質問40「子どもは押さえつけるより…?」

雪也の自宅。


涼一「雪、飲み物買ってき―」(ドサリ)
雪也「あ、そうそう。うまいな、寛兎は」
うさぎ「うまい?」
雪也「うん、上手だよ。でももうちょっと牛乳入れようか」
うさぎ「ん」
涼一「……おい」
雪也「あ、涼一」
うさぎ「……邪魔者が来た」(ぼそり)
涼一「雪…。その…そこでもそもそ動いてる物体は何だ…?」
雪也「そ、その言い方…。寛兎、遊びに来たんだよ。だから一緒にホットケーキ作ってたんだ。寛兎、好きなんだよな?」
うさぎ「桐野のが特に好き」(すりすりと雪也に擦り寄るうさぎ)
涼一「テメエ……離れろ【怒】」
うさぎ「嫌だ」
涼一「嫌だじゃねえっ! 離れろったら離れろっ!!」
うさぎ「桐野」(ますますひっしと雪也の腰にしがみつき後ろに隠れるうさぎ)
雪也「涼一、そんな怒鳴らなくても…。今日は淦も創が留守してて閉まってるし」
涼一「知るか! だったら学校の校庭で竹馬でもしてろっての! お前、友達いないのか?」
雪也「涼一、そんな言い方は酷いだろ」
涼一「どこが!? 俺に言わせれば俺と雪の2人っきりの時間をわざと妨害するこの悪魔の方がよっぽどひでぇよ!」
雪也「でも…。俺だって小学校の頃は…いつも護の所に行ってた…」
涼一「う……」
雪也「寛兎、学校に行き始めてまだそんなに日も経っていないし、慣れてないところもあると思うんだ。だから…」
うさぎ「桐野、早くホットケーキ焼きたい」
雪也「え? あ、ああ、そうだよな。ごめん」(慌てて用意を始める雪也)
涼一「……この態度のどこが慣れてないってんだ。コイツはそんなカワイソウな奴じゃねーっての」(ぶつぶつ)
雪也「ここは俺がやるから。寛兎、向こうで涼一と飲み物の用意して」
うさぎ「ん」
涼一「……ったく、雪にはめちゃくちゃ素直だしよ」(諦めたようにキッチンを離れ、リビングに向かう)
うさぎ「バカ涼一」(うさぎもリビングでグラスを並べる)
涼一「〜〜! 何だバカうさぎ?」
うさぎ「竹馬とは、お前も随分と古いな」
涼一「はあ?」
うさぎ「桐野もお前みたいなジジイより若い俺の方がいいに決まってるぞ」
涼一「あのなー!!」
雪也「? どうかした、涼一?」
涼一「あ!?」
雪也「……頼むから寛兎苛めるのはやめてくれな」
涼一「いっ…! いじめてねーよっ。このバカがバカな事ばっか言うから〜!!」
うさぎ「涼一がいじめるー!!」
涼一「テメエ!!」
雪也「涼一、幾ら何でも大人気ないよ。そうやって怒鳴ったりしたら寛兎だって怖いじゃないか」
涼一「絶対怖がってないって…(疲)」
うさぎ「涼一が怖い〜!!」(平坦な声)
涼一「……!! くそ、無視だ無視…!」(ソファに座って知らぬフリを決め込む涼一)
うさぎ「……おい」
涼一「………」
うさぎ「無視するな!」(蹴)
涼一「いてっ! テメエ、いい加減にしろよ!? 俺はお前なんかと遊びたくねーんだよっ」
うさぎ「これを見ろ」
涼一「? 何だそれ」
うさぎ「学級オークションの出品名簿だ」
涼一「オークション? 小学生がオークションなんかやってんのかよ…」
うさぎ「やってる」
涼一「世も末だな…。俺のガキの頃なんか1日中校庭で遊んで日が暮れたぞ」
うさぎ「イマドキの小学生は塾や習い事で忙しい。てっとり早い娯楽がこれなんだ」
涼一「……雪、俺コイツが怖い」
雪也「何? もうすぐできるから待って」(きつね色に焼けたホットケーキを満足そうに見ている雪也)
涼一「……で? そのオークションが何だ?」
うさぎ「俺が出したこれ、今のとこ一番の値が出てる」
涼一「はっ、だってお前んとこ、すげー金持ちなんだろ? どうせ家のもんかっぱらって―」
うさぎ「ちなみに最後の値をつけてるのはうちの担任」
涼一「………」
うさぎ「ちなみにもっと他のアングルから撮った色っぽいのがあったらそれも買うらしいぞ」
涼一「………」
雪也「できたよ。何かさ、今日は我ながら凄くうまく焼けたっていうか…。……? どうしたの?」
うさぎ「涼一に首を絞められている」(ぶらーん)
雪也「!! りょりょりょ涼一っ!? 何してっ…は、離せよっ!!」
涼一「はっ! 気づいたらこいつの首絞めてた!」(ぱっと手を離してうさぎを解放する涼一)←危険
うさぎ「苦しい〜」
雪也「バカッ!! 気づいたらじゃないよっ。一体何考え…! 寛兎が何したって言うんだよ!!」
涼一「煩いっ。何したって、しまくりだっ。しまいにゃ肖像権侵害で訴えるぞ!」
雪也「な、何?」
涼一「こいつ、雪のこと隠し撮りして、それを学校のエロ担任に売りつけようとしてんだぞ!!」
雪也「は、はあ…? そんなバカな…」
涼一「嘘じゃないって、ほら…!」
雪也「……? 楽しそうな遠足の写真だね」
涼一「はっ!?」
雪也「寛兎。これ、いつ行った時のなんだ?」
うさぎ「この前。欲しい写真の番号に○つけると、後で先生が焼き増ししてくれる」
雪也「そっか。楽しみだな」
うさぎ「ん」
涼一「……おい」
雪也「? 涼一、一体何の話なんだよ。寛兎の冗談本気にしたとか?」
涼一「冗談じゃねーよ…」
雪也「もうそんな事あるわけないじゃないか。あ、フォーク持ってくるよ、冷めないうちに食べよう?」
涼一「………」
うさぎ「………」
涼一「おいバカうさぎ」
うさぎ「………」
涼一「無視するな!」(蹴)
うさぎ「痛いぞ」
涼一「担任の倍出してやるよ。ネガ全部俺に寄越せ」
うさぎ「倍?」
涼一「でなきゃ雪が見てないところで今度こそテメエの首を締め切って誰も知らない樹海に放り込んで、二度と日の目を見られないようにしてやる」
うさぎ「涼一が殺気立ってる」
涼一「ああ。だが俺は親切だからガキの遊びにもある程度寛容だ。ガキってのは押さえつけるとますます反抗的になりやがるからな」
うさぎ「いつも押さえつけてるくせに」
涼一「何か言ったか」
うさぎ「別に」
涼一「とにかく売れよ」
うさぎ「分かった」
涼一「……意外と素直だな」
うさぎ「創が『悪い遊びをする奴は出入り禁止だ』って怒ったんだ」
涼一「は…?」
うさぎ「だから今日、お前に写真売りに来た」
涼一「………」
雪也「はいフォーク…って、どうしたの、涼一?」
涼一「くっそ、むかつく〜!!」
雪也「え(汗)?」
うさぎ「ガキは見放されるのが一番嫌なんだ」



【完】