質問41「食事のメニューを考えるのは大変?」

いつものスーパーマーケットにて。


雪也「あ…」
友之「あ…」
雪也「こんにちは。また会ったね」
友之「………」
雪也「あっ! え、えーっと、忘れてるかもしれないけど、結構ここでよく会うんだよ? クリスマスの時は街でも会ったし…」
友之「あ…」(「覚えてます」と言いたいのになかなか言えない友之)
雪也「きょ、今日も買い物? いつも偉いね、夕飯とか自分で作ってるの?」
友之「…あの…たまに…」
雪也「そうなんだ。家の人、仕事してるの?」
友之「え…はい…」
雪也「うちもそうなんだ。あ、ここのスーパーは…ただ友達の家が近いから来てるだけなんだけど」
友之「友達?」
雪也「うん、そう。この近くのマンションに住んでるんだけど…。放っておくと自分では何もしない人だから、時々こうやって買い溜めしたり夕飯作って行ったりするんだ」
友之「友達に…?」←別に他意はない
雪也「えっ(焦)? あ、う、うん…っ」
友之「………」
雪也「……っ」
友之「あの…」
雪也「え?」
友之「その友達の…好きな物とか、知ってますか…?」
雪也「え…。あ、ああ、食べ物の? うん、まあ一応」
友之「嫌いな物も…?」
雪也「うん、知ってるよ。涼…その友達さ、凄く正直な人だから。あれは好きとかこれは嫌いとか、結構何でもハッキリ言うんだ。でも、本人が言う程には嫌いな食べ物ってそんなにないみたいだけど」
友之「……?」
雪也「だって話の流れで食べ物の好き嫌いなんかは折に触れてよく聞いていたけど、基本的に俺が作った物って何でも喜んで食べてくれるから。以前も間違って嫌いな物出しちゃった時、黙って食べてくれたし」
友之「………」
雪也「あ! お、俺、何の話してんだろ…ッ。ご、ごめん(赤面)!!」
友之「あ…」(ぶんぶんと首を横に振る友之)
雪也「本当ごめんっ。あの、それじゃ…!」
友之「あ…!」
雪也「え?」
友之「あの…。何を作っていいか…迷ってて…」
雪也「え? あ、夕飯?」
友之「………」(こくんと頷く友之)
雪也「あ、そうなんだ。そうだね、毎日って結構大変なんだよね、俺も…。あ、でも基本的には自分が好きな物とか家族が好きな物が1品でもあればそれでいいと思うよ?」
友之「好きな物…」
雪也「うん。君は何が好き?」
友之「………」
雪也「……? あの…」
友之「あっ…。あの、僕…。…好きな物、特になくて…」
雪也「え?」
友之「あっ、でも…。作ってもらったものは何でも好き…。料理、凄く上手いから」
雪也「あ、家の人が? そ、そっか。家の人が作った物は何でも食べるなんて、好き嫌いないんだ? 偉いね」
友之「………」
雪也「それじゃ家の人が好きな物は? それ作ってあげたら?」
友之「……分からなくて」
雪也「え? 家族の好物が?」←悪気全くなし
友之「……っ」←でも傷ついたらしい
雪也「あっ!! ごごごごめんっ(慌)!! お、俺別にそんなつもりじゃ…!!」
友之「あ…っ」(雪也の狼狽ぶりに今度は友之が慌ててかぶりを振る)
雪也「……っ」
友之「………」
雪也「あの、さ…」
友之「え……」
雪也「俺、よく分からないけど…。きっと君が家の人の作ってくれた物何でも全部好きって言うように、きっと君の家族も君が作った物なら何でも全部好きって言うと思うよ」
友之「何でも…?」
雪也「うん。だからあんまり考え込まないで何でも作りなよ。たとえば目に付いた特売品買っちゃうとかさ。あ、今日はいわしのハンバーグが安いみたいだよ?」
友之「……お兄さんの選ぶ基準もそういう感じですか?」
雪也「え、俺!?」←「お兄さん」なんて初めて言われたから超びびってる
友之「はい」
雪也「お、俺は…。えっと…。何だろ…。そういう時もあるけど、最近は相手の機嫌とかで決めてるかな」
友之「機嫌…?」
雪也「うん、そう。結構長い間食事作ってきたから、俺が作る料理の中でも特に気に入ってくれてる物とかそういうの何となく分かってきたし。だから怒ってる時はこれが1番好きなんだろうなって物を作るし。あと二日酔いの時はあっさりした野菜スープとか」
友之「友達に?」←またまた他意はない
雪也「そ、そう! 友達に(焦)! そうだよっ」
友之「……仲、いいんですね」
雪也「あ…う、うん」
友之「じゃあ…1番機嫌がいい時は何作るんですか…?」
雪也「え? 機嫌がいい時? 涼一が一番機嫌がいい時は……」
友之「……?」
雪也「い、1番……い、いい時は……。その……あいつが作るから」
友之「え?」
雪也「あ、あのっ。何でもないっ。その、適当なんだ! 俺は作るって言うんだけど、涼…あいつ、何でも自分がしてやるってきかないからっ…」(真っ赤)
友之「???」
雪也「あの、あの、それじゃ俺はこれで…! あの、それじゃまた…!」
友之「あ…!」
雪也「……ッ」(逃げるように去ってしまう雪也)
友之「……お兄さんが料理しない方が友達喜ぶの……?」



【完】