質問30「デートは知人にバラす方?」

某私鉄駅のホームにて。


藤咲「あ〜何かドキドキするな〜。な、コージ君?」
光治「…知りませんよ」
藤咲「あっ、ヤだなもう、まだ怒ってるのか〜。全く面倒臭い奴だ、やれやれ」
光治「どっちがやれやれですか! 人の後、勝手につけてきといて!」
藤咲「だってお前が自主練出ないなんて絶対何かあると思ったんだもん。しかしまさか友之君と2人っきりでデートとはね」
光治「デ、デートって何ですか(赤面)! そんなんじゃありませんよ!」
藤咲「だってデートじゃん。映画観に行ってその後メシだ? ふふふ、お前の邪な心なんてこの俺には見え見えの見えだ」
光治「俺は! 藤咲先輩とは違います!」
藤咲「何がどう違うんだよ」
光治「友之君は俺の兄弟です。仲良くして悪いですか!?」
藤咲「何が兄弟だよ。殆どアカの他人だろ」

光治「ぐっ…先輩。その、時々黒くなるのやめてもらえません(汗)?」
藤咲「だっていつも自分を抑えているとストレス溜まるんだ」(にっこり〜)
光治「だからそれを後輩に当たるのはやめて…」
藤咲「友之君!!」
光治「あ…!」
友之「……っ。はっ…お、遅れて…っ。ごめん…」(息を切らせて走ってきた友之)
光治「そんな全然―」
藤咲「全然待ってないよ、友之君! それに君を待つ時間もまた楽しかったりするし。コイツは何だかのろのろしてたんだけどね〜」
光治「……おいコラちょっと待て(怒)」
友之「え…あの…?」
藤咲「しかし友之君、本当久しぶりだねー。元気にしてた? たまにはうちのガッコにも遊びに来てよ。生徒会室で美味しい御菓子ご馳走してあげるから」
友之「え…えっと…」
光治「あーもうごめん友之君っ! この馬鹿先輩、俺の知らない間に勝手について来ちゃったんだよっ。先輩のくせに変態なんだ。気配断って人を尾行するなんてさ」
藤咲「あ、何だか言いたい放題」
光治「先輩言っておきますけど。先輩の分のチケットはないですからね。俺は友之君と2人で行くつもりだったんですから」
藤咲「何だよ光治君〜。そんな冷たい言い方ないだろ〜」
光治「知りません!」
友之「………」
藤咲「いいよ。じゃ、憐れみを誘う感じに指くわえながらすごすごと後つける」
光治「……どっちみちついて来るんですね」
友之「……っ」
光治「もういいや、行こう友之君…って、あれ?」
藤咲「ん…? あ、友之君が笑ってる…」
友之「……あ。ご、ごめん…。何…何だか、2人の会話、面白くて…」
光治「いやそんな…別に笑わせるつもりは…」
藤咲「やーしかしいいもん見れた。友之君ってホント可愛いよね」
友之「え……・」
光治「なっ、何言ってんですか先輩! 突然!」
藤咲「いや俺はそのまま思った事を口にしただけだけど。ねえ友之君、学校でもモテるだろう? ヘンな虫ついたりしてない?」
友之「そんな事…(困)」
光治「…け、けど確かに…。虫っていうか、友之君の周りって何か凄いよね…」
友之「え?」
藤咲「あ、そうそう。前行ったあの食事会楽しかったー。何気にバチバチだったよな。俺なんか完全よそ者扱いだったような気が」
光治「それでも最後までふてぶてしく居残っていた先輩を俺は尊敬しましたよ」
藤咲「何だ、やっぱりお前俺の事尊敬してたのか」
光治「面の皮が厚いってんですよ!!」
友之「……っ!!」(びっくり)
光治「あ……」
藤咲「わーもー光治君口悪〜い」(ニヤリ)
光治「……いい加減にしないとキレますよ」(ぎりり…!)
藤咲「まあまあ落ち着け光治。よく考えてもみろ、後から参戦した俺たちはどうあっても分が悪い。あの人たちはもう随分と前から友之君を知ってて、且つ親密度も高い」
光治「う…ま、まあ…」
藤咲「素直になれ、光治。ハッキリ言ってお前、友之君と兄弟以上に親しい関係になりたいと思っているだろ? ん、どうなんだ!?」(こっそり耳打ち)
光治「そ、それは…」
藤咲「だったら恋愛に関しては百戦錬磨の藤咲先輩を頼らないでどうする? ここはひとつ、共同戦線を張ろうじゃないか」
光治「ええ…? 何か物凄くアヤシイんですけど…」
藤咲「ほほう。光治君、俺がここまで言っているのに、そうくるか」
友之「……? あの…映画行かないの…?」
光治「あっ、ごめん。友之君。行くよ、行こう!」
友之「あの…藤咲先輩は…?」
光治「この人は行かないから」(きっぱり)
藤咲「そうそう。光治は閉ざされた暗闇空間で友之君の横顔をこっそり盗み見たり,おもむろに手を握ったりするんだもんな」
光治「なっ!?」
藤咲「そんでもって膝をすりすりしたり、もしかするとそれ以上の事もしようとしてるんだもんな。あ〜若いって罪だよな」
光治「な、何を言ってるんですか、もう! そ、そそそんなわけ…!」←その割にどもる
藤咲「ほーお、違うと言い切れるのか? 純情光治君だって男だろう。違うと言われても、そんなのとてもじゃないが信じられないなー」
光治「本当です! お、俺はただ本当に友之君と映画をっ!」
友之「………」
光治「友之君! 本当だからねっ」
藤咲「なら俺も連れてけ」
光治「へ…」
藤咲「拒否ったらお兄さんに電話して『光治が友之君に不埒な事しようとしてます』って匿名電話掛けるぞ」
光治「は、はあ!?」
藤咲「邪な気持ちがないなら別にいいだろ、俺が行っても♪ と、いうわけで! さ、友之君。張り切って行こう! 映画、普段からよく観るの?」
友之「あ…えっと、そんなに…」
藤咲「ふうん、そうなんだ? じゃあ今度面白いの貸してあげるね。俺、いいの結構持ってるから」(友之の肩を抱きながらホームに来た電車に乗り込む藤咲)
光治「……結局1番タチ悪い虫は先輩じゃないか…くそー…」(嘆息)




【完】