質問27「究極の選択を迫られたら…?」

ぽかぽかの日曜日。河川敷グラウンドにて。


数馬「あ〜トモ君、みっけ!」
友之「あ…数馬」
数馬「まだ着替えてないじゃん。いつまでもこんな所で何してんのさ。何かねー、これから中原先輩が皆にご飯奢ってくれるんだって。トモ君も行こうよ?」
友之「え…い、いいよ…」
数馬「『い、いいよ…』じゃないっての。そういう風に付き合い悪いから、チームの皆さんともいつまでもギクシャクしちゃうんでしょ。皆、内心トモ君とはたくさんお話したいのに〜って思ってるんだよ?」
友之「う、嘘だ…」
数馬「は、嘘? 何でボクが君にそんな嘘つかなきゃなんないのさ。まったく、同じくピチピチの高校1年生だっていうのに、ボクなんかデカくて生意気で擦れてるから近寄るなって。ホント差別だよ。いじめだね」
友之「……数馬をいじめる人なんかいないよ」
数馬「………」
友之「…な、何…?」
数馬「……別に。そうやってボクの適当な発言にいちいち真面目に答えちゃう君にむかついただけ」
友之「え……」
数馬「そこで困った顔しない。またボクが君をいじめてると思われるでしょ」
友之「………」
数馬「もういいよ。ところで隣座るよ? で、さっきから1人でずっと何見てたの?」
友之「あ…これ。修兄がくれた写真見てたんだ」
数馬「は? 修兄って…荒城さん? そういえばあの人ってまた行方不明なんだっけ」
友之「帰って来るよ。昨日、これと一緒に手紙が来て、今日帰ってくるって」
数馬「……随分と嬉しそうだねえ。しかもよく動くじゃん、口」
友之「………」
数馬「また。だからそこで詰まったように黙らないの。別に責めてないんだから。で、写真見せてくれるの、くれないの?」
友之「あ…! こ、これ…っ!」
数馬「……ふうん? 風景写真? あ、これなんかはなかなかイイかもね」
友之「うん…! 修兄、すごくいい写真を撮るんだ。それ、いつも送ってくれたり…、帰ってきた時も見せてくれたりするんだ」
数馬「好きなんだ?」
友之「うん」
数馬「………荒城さんが?」
友之「え…? あ、うん…。修兄も、修兄が撮る写真も…」
数馬「へーえ。それで光一郎さんと比べるとどっちが好きなのさ?」
友之「え…? コウ兄と…?」
数馬「どっちもとか言うのなしね。どっちかにしなきゃ駄目」
友之「ど、どうして…?」
数馬「どうしてもだよ。世界がある日突然凶悪なエイリアンに侵略されちゃってさ、奴らから身を守る為に作られた秘密シェルターの定員が2人きりだったとしたらだよ? さあトモ君、君はどっちを選ぶって話なんだよ」
友之「な、何、その話…」
数馬「バカだなーもう。話自体はどうだっていいんだよ。いいからさっさと答えろよ」
友之「そ、そんなの…」
修司「そんなの簡単だよ、なあトモ?」
友之「あ…!」
修司「トモ久しぶり〜」(トモの背後からぎゅうっと抱きつく修司)
友之「わ…っ」
数馬「……あのー、気配断って突然現れるのやめてくれます?」
修司「ああ、悪いね。俺トモの驚く顔見るの趣味だから」
数馬「あーあ、腹立つなあ。それ、ボクと一緒」
修司「ふ…。数馬。お前ちょっと見ない間にホントイイ男になったな」
数馬「男の子は成長が早いもんで」
修司「そっか! だからトモは見る度に可愛さが増してるんだ。レベルアップしてるわけだな」
数馬「磨いてるのはボクですけど」
修司「はっ、言うね」
数馬「言います」
友之「………?」(不穏な空気を感じ取って無言の友之)
数馬「ところで荒城さん、最近蒸発する期間短くなってません? すぐ帰ってきちゃったら家出の意味ないと思うんですけど」
修司「元々俺の家出に意味なんかないよ。最近出没率が高いのは単純にトモが心配だから」
数馬「大丈夫ですよ。トモ君の面倒はボクがちゃんと見てますから。ね、トモ君」
友之「そ……っ」
修司「あーあ。正人君の時は心配なんかしなくて良かったのになぁ」
数馬「あんたらがノロノロしてるからいけないんですよ」
修司「……そっか。そうかもな」
友之「修兄…?」
修司「あ、そうだ。それでさっきの答えだけど、数馬は聞きたいか?」
数馬「え、何でしたっけ」
修司「おいおい、そんな露骨にイラつくなって。俺は正人は嫌いだけど、お前の事は割と好きだから」
数馬「……嫌だな、大人ぶった言い方しても駄目ですよ。ボクね、分かるけど。あんたみたいなのが一番最初に脱落するんだよ。そういう点では、ボクは中原先輩の方を買ってますからね」
修司「あー…。うん、そうだね。…そうかもな」
友之「……あの」
数馬「友之。お前な、この人に自分の考え代弁させるなよ? そしたら俺、ホントむかつくからな。絶交しちゃうよ?」
友之「えっ…。か、数馬…?」
数馬「だからさっきの答えだよ。光一郎さんと荒城さん、どっちかしか選べなかったらどうすんだって訊いただろ?」
友之「あ……」
数馬「よく考えて答えろよ?」
友之「……数馬はどうするの?」
数馬「は?」
友之「数馬はどうしてそこに入ってないの? どこに隠れるの…? エイリアンから…」
数馬「……はあ? あ、あのね。友之、君、何言ってんの?」
友之「2人しか入れないなら…そこ、コウ兄と修兄に入ってもらうから…」
数馬「…………」
修司「数馬君、分かった? だからそんな答えは簡単だって言ったろ?」
数馬「簡単、ね。確かにね」
修司「あ〜トモは本当に優しい良い子だなあ。修兄ちゃん、もうメロメロ」
友之「あっ…ちょ、修兄…っ」(また抱きつかれてもがくトモ)
数馬「……あ、そ! 分かった。それじゃあ、ボクとトモ君は外で一緒にエイリアンと闘う戦士になるわけだ。そうなんだね、トモ君?」
友之「え? あ、うん…っ」
数馬「……はーあ、まったく」
修司「う〜ん、トモの返事の仕方がまた可愛い〜v」(悦)


……というわけで、修司というよりは、珍しく友之に負けてしまった数馬であった。




【完】