質問38「人気商品は気になる?」

レンタルビデオショップ「淦」にて。


創「どうしたの。珍しいね、君が1人でここに来るなんて」
涼一「煩ェな、俺だって別に来たくねーよ。けど、あいつをここにやるくらいなら俺が行く」
創「なるほどね。今日は桐野君家で鑑賞会?」
涼一「俺は映画なんて観たくないんだけどな…」
うさぎ「自分勝手バカ」
涼一「……おい、カウンターの下からクソガキの声が聞こえたぞ」
創「君が来たから避難したみたいだよ」
うさぎ「桐野を寄越せ」
涼一「……くそ、むかつく。まあいい…。こんな所でモタモタしてたらその分雪との時間がなくなる。おい、早く選んでくれよ」
創「何? 何借りるか決めてなかったの」
涼一「何でもいいんじゃねえ? 特に注文つけられなかったし」
創「だったら、尚の事君が選んだら? 2人で観るものなんだし、君の誠意ってやつを桐野君に伝える良いチャンスだと思うよ」
涼一「な…んで、たかが映画借りるくらいで…」
創「君、本当に桐野君のこと分かってる?」
涼一「むっ! 何だよその言い方は!」
うさぎ「バカ涼一」
涼一「このっ! 出て来いオラ!」
創「静かに。俺が言いたいのは、桐野君を感動させる程の良い作品を君が選んできたら、桐野君の君に対する評価も上がるんじゃないのって事。彼が本当の映画好きだって事くらい分かるだろ」
涼一「だって俺は映画なんて好きじゃねーもん」
うさぎ「お前の事なんか聞いてない」
涼一「〜〜〜!」
創「騒ぐなら他所へ行ってくれ」
涼一「さ、騒いでねーだろ…! よ、よーし、分かった。選んでやろーじゃねーの。俺だって雪と知り合う前までは結構観てたんだからな…」
創「あ、そうなんだ。なら君の好きなものを持っていけば」
涼一「そ…だな。んじゃ、これ。90年代にヒットした社会派サスペンスドラマ。向こうでも結構ヒットしたらしいし」
創「それは桐野君ももう観てるね」
涼一「……じゃ、これ。ちょっとマイナーだけど、音楽が割といいんだよな」
創「それも鑑賞済みだね」
涼一「おい何でお前がそんな事知ってんだよ」
創「それ観たって話聞いた事あるから」
涼一「じゃ、これは? これとこれとこれは?」
創「それも観てるね。……とりあえず雑誌に紹介されたものとか向こうのベストランキングに入ってるやつは外した方がいいよ」
涼一「あいつ…俺には全然映画の話なんかしない…」
創「君が興味ないって切り捨てるからだろ」
涼一「それでも! お前にはこんな話してんじゃねーか!!」
創「俺も映画好きだから」
うさぎ「恋人にしたい条件ベスト5。趣味が同じ!」
涼一「そこのくそうさぎ出しやがれ(怒)!!」
創「雑誌読んでるだけだって」
涼一「ぜってー嘘! そのタイムリーな発言は何なんだよ!」
創「煩いなあ…。それで、映画はどうするの? 俺が選ぼうか?」
涼一「冗談じゃねー! 俺が選ぶ! ……雪が観てなくて感動しそうなやつ……」
創「桐野君はアクションとか恋愛ものはあまり好きじゃないみたいだよ」
涼一「……これも有名。これも知ってるだろうしな…」(ぶつぶつ)
創「そういえばホラーもモノによっては苦手だって」
涼一「うるせーな! 俺が選ぶって言ってんだろ! 黙ってろっての!」
創「やれやれ」
うさぎ「創」
創「ん…何だ」
うさぎ「この間、桐野にこれが今週のオススメだって教えたら真っ赤になって喜んでた」
涼一「!?」
創「……それは喜んでたんじゃないと思うけど」
うさぎ「滅多に入手できない代物だけど、淦にはあるんだよな」
創「まあ…あるけどな。需要が多いから」
うさぎ「この間もな、女子大生の2人組が面白過ぎて感動して泣いたって言ってた。その前は主婦集団が借りに来て萌えた萌えた〜って言ってた」
創「あ、そう」(しら〜)
涼一「……何だよそれ。どういうの?」
創「気にしなくていい。女性に人気なんだ。君たちには合わないよ」
涼一「けど気になる」
創「自分で選ぶんだろ」
涼一「訊いてるだけだろ。それ…今週のオススメなのか? 新作?」
創「まあね」
涼一「ってことはあいつもまだ観てないよな…」
うさぎ「予約殺到! だから淦は凄い!」
創「誉めてもらえて恐縮だ。けど、剣君には貸せない」
涼一「! 何でだよ!」
創「君、自分で選ぶって言ったじゃないか」
涼一「選ぶよ。俺の意思でそれがいいって言ってんの。俺の勘がそれは面白いって言ってるから」
創「……うさぎが言ってるやつだぞ」
涼一「雑誌に書いてあんだろ? いいから貸せって。俺は客だぞ」
創「……知らないよ」
うさぎ「毎度ありー!!」(チャリーン)


涼一が去った後。


創「うさぎ、今夜はもう店を閉めるぞ」
うさぎ「何で」
創「怒鳴り込まれてごちゃごちゃ言われるのが面倒だからさ。まったく、お前もよくやるよ」
うさぎ「幼馴染ものは萌えないか」
創「だからヤバイんだろ。しかも主役に横恋慕する奴の名前がリョーイチ。出来過ぎだね」
うさぎ「知らん〜」



【完】