質問24「恋人にはメールを読まれても平気?」
※短編「届いた手紙」のその後―。

涼一の部屋。ほのぼのとした休日。


雪也「涼一、ちょっとくっつきすぎ…!」
涼一「だって雪が隠すからだろ!」
雪也「隠してるわけじゃないよ。ただ打ってるところを見られるのって落ち着かない」
涼一「何でだよ! 何でもない文だったら俺が見たって別に構わないはずだろ!」
雪也「そういう問題じゃないよ。それに涼一、さっきから何打っても文句言うじゃないか」
涼一「当たり前だろ! 返事なんか送らなくていいって言ってるのに…っ」
雪也「そういうわけにはいかないよ」
涼一「〜〜〜! もういいっ、勝手にしろっ!!」
雪也「……拗ねたって駄目だよ」
涼一「拗ねてない。正真正銘むかついてんだよ」
雪也「………」
涼一「……っ! ゆ、雪にじゃないぞ! 勝手に雪のアドレス教えたあのアホに怒ってんの!」
雪也「助かったじゃないか。片木さんからのアドレス捨てちゃってたんだから…」
涼一「だからメールなんかやんなくっていいって言ってる」
雪也「だからそれは……」
涼一「あーあー分かったよ! その代わり、打ち終わったら送る前に俺にも見せろよ」
雪也「……分かった」
涼一「あんま親しげな文にするなよ」
雪也「分かったって。……これでどうかな」
涼一「ん……」

メールどうもありがとう。
返事遅れてごめんね。こういうのはあまり得意じゃないんだ。
お勧めの本もありがとう。片木さんは読書家なんですね。
面白そうなので今度俺も読んでみます。

涼一「却下」
雪也「な、何で?」
涼一「何で? すべてが駄目だよ、こんな文。あの女が調子付くだろーがっ!!」
雪也「…勧めてくれた本のお礼言ってるから?」
涼一「それもある。こんな事書いたら、『じゃあ私の持ってるのを貸します♪』ってきっかけになるだろ」
雪也「そんなものかな…。でも面白そうと思ったのは本心だよ」
涼一「……(ぎっ!)。あの女はなっ、雪が好きなジャンルをわざと選んで読んでるだけなんだよっ!」
雪也「え?」
涼一「……っ」(しまったという顔をして黙りこくる涼一)
雪也「……そうなんだ」
涼一「……とにかく、そこの部分はカットしろよ」
雪也「あとはどこが不満なの?」
涼一「一行目から気に喰わない。『どうもありがとう』なんて、『どうも』は取れ。すげー嬉しがってるように見える」
雪也「は、はあ…?」
涼一「それから二行目。『ごめんね』って、『ね』ってのは取れ! フレンドリー過ぎる。女を有頂天にさせる」
雪也「か、考え過ぎだよ…(汗)」
涼一「雪の方こそ、考えがなさすぎるんだよ」
雪也「そんな事ないよ。同じ二行目、俺、さり気なく遠回しにメールは苦手だって書いているだろ」
涼一「全っ然そんな風に捉えられない。不器用で遠慮がちで可愛い奴ってイメージしか持てない」
雪也「りょ、涼一…」
涼一「三行目。相手の名前を呼ぶな。親近感を持たれる」
雪也「………」
涼一「……何だよ」
雪也「結局全部カットだなと思って」
涼一「……そうだよ」
雪也「…でもメールは送らなくちゃ」
涼一「……フン、分かったよ。だったらもう知らねーよっ」
雪也「………」
涼一「ったく、メール交換なんてくだらないもん、一体誰が流行らせたんだ…っ」
雪也「………」
涼一「…ちっ。無視かよ。熱心に打ちやがって…!」(携帯に目を落としメールしている雪也に悔しそうな涼一)
雪也「……送信」
涼一「……っ」
雪也「涼一」
涼一「………」
雪也「涼一って」
涼一「何だよ!」
雪也「メール、見てよ。どうせまた電源落としてるんだろ?」
涼一「は…?」
雪也「今涼一に送ったから」
涼一「え……俺?」
雪也「うん」
涼一「………」(驚きながらテーブルの上に放置していた携帯の電源をONにする)
雪也「目の前で読まれるのも何だかバカだけど…」
涼一「……あ」

涼一へ
いつも困らせてごめん。
でも今夜はお詫びに涼一の好きな物を何でも作るよ。
何が食べたい?

涼一「………」
雪也「こういうの、文になってるとすごく恥ずかしいな…っ」
涼一「……雪」
雪也「でもさメールって…言いにくい事も言えたりするし」
涼一「………」
雪也「あ…やっぱり嫌だった?」
涼一「……良すぎた」
雪也「え?」
涼一「すっごいいい」
雪也「あ…そ、そう(汗)?」
涼一「なあなあ。俺もこれの返事打つから。そしたらまた打って、それの返事。な、雪、いいだろ?」
雪也「いっ…いいけど…?」
涼一「よし、じゃあ打つぞ♪ えっとな……今夜のおかずは、ゆきがいい、っと!」
雪也「ばっ…バカ何言って…!」
涼一「送信!」
雪也「って、言いながら抱きっ…んぅ…っ!!」


……会話困難につき、これにて閉幕。




【完】