質問42「友達に頼むって事は…?」

レンタルビデオショップ「淦」にて。


友之「……あ」(ガラリと引き戸を開けて店内に入ってきた友之)
うさぎ「………」(何故かカウンター席の中央にどっかと座っているうさぎ)
友之「………」
うさぎ「………」
友之「あの……」
うさぎ「………」
友之「……っ」
うさぎ「………せ」
友之「え…?」
うさぎ「イラッシャイマセ」
友之「はっ…はい…っ」(何故か緊張する友之)
うさぎ「何をお求めですか」
友之「えっ…。あの…。数…友達が、何か借りて来いって言うから…」
うさぎ「………」
友之「でも、こういう所、あんまり来ないし…映画も、観ないから…。どれがいいのか、よ、よく分から…なくて…」
うさぎ「ジャンルは?」
友之「え?」
うさぎ「……どういう種類のが観たいですか。アクション? ミステリー?」
友之「あ、あ、そういうの…。えっと…。と、友達は面白いのがいいって言ってたから…コメディ…」
うさぎ「面白いの?」
友之「は、はい…」
うさぎ「……その人の笑いのツボは?」
友之「え?」
うさぎ「笑うところ。一般人と同じ?」
友之「お、同じ…って…??」
うさぎ「……コメディ作品にもいろいろある。万人ウケを目指して作ったのもあれば、一部のマニアだけが喜びそうなものもあるし」
友之「へ、へえ…?」
うさぎ「笑いの基準なんて人それぞれデス。コメディと名のつくものが必ずしもその人の望んでいる笑いを提供してくれるとは限らない。所謂コメディ作品はちっとも喜ばないくせに、ホラーや号泣ドラマなんかをギャグだと感じて喜ぶ捻くれ者もいる」
友之「……???」(困惑)
うさぎ「映画は奥が深いのデス。だから選ぶのも大変デス」
友之「あの…き、君は、ここの店員…?」
うさぎ「ハイ」(しれっと)
友之「そ、そんなに…小さいのに…?」
うさぎ「………」(あからさまにむっとした顔)
友之「あっ(焦)! あ、あの…」
うさぎ「で?」
友之「え?」
うさぎ「何借りる?」
友之「あ…。え、えっと…。その友達は…その、ちょっと普通と違うと思うんで…」
うさぎ「普通と違う? じゃ変態プレイとかが良さそう?」
友之「え!? な、何を…」
うさぎ「お客様と同じ年?」
友之「え?」
うさぎ「その友達」
友之「あ…そ、そうです…」
うさぎ「じゃあ中学生か。なら変態プレイは早いか」
友之「………」(混乱している模様)
うさぎ「それにしても、『面白いの借りて来い』と言われて、そのままコメディなんか持ってったらお客様がいじめられるヨ?」
友之「あ、あの…ちゅ、中学生じゃ…!」
うさぎ「お客様」
友之「はっ、はい…?」
うさぎ「友達の言葉の裏を読み取らなくちゃ。友達が観たい面白いモノっていうのは、自分では恥ずかしくて借りて来られないやつの事デス」
友之「え? え?」
うさぎ「で、今の若いのに1番人気といったらこれデス」(どんっ)
友之「……これ?」
うさぎ「これがいい、オススメです。コメディの中のコメディ。マニアが喜ぶツボいっぱい。仲間同士で楽しく抜いて下サイ」
友之「……あの……」
うさぎ「本日は閉店」(さっさと奥の部屋に向かううさぎ)
友之「えっ!? ちょっ…待っ…(汗)!」
うさぎ「ばいばい」(バタン)
友之「………抜く?」

いかがわしいビデオを手に、途方に暮れる友之。以下次号。



【続】