質問28「物凄く照れくさい時って…?」

長閑な昼下がり。北川宅・アパートにて。


修司「自分で言うのも何だけど、俺って結構ラッキーな男かもな」
光一郎「何で」
修司「そりゃあ、こ〜んな可愛いトモのお昼寝タイムに偶然遭遇しちゃったんだから。いっつもこんな風にオコタでオネムになっちゃうわけ? 」
光一郎「なっちゃうな」
修司「宿題途中みたいだけど?」
光一郎「ちょっと目を離してたら、もう寝てたんだよ」
修司「それで起こしもせず、上着をかけてあげる? 優しいねえ」
光一郎「黙れ」
修司「まあまあ。寝る子は育つって言うしね。いいんじゃない」
光一郎「……子ども」
修司「ふ…ナニナニ〜? コウ兄ちゃんの中では、実はもうトモは子どもじゃないとか〜?」
光一郎「…煩ェんだよ、お前は。その探るような目はやめろ」
修司「酷いな、俺はいつもこんな目だよ。あー…でも確かにコウ君見つめてる時の俺の瞳って何割増しか色気ビーム放ってるかも」
光一郎「そうか。全っ然当たってないけどな」
修司「……そういう意地悪言うと、この眠り姫なトモ君にちゅーしちゃうよ?」
友之「ん……zzzz」
光一郎「何が 『しちゃうよ』 だ。もうしたくせによ…!」
修司「あれっ。何それ、トモから聞いたわけ? うわ〜…。ところでいつのやつの事を喋ったの、トモは」
光一郎「いつのやつ?」
修司「やべ、ヤブヘビ」
光一郎「修司、お前な…」
修司「怒るなって。俺はマジでお前にキレられるとこまではしてないから」
光一郎「……当たり前だ」
修司「大体、長年苦労して築いてきた 『大好きな修兄ちゃん』 の座を早々降りてたまるかって」
光一郎「………」
修司「誰かさんはもう降りちゃったみたいだし? これからは俺の独壇場かもね♪」
光一郎「……かもな」
修司「ふっ…。おいおい、真面目に取るなって! 嘘だよ、嘘。コウ君、そんな落ち込むなよー」
光一郎「うっせーな。お前と喋ってるから落ち込むんだよ」
修司「でも、嘘だから」
光一郎「何が」
修司「俺の独壇場って話」
光一郎「ん……」
修司「友之は光一郎のことしか見てないって」
光一郎「修司?」
修司「お前も」
光一郎「修司、お前…」
友之「あ…? 修、兄…?」
修司「トモ〜!! やっと起きてくれた〜! 嬉しいなあ、おはよう〜!!」
友之「修兄…いつ、来てたの…?」
修司「もうとっくに来てたよー。なのにトモはオネムさんでさ。こんな堅物お兄さんしか話し相手がいなくて寂しかったよ〜。だから今トモにお目覚めのちゅーしようかどうしようか悩んでたとこ」
友之「わ…っ。あ、あの、修兄…っ」
光一郎「……だからそうやってベタベタするな、お前は」
修司「何で。自分だってしょっちゅうやってるくせに。なあ、トモ?」
友之「え…。で、でも、コウ兄は…」
修司「え? ナニナニ、コウ兄は何!?」
光一郎「友之!」
友之「……っ。えっと、何でも…」
修司「トモ。コウ兄ちゃんの脅しなんかに屈して、お前は大好きな修兄ちゃんの質問に答えない気か? 大丈夫だって、俺はいつだってちゃんとトモのこと守ってあげてるだろ? だから言ってごらん?」
光一郎「…まったくお前のそのよく動く口は…」
修司「トモ、コウ兄ちゃんは、トモにあんまこういう事しないの?」(ぎゅうっと抱きしめながら聞く修司)
友之「そ…そんな事ないけど…。でも、修兄みたいには、いっぱいしないよ…?」
修司「あ〜そうなんだ〜。コウ兄ちゃんは照れ屋さんだからねー」
友之「照れ…屋?」
修司「そうだよ。トモもそうだけどね、愛情薄い家庭で育ってるから、好きな相手にどうやって愛情表現していいかとかが分かってないわけ。不器用な人だよ全く」
光一郎「修司」
修司「まあ、そこが好きなんだけど」
友之「………」
修司「あ、でも俺は勿論トモの事も大っ好きだよ〜」
友之「僕も……」
修司「ん?」
友之「修兄のこと…大好き、だよ…?」
修司「……おぉ」(苦笑してちらっと光一郎を見る修司)
光一郎「……こいつ、俺には滅多に言わない」
友之「あっ…。そ、その…!」
光一郎「あぁ、いい、いい。何でも好きにやれ」
修司「…何、好きにしちゃっていいわけ?」
光一郎「できないだろ」
修司「う…」
光一郎「トモ。お前、もう一回言ってやれ」
友之「え…な、何を…?」
光一郎「修司をどう想ってるかって事だよ。詳しくな、理由も添えて」
友之「う、うん。あの…修兄は…いつも、ずっと前からずっと優しくって、いっつも笑っててくれて…。あと、何でもできるし、すごいから…。だから、修兄のこと…」
修司「……い、息が」
友之「え?」
修司「ごめん、それ以上言われるとちょっと…。トモ、そういう事は2人っきりの時に言って欲しいかも」
友之「???」
光一郎「本性知ってる奴がいるとさすがに堪えるだろ」
修司「あーあーもーごめんなさい。どうせ俺もお前と同じだよ」
光一郎「分かってんならいい。1人で悟った顔してんじゃねーよ」
修司「はあい」
友之「………」


……親友の世界ってよく分からない…。1人心の中で首をかしげるトモであった。




【完】