分からない事言ってっ。もう大丈夫だよ、俺が友之君をこの変態の目の届かない所へ連れて行ってあげるから!」
ハカセ「……ユズル。ぼぼ僕もいるんだが」
ハルナ「見ろハカセ、これが奴の正体だ! さり気なく良い奴のフリをして友之を連れ去ろうとしてるぞ! 自分一人で!」
ユズル「ア、アホかっ! お前が友之君を怖がらせたからだろっ! だから俺はっ!」
ハカセ「しかしユズルは、ぼぼ僕の存在も、む無視した」
ユズル「ハカセ〜!」
ハカセ「ここ、ここは平等に、僕が友之君を、ほほ保護するしか、ななないな」
ハルナ&ユズル「何でそうなるっ!!」
友之「あ、あの……!」
3人「ぎゃあぎゃあぎゃあ」←全然聞いてない
友之「………」


そして数十分後………。


光一郎「……友之、何で来た?」(ハアと珍しく深いため息)
友之「ご、ごめ…っ。コウが…大学で勉強してるとことか、み、見てみたくて…」(怒られたと思ってシュン)
光一郎「そんなの見たって面白くないだろ…って、別に怒ってないから顔上げろ」(落ち込む友之の頭を撫でるコウ兄さん)
友之「うん…でも…」
光一郎「何だ?」
友之「コウが…外でどんな風にしてるのか…」
光一郎「ん…」
友之「前から気になってた…」
光一郎「………」
友之「だから」
光一郎「で、どう思った?」
友之「うん。あの、中を見る事は出来なかったけど…。でも、面白い人がいっぱいいるから、コウも楽しいかなって…思った」(ちょっと嬉しそうに笑う友之)
光一郎「……そうか」
友之「コウ兄?」
光一郎「まあ、そう思ったんならそれでいいか…」
友之「え?」
光一郎「でもな、トモ。一言だけ言っとく」
友之「え?」
光一郎「大学ってこんな奴らばかりじゃないからな、一応」


3人「ぎゃあぎゃあぎゃあ」←まだやってる



【完】