質問33「独り身の切実な悩みって?」 |
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バッティングセンター・アラキにて。カウンターから外れたテーブル席。 数馬「しーな、さんっ」 椎名「んあ…? 何だ数馬か…。何か用か」 数馬「何か用かって。何その冷たい言い方は。1人でぽつねんとしてたから、可哀想と思って声かけてあげたんじゃない。どうしたの、いつもは平さんたちとあっちで盛り上がってるのに」 椎名「ほっとけよ…。お前みたいなノーテンキ野郎とは違って、俺には色々と悩みがあんだよ…」 数馬「はあ? はは、めっずらしい。ナニナニ、どんな悩み? ボクが聞いてあげるよ」 椎名「冗談じゃねー、いらねーよっ。あっち行け、しっしっ!」 数馬「何だよもー冷たいなあ。まったく、このチームのおじさん連中はトモ君にはすごく優しいくせに数馬クンにはこれだからね」 椎名「当たり前だろーが。トモとお前じゃ可愛さが天と地ほどに違う」(きっぱり) 数馬「はー…はいはい」 椎名「何だよそのリアクションは。見ろ、あの可愛らしい横顔! 一生懸命バット振ってるとこがまた…いいんだよなあ…」 数馬「全然当たらないとこがまた情けないよね」 椎名「ばか、ああいうとこがまた可愛いんじゃねーか! 空振ってる時の腰の回転もすげーいい! 俺はトモにはいつまでも下手でいて欲しいって思ってるくらいだ!」←ひでえ… 数馬「椎名さん、マニアな発言をするのは勝手だけどさ。もういい年なんだから、犯罪に走る真似だけはしないでよね」 椎名「うっ、煩ェな! 走らねーよ!」 中原「よー、何の話してんだ。珍しい組み合わせだな?」 数馬「あっ、中原先輩〜。椎名さんがトモ君の細くて可愛らしい腰を引き寄せて抱きしめたいって」 中原「……あ?」 椎名「ばっ…! お前は、俺はそんな事一言も言ってないだろーがー(大焦)!!」 数馬「意訳してあげたの」 椎名「なってねー!!」 中原「……椎名」 椎名「まっ、正人! お前、俺がホントにそんな事言ったと思うか!?」 中原「知らねーよ。言ってないなら、ンな焦る事ないだろが」 椎名「うっ…。だって正人、俺がトモに邪な気持ち抱いただけで蹴りいれてくんじゃん」 中原「当たり前だっ。テメエ、やっぱ思ってたのか(蹴)!」 椎名「いてー!!」 数馬「はいはい、喧嘩しない。まったく2人とも本当に社会人なの? もうちょっと大人らしい言動を心がけてくれないと、傍で見てるトモ君も困っちゃうよ。ねートモ君?」 椎名「わっ!? ト、トモ、出てきてたのかっ(焦)!?」 友之「あ……」 中原「おいトモ! このオッサンに近づくな! おら、ここ座れ」 友之「う、うん…」(大人しく正人の隣に座る友之。椎名とは斜め前の位置) 数馬「先輩はボクには座れとも何とも言ってくんないんだよなー」 中原「お前は立ちでいいだろ」 数馬「はーあ。しまいにはいじけるよ、ボク?」 友之「か、数馬、ここ座る…?」(慌てて自分が座った席を譲ろうとする友之) 中原・椎名「立たなくていい!」 友之「……!」(びっくり) 数馬「……トモ君はそこにいな。練習で疲れた後はキミの可愛い顔見て癒されたいんだって、このお兄さんたちはさ」 友之「そ、そんなの…(困)」 中原「……おいバ数馬(怒)」 数馬「それはそーとっ。ねーねー話がそれたよ。椎名さん、さっきから何を悩んでたのさ」 椎名「あ……忘れてた」 中原「何だお前? 悩みなんかあんのか?」 椎名「お、お前な…! 俺はこれでも正人より長く生きてんだぞっ。悩みの1つや2つ…」 中原「つっても、お前って何か年上って気がしないんだよな。蕗島もそうだけどよ」 数馬「気持ちだけやたら若いんだよね」 椎名「〜〜〜!」 数馬「あっ、じゃあ皆で賭けしようよ。椎名さんの悩みを当てた人にビール1本!」 椎名「俺の悩みはビール1本分か!」 中原「乗った。俺は女だな。コイツ妙なとこでヘンな女に引っかかるから、それで何かトラぶってる」 数馬「あーずるいなあ、それボクと被るよ。そんじゃ、田舎のお母さんからお見合い写真が送られてきたんだけど、心にトモ君というオアシスがいるから迷ってる。これにしようかな!」 友之「え…? あの…」 椎名「……お前は当人がいる前でそういう事を平然と言うなよ…」 中原「流しとけ」(嘆息) 数馬「じゃ、最後はトモ君! トモ君はどう思う? 椎名さんが何か悩みあるんだって。どんな悩みだと思う?」 友之「え…分からな…」 数馬「分からないってのナシだからね! それにカワイソウでしょそんな簡単に言い捨てたら! 椎名さんはトモ君に心配してもらえたらそれだけで幸せになれるんだから」 椎名「だから当人にそういう直接的な言い方をだな…(汗)」 友之「……悩み」 中原「適当でいーんだよ。当たったらこのオッサンがジュース奢ってくれるってよ」 椎名「トモだったら別にフツーに奢るけどな…って、イテエ!」 中原「エロくせえ目向けてんじゃねーよ」←またテーブルの下から蹴ったらしい 椎名「痛い…(涙)」 友之「……あ」 数馬「お、何か思い立った? 何、椎名さんの悩み?」 友之「えっと…今晩の夕飯のおかず…」 中原「は?」 数馬「ぷはっ! ははは、何それ〜! トモ君、ひっどいなあ、椎名さんの悩みはたかが夕飯のおかずレベル〜? キミ、それは何気にひどいよー」 友之「そ、そう、なの…?」 椎名「いや、ひどくねーよ。当たってるもん」 数馬「は、はあぁ? 何、ホントにそんな事だったわけ〜? うわ〜、情けな〜」 椎名「う、うるせーなっ! 1人暮らしには切実な問題なんだよ! メシの事は!」 中原「あーまーそうかもな。めんどくせーんだよな、いちいち考えるの」 椎名「そうそう。特に独身の1人メシってのはァ、寂しいもんなんだぜえ?」 数馬「そんな事いばられてもボクには分からないし」 椎名「けっ、お前は1人になった事ねーもんなあ! はいはい、ヤな奴!」 友之「あの…ご、ごめんなさい…」 椎名「え?」 中原「……? 何だよ、何でトモが謝んだ?」 友之「だって…」 椎名「!! いっ、いーんだって! トモはそんな気にする事ー!!」 中原「……ちょっとお前黙れ。おいトモ。お前、こいつに何か言われた?」 友之「あ…」 椎名「あっ、いやいやそんな事はっ(焦)」 中原「黙れっての」 椎名「……(汗)」 友之「あの…椎名さん、せっかく誘ってくれたのにって…」 数馬「……この人、何て言ったの?」 友之「え…あの、休みの日は特にご飯考えるの大変だから、外で食べた方がいいって…」 数馬「……それで?」 中原「………」 友之「でも1人で食べに行くのもつまらないから、一緒に食べに行かないって…」 椎名「さ、さ〜て、今週のサザエさんでも見に帰…」 中原「待て椎名。…トモ、お前誘われたのか? コイツに?」 友之「え? あ、うん…。椎名さん、ホテルのレストラン連れて行ってくれるって…」 数馬「ホテル〜? それはまたベタな…」 中原「椎名っ!!」 椎名「わー! おっ、落ち着けっ。ホテルってのは別にアヤシイホテルってわけじゃー」 中原「るせー! テメエは、何勝手にンな事ー!!」 椎名「いーじゃんか、だって給料出たばっかだったんだもんー!!」 中原「だもん、じゃねー!!」 (ぎゃーぎゃーと口論始まる) 数馬「……それでトモ君、キミ何て返答したの?」 友之「え? あ、今日コウ兄と修兄とでご飯食べに行くから、2人が一緒ならって…」 数馬「………」 友之「でも、椎名さん、それならいいからって…」 数馬「……それで晩飯メニュー、ね。納得」 |
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【完】 |