質問26「親友の恋人が気になってしまったら…?」

大学構内、とある大教室にて。


逢坂「桐野!」
雪也「あ…逢坂? あれ、この講義…?」
逢坂「いや別に。偶然廊下で桐野見つけたから追いかけてきただけ。涼一は?」
雪也「涼一はこれ取ってないんだ。教室なら―」
逢坂「ああ、いい、いい! あんな奴の顔は別に見たくない!」
雪也「え…?」
逢坂「昨日の飲み会でも散々人を陥れようとしやがって…! あの生き生きとした企み顔はまさに悪魔だったよ! あいつ顔いいから、ああいう時は余計悪辣に感じるっ」
雪也「………」
逢坂「あっ…! わ、悪い!」
雪也「え…そんな俺に謝らなくても…」
逢坂「い、いや…だって桐野って涼一の悪口聞かされるといつも顔曇るしさ…。そりゃ、親友の悪口言われたらいい気はしないよな…」
雪也「あ、でも…逢坂が言うなら別に…」
逢坂「えっ!? そ、それは何で!?」
雪也「な、何でって…。だって逢坂だって涼一とは親友だろ? 憎まれ口叩いてても何か微笑ましい感じするし…」
逢坂「いやそれは…果てしなく違うような…(汗)」
雪也「今、反応が遅かったのはどう返していいかちょっと分からなかったからで…。俺こそごめん…」
逢坂「いやそれは…全然構わないけど…」
雪也「………」
逢坂「……あ、あのさあ…。桐野は俺と話すの、疲れる?」
雪也「え…っ。ぜ、全然そんな事ないよ」
逢坂「ほ、本当か…? それならいいんだけど。ほ、ほら、俺らってこうやって話すようになってからまだそんな日が経ってないだろ? だから俺も何かうまい事話せなくてさ…」
雪也「ご、ごめんっ。何か気を遣わせたみたいで…!」
逢坂「え、ええ!? い、いやっ!そ、それは違うんだよ! そういう意味で言ったんじゃなくて…!」
雪也「あ、あの俺…普段からあまり人と話さないし、面白い話とかもできないし…。つい黙っちゃうんだ。本当ごめん」
逢坂「いやそんな…謝るなよ。何かすげーこっちが暗くなるし」
雪也「! ご、ごめん! ……あ」
逢坂「……はは。桐野って本当人がいいんだな」
雪也「………」
逢坂「可愛い……」
雪也「え」
逢坂「!! じゃなくてーっ!! か、可愛いとかってのは、そのう…その、つまり、そう! 男でもさ、そ、そういう風に言われる人いるじゃん。悪い意味じゃなくてさっ。よく言われない!?」
雪也「え…いや…」
逢坂「……涼一には?」
雪也「……っ」
逢坂「ああっ、じゃなくてっ!! 何口走ってんだ俺は!! あのさ、その、そういえば涼一とはどういう話してんの、普段? ほら、桐野口数少ないんだろ。涼一とはどうなのかなってさ!」
雪也「あ、う、うん…。涼一は話がうまいからいつも俺が喋らなくてもうまく場をもたせてくれるんだ」
逢坂「ああ確かに…あいつはそういうの天才的だもんな…」
雪也「……うん。涼一のそういうとこ、本当凄いんだよな」
逢坂「だ、だから…よく一緒にいるんだ?」
雪也「……うん」
逢坂「………」
雪也「逢坂…? どうかした?」
逢坂「あ、あのさあ…。でもさ、俺思うんだけど、人見知りなんて所詮慣れればいいわけだろ? そしたら普通に話せるし…話さなくてもヘンに気を遣う事もなくなるよな?」
雪也「う、うん…?」
逢坂「だったらさ。これからはもっと俺とも一緒に話したりすればいいんだよ。そしたらもしかして涼一より気の合う関係になれるかもだぜ?」
雪也「逢坂…」
逢坂「それで。これだけはハッキリ言っておきたかったんだけど、涼一たちが無理やり俺とくっつけようとしたA子本人には、昨日の飲み会の後きっぱり言ってやったからさ。お前とは付き合う気ないって」
雪也「あ、そうなんだ…?」
逢坂「おう! これですっきりフリーの身だぜ! いや元々フリーだったんだけど。だからさ、まあとにかく、これからどんどんアプローチするから! 俺は!」
雪也「あ、う、うん。頑張れよ」
逢坂「さんきゅっ! それでさ、早速なんだけど今度飲みに行かないか?」
雪也「あ、うん。それは勿論」
逢坂「えっ!? な、何でそんなあっさりなんだ!?」
雪也「え…? だ、だって約束しただろ? 涼一と藤堂も入れて4人で飲むって」
逢坂「あ〜…何だそれか…。うぅ、いやそれじゃなくてだな…」
雪也「でも、逢坂。俺、逢坂の役には立ちたいけど、ちょっと自信ないな…」
逢坂「へ…何が…?」
雪也「その、逢坂が好きだって子の事話したいんだろ? でも俺、さっきも言ったけど話下手だし…。涼一の方がそういう事に関しては何かいいアドバイスとかくれるかもしれないよ?」
逢坂「………」
雪也「あ、今度相談してみたらどうかな? 藤堂にも。藤堂、飲み会とかセッティングしてくれるかも」
逢坂「いや…ある意味既にセッティングはされてるけどな…」
雪也「? あ、そうなのか? それじゃ、頑張らないとな。逢坂、俺応援してるな!」
逢坂「………」
雪也「俺たちがやる飲み会の後にやるのか、それ? 本当、涼一に相談してみなよ。きっといい事言ってくれるよ」
逢坂「ああ…うん、そうだな。きっとすっげーいい事言ってくれるんだろうなぁ…(涙)」


……狙ってる奴の恋人に相談してどうする…と心で呟く逢坂であった。




【完】