質問43「一度は行きたいレンタル屋…?」 |
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レンタルビデオショップ「淦」にて。 友之「あの…」 創「ん……あ、いらっしゃい」 友之「………」 創「……うちに来るのは初めてですか?」 友之「あ…。い、いえ、昨日……」 創「ああ、そうですか。それじゃあ今日は返却ですか」 友之「あ、はい…。あの…」(慌ててビデオの入った袋をカウンターに置く友之) 創「………」(袋からビデオを出して軽く固まる創) 友之「あの……」 創「……失礼ですけど、年齢は?」 友之「え…あの…」 創「これ、18才未満には貸し出しできない作品です。昨日いた店員が身分証明書の提示をお願いしたと思うのですが」 友之「え? い、いえ、別に…」 創「別に? 何もなしにこれ貸した?」 友之「は、はい……」 創「………」 友之「あの、ご、ごめんなさい…」 創「え? …ああ、違いますよ。怒ってるんじゃなくて。昨日の店番は誰だったかなと考えていただけです」 友之「………す」 創「え?」 友之「あの、16歳です…」 創「……お客さんの年齢?」 友之「はい…」 創「……そうですか」 友之「………」 創「……うさぎだな」(ぽつり) 友之「あの、お金…」 創「え?」 友之「あの…。昨日、店員さん、これ出してくれた後すぐに何処か行ってしまって…。あの、お金払ってないから…。ここ、後払いなんですか…?」 創「いや…。後払いのレンタルショップってのもあんまり聞かないけど」 友之「えっ!? あ、あの、ごめんなさい…っ!!」(真っ青) 創「いえ、こちらこそすみませんでした。誰がお客さんにそういう事したかも大体分かりましたし。びっくりしたでしょう?」 友之「え…」 創「お客さんが進んでこれを借りたがったようには見えないし。無理やり渡されただけでしょ? 昨日の子どもはここの店員じゃなくて、常連客の1人なんです。悪さが過ぎるんで、最近は厳し目に対応していたつもりなんですが。本当にすみませんでした」 友之「え、あの…い、いいえ…っ(焦)」 創「代金は勿論結構ですので」 友之「えっ、でも…!」 創「観たんですか?」 友之「え?」 創「これ」 友之「……あ、あの、最初だけ……」 創「そうですか」 友之「あの…でも、借りたんだし…。お金…」 創「結構ですよ」 友之「で、でも…僕は観てないですけど、と、友達は観たし…」 創「………」 友之「あの、昨日いた子に…その、友達が面白いのが観たいって言ってるって言ったら…こ、これ選んでくれて…。友達は大笑いして観てました…。だから…」 創「友達は面白がって観たのに君は観なかった?」 友之「あの…。数…友達は、一緒に観ようって言ったんだけど…僕は…あんまり面白くなかったから…」 創「……そう(笑)」 友之「……それに、後でこれ借りてきたのバレて…数馬だけ凄く怒られて…」 創「え? 親にバレた?」 友之「あ、ちが…。えっと…」 創「うちにも文句に来られるかな」 友之「あっ…大丈夫です…。僕、ここの事言ってないし…。その、家はこの近くじゃないから…」 創「へえ? それじゃどうやってここを?」 友之「あの…? 僕もよく分からないです…」 創「? はは、そうですか。まぁこれも何かの縁です。良かったら、これに懲りず機会があればまたうちを利用して下さい。お客さんにあったビデオを選びますよ」 友之「え?」 創「まぁこれは俺の趣味みたいなものですが」 友之「…? 僕に合うビデオって…どうやって選ぶんですか…?」 創「適当ですよ。顔とか話し方とか見て直感で選ぶだけだから」 友之「………凄い」 創「え? いや、別に凄くないんだけど…(苦笑)」 友之「あの…僕には…どういうのが向いてますか…?」 創「え? そうだなあ、動物ものとか?」←全く何も考えてない 友之「! 僕、動物好きです…っ」 創「あぁそうですか。それじゃこれでも借りてく? 世界の名犬シリーズ」 友之「犬大好きです! ど、どうして分かるんですか…!?」 創「分かってないよ(笑)。動物が好きというから、傍にあったこれを手に取っただけ」 友之「で、でも凄いです…っ。あとはっ!?」 創「あと? まだ何か借りる? それじゃあ爽やかスポーツ映画でも観る? これは野球ものなんだけど」 友之「!!! 野球大好きですっ。お、お兄さん、超能力者…?」 創「……いや、絶対違うと思うよ」 友之「あとはっ!?」 創「え。まだ借りる? 1日に3本は多くない?」 友之「じゃあこれ観たらまた来ます…っ。そしたらまた当ててくれますか…?」 創「……一応言うと、うちはレンタルビデオ屋で占いの館じゃないよ?」 友之「はい…っ」 創「何だか嬉しそうだね?」 友之「あ…ぼ、僕…よく何考えてるのか分からないって…言われる事、多かったから…」 創「……ふうん?」 友之「だからこういうの、何だか凄く嬉しいです…。来て…良かったです」 創「……まぁ君がそうやって喜んでくれるなら、俺としても嬉しいよ」 友之「はい!」 創「……何だかな(苦笑)」 友之「それじゃあ…」(会計を済ませて帰って行く友之) 創「……那智姉さんにも客寄せでやらせるかな」 |
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【完】 |