質問69「日本でハロウィンパーティは必要か?」

舞台は光一郎が大学から帰るところ。


ハカセ「北川、これをやろう」
光一郎「(……? 今日はいやにハキハキしてるな…。)何だよこれ?」
ハカセ「見れば分かるだろう、世界の幽霊全集だ。ありとあらゆる国の代表的なゴーストたちが、詳しい解説と写真付きで紹介されている。…とと、友之君に、ああ、あげてく、くれ」←急にどもる
光一郎「……それはどうも。けどこういうプレゼント、お前らしょっちゅうするのはやめ――」
ユズル「光一っちゃーん! トリックorトリート! お菓子をくれなきゃイタズラするぞー! って、お菓子をくれなくても、俺はお菓子をあげるけどね!!」
ハルナ「おぉ光一郎、探したぞ。お前に渡したいものがある、というか喜べ、私からの特別な贈り物だ。少々かさばるので外の車に運ばせてある、一緒に来てくれ」
ユズル「待てよハルナ! 光一っちゃんには俺が先に声かけたんだぞ! つまり俺の方が先に渡す権利がある! 友之君への特製・シンデレラのかぼちゃ馬車ケーキ!」
光一郎「ああ……そういう……」
ハルナ「ふん、毎度毎度、お前のケーキなんかマンネリで何の新鮮味もない。私が運ばせたハロウィン用・仮装衣裳の方が百倍くらい興味をひく代物だ。友之にどんな化け物の格好をさせるか、よりどり見取りだ。どうだ光一郎、そそるだろう?」
ハカセ「ハルナ。ばば、化け物とは、とと友之君にふさわしくない言葉だと、おお思う」
ハルナ「ああ、そうか。確かに少々言葉がまずかったな。しかし友之なら、どんなおどろおどろしいコスプレをさせても可愛らしいお化けになること間違いなしだ。オオカミ男も赤ずきんちゃんに、ドラキュラもトマトのお化けに、ミイラ男もチラリズム女子に大変身!」
光一郎「言っていることはよく分からないが、お前がろくでもない想像していることだけは分かる」
ハルナ「何を言う! 光一郎だって見たいだろう、友之の仮装! お化けのコスプレ!」
光一郎「別に…」
ハルナ「そうやって己を偽って生きると疲れるぞ? まぁいい。お前が要らないというなら、私が直接友之に渡しに行く。偶に早く帰れる時くらい、兄弟水入らずにしてやろうと気を遣ってやったが、余計な世話だったようだし」
ユズル「あ、それなら俺も行く! 友之君が俺のケーキに喜ぶ写メ送ってくれればそれでいいって思っていたけど、ハルナが行くなら独りで行かせるわけにいかないし!」
ハカセ「なな、なら僕も…」
ハルナ「お前たち、そんなことを言って、本当は私がコーディネートする友之のコスプレ姿が見たくてたまらないんだろう? 正直に告白しろ!」
ユズル「んなわけないだろ! 友之君にそんなことさせる暇あったら、俺は友之君がおいしそうにケーキを食べる姿が見たいんだ!」
ハカセ「なな、何だかんだで、友之君が1番喜ぶのは、ぼぼ僕のプレゼントだと、おお思うよ。そういう意味では、ぼぼ僕も、友之く君の、知的欲求を満たされて喜ぶ顔がみみ見たい」
ハルナ「全くお前たちは…どんなマニアだ、気持ち悪い」
ハカセ・ユズル「どっちが!!」
光一郎「何でも受け取るから、とりあえずうちには来るな」(ピシャリ)


一方、こちらは友之の学校。


橋本「ねえねえ北川君、今日この後暇? 良かったら、帰りにここへ寄って行かない?」
沢海「!」(部活に行こうとしていたが、ピキン!として振り返る)
友之「何…?」
橋本「新しくできたショッピングモールの雑貨屋さん! ほらほら見て、ネットでも凄く評判がいいんだよ。しかも今はハロウィン仕様になっていて、お店全体がお化け屋敷みたいになってるの!」(スマホを掲げて友之に画面を見せる有頂天・橋本)
友之「お化け屋敷!」
橋本「(ふふふ…反応良し!)そうそう! まぁお化け屋敷って言ってもそんな怖いものじゃなくて、ファンシーホラーとでも言うか…コワカワイイって感じ?」
友之「面白そう」
橋本「でしょ!? でね、そのお店の隣に、これまた可愛いカフェがあるから、帰りにそこへ寄ってパンプキンパフェを2人でシェア…」
沢海「おい」
橋本「きゃあ、びっくりした! なな、何よ!? 突然人の背後から声かけないで! しかもそんな殺気立った顔して! 部活行ったんじゃなかったの!?」
沢海「そういうお前は、部活は」
橋本「今日は自主休養日よ! 部活より大事なことがあるのよ! 何せ! 今日は! ハロウィンなんですからね!」
友之「ハロウィン?」
大塚「やっぱり北川は絶対分かっていなかったと思うから俺が補足するが、ハロウィンってのは外国版の盆みたいなもんで、日本では何故か子どもがお化けの仮装して、大人に菓子をねだる日になってる。つっても、最近じゃ大人も誰でも仮装するし、菓子も食うけどな」
友之「お菓子を食べるお祭り?」
沢海「お前はそうやっていちいち友之に近づくな」
橋本「そうよ、あんたまで何を突然登場してんのよ、勝手に私と北川君の話に入ってこないで!」
大塚「いやそういうわけにはいかん。お前も部活に出ろ。でないと拡まで部活をサボる勢いだ、もうすぐ大事な試合があるのに」
沢海「べ…別に、俺は…!」
橋本「そうよそうよ、あんたは部活に出なさい、あたしは北川君と帰る―」
友之「でも橋本さん…、本当は部活あるのに、本当に休んでも大丈夫?」(心底心配そうな顔)
橋本「うっ…そ、そんな悲しそうな…良心が痛む顔をされても…! 私は、全然…!」
沢海「そうだ、お前はさっさと部活出ろ、辞めたりサボったりじゃ心象悪いだろ」
大塚「そういうお前も早く来い」
沢海「けど友之が…」
友之「僕は平気だよ? 橋本さんも、また部活がない日に一緒にそのお店行こう…?」
橋本「! ホントに? ホントに本当に? ハロウィンじゃなくても、そりゃあ一緒にデー…じゃなかった、お買い物とカフェ巡り付き合ってくれるなら―」
友之「うん。拡も大塚君も、一緒に…」
橋本・沢海「は?!」(「何で大塚まで!?」感満載)
大塚「……とにかく行くぞ。じゃあな北川、家帰ったらあの優しい兄ちゃんから菓子貰うといいぞ!」
友之「うん。(コウはそういうの、興味ないと思うけど…)」←ちょっと寂しそう


そして帰宅。


光一郎「ああ、お帰り」
友之「! …コウ、何してるの?」
光一郎「見ての通り、カボチャをくり抜いてるんだよ」
友之「ハロウィンだから?」
光一郎「何だ、よく知っているな。誰かから聞いた?」
友之「うん…。それに、よく見たら街がみんな、オレンジ色で、カボチャがいっぱいだったし」
光一郎「そう言えばそうだな。だから俺もこんなの買っちまったし」
友之「それ、中くりぬいてどうするの」
光一郎「ろうそく入れてランタンにするんだよ。中味の方は今晩のおかずだ。グラタンにでもするか。…今日はこのランタンだけで、部屋を暗くして飯食うか。何か雰囲気出るだろ?」
友之「! スゴイね? た、楽しそう…!」
光一郎「そうか? …こういうの、やっぱり嬉しいか?」
友之「よく分からないけど…でも何か、嬉しい。少し早いクリスマスみたいだし」
光一郎「そうか。じゃあ多分、あいつらからのプレゼントもきっとお前、喜ぶな」
友之「プレゼント?」
光一郎「そう。全く催促もしないのに一方的に何でも寄越してくる、あいつら。けどトモが喜ぶんなら、写メくらい送ってやるか…」
友之「何の写メ?」
光一郎「ん…お前が一番喜んだプレゼントの前で笑ってる写真」
友之「? じゃあ…このカボチャの前で撮る写真?」
光一郎「え?」
友之「僕、これが一番うれしい…」
光一郎「……ただのランタンだぞ?」
友之「違うよ。ただの、じゃない…」(キラキラした目で光一郎の手元を見つめる友之)
光一郎「……。(どうでもいいと思っていたはずなのにな…)」
友之「コウ?」
光一郎「何だっていいよな。お前がそうやって喜ぶんなら」


ハルナ「我々の言う通りだったろうが。友之はこういうイベントに目がないんだ」(望遠鏡で遠くから北川家を盗撮している犯罪者)
ユズル「けど俺たちのプレゼント、あれじゃいつ開けてくれるか分からないなぁ」」
ハカセ「…暗闇の中では本が読めない(涙)」



【完】