質問49「自分の事は見えない?」

学食にて。


友人A「まったく勝手な奴でさあ」
逢坂「何? 彼女と別れるのか!? ざまあ!」
友人A「康久…。お前最近荒んでるぞ。人の不幸を…」
逢坂「うるせー。んで? 何でウンザリしちゃったわけ? あんなにラブラブだったのに」
友人A「確かに好きだったけど、あそこまで束縛キツイといい加減にしろって言いたくなんだよ」
逢坂「束縛きついんだ?」
友人A「すげーよ。お前もこれ聞いたらびびるかもな」
逢坂「何だよ…たとえば? おっ、涼一。お前も聞いとけ!」
涼一「あ…? 俺は別に…それより、もうすぐ雪の講義終わるから俺行かないと」
逢坂「いいから聞いていけ〜!!」
涼一「っせーな、分かったよ!」(果てしなく迷惑そうな顔で)
友人A「……康久、お前最近涼一にきつくないか(汗)?」(引き気味)
逢坂「いいから続けろ。その彼女の所業を」
友人A「あ、ああ…。えっとな。まず俺が他の子と喋ると必ずヒスを起こすんだよな。『何でそんな親しくするの』って」
逢坂「ああ〜。でも親しくってどの程度よ?」
友人A「マジで大した事ないって。フツーに会ったら挨拶程度の会話するだけ。あとさ、たまに見てるテレビとか好きな映画が一緒だって分かったら盛り上がるだろ? でもそれもナシ。そのコの事が好きなのかって激しく詰めよるんだよな」
逢坂「……それは俺もヤだ」
友人A「だろ!? なあ涼一はどうだよ?」
涼一「俺だって嫌だよ、そんなうるせー奴」
友人A「そうだよなあ、ヤキモチも限度を超えるとうぜえよな」
涼一「ああ。そいつにちゃんと言った方がいいぜ。『俺の事信用してないのか』ってさ」
逢坂「…………」
友人A「そうだよなあ、俺は言ってるつもりなんだけどさ」
逢坂「な、なあ。後はどんな束縛があるよ?」
友人A「え? あとは…そうだな。携帯をチェックされるな。女友達からメール入ってるとキレる」
逢坂「……そんなんなら、一緒に飲みに行くとか絶対だめだろ?」
友人A「当たり前だろー? そんなの問題外だぜ。俺さ、彼女より古い付き合いの幼馴染がいるんだけど。その子と会おうもんならもうマジすげえよ? 嫉妬の域を超えてる」
逢坂「お前…その彼女にそのうち殺されるんじゃねえ?」
友人A「や、やな事言うなよなー!」
逢坂「だって異常だぞ、それ」
友人A「だよなあ…。なあ涼一、どうしたらいいと思う?」
涼一「ん…お前、その彼女と別れたいのか?」
友人A「う〜ん、どうだろ。俺ってこういうとこ煮え切らないのが良くないよな。でも彼女のこと、大嫌いってわけでもないんだ、本当は。だって俺の事そんだけ想ってくれてるからこその行為だし」
涼一「同情とは違うのか?」
友人A「同情? …違うと思うけど」
涼一「けど? けどってのは何だよ。お前なあ、そういう態度が彼女を増長させてんだって。いいか、そのまま彼女つけ上がらせたらお互いの為に良くないぞ、絶対。大体よー、飲み会くらいいいじゃねえかよ。それくらい自由に行かせろって」
逢坂「……ッ!?」(ややぎょっとしている)
友人A「だよなあ…。なあ、涼一からあいつに言ってやってくれよ」
涼一「何で俺なんだよ」
友人A「涼一ならきっとうまく言ってくれると思うしさ! な、頼む!」
涼一「ったく、しょうがねえなあ…」
逢坂「…………(汗)」

暫しの間の後――。

雪也「あ、涼一」(食堂にやって来た雪也)
涼一「雪!!」(ガタンと椅子を蹴って立ち上がり、ものごっつ嬉しそうな顔をする涼一)
雪也「ごめん、待った?」
涼一「全然! ごめんな、迎え行こうと思ってたんだけど、こいつらがガーガー煩くってさ」
逢坂「テ、テメ…!」
友人A「ぽかーん……」
雪也「い、いいよそんなの…」(固まる2人を見て焦った風に)
涼一「なあこれからどうする? 俺んち行くか? それともどっかで飯食ってく?」(それでも暴走止まらない人)
雪也「うん、俺はどっちでも…」
逢坂「き、桐野、これから飯行くのか!?」(めいっぱい勇気フル動員させてみた)
雪也「え? あ、う、うん」
涼一「……!?」(むすーっ)
逢坂「なあ、それ俺も行っていいか? 俺も丁度腹減っててよー。もう今日は講義もないし」
雪也「あ、うん。それは…」
涼一「駄目!!」
雪也「え」
逢坂「なんっ…でだよ!?」
涼一「駄目ったら駄目なんだよ! 雪は俺と2人で行くんだ! お前はお呼びじゃねえ!」
逢坂「お呼っ…!? ……あのな、お前。こういう諺知ってるか? 人の振り見て我が振り直せ!!」
涼一「何だそれ。俺が誰を見て何を直すって?」
逢坂「……駄目だこいつ」
涼一「とにかく! 駄目なものは駄目だ! 雪、行くぞ!」(ぐいぐいと引っ張り雪を連れ去る暴君)
雪也「あっ…。ご、ごめんな逢坂、また…っ」(申し訳なさそうに康久を振り返る雪也)
逢坂「あ、ああ、またな!!」(そんな雪也に必死に手を振る康久)←ちょっと健気
涼一「またなんかねーよっ!」
逢坂「〜〜〜!!!」
涼一「雪も雪だ、あんなのの相手するなっての!」
雪也「でも…」
(言い合いをしながら去っていく2人)

そして静寂。

友人A「……な、仲いいなあ、あいつら」(半ばボー然)
逢坂「くっそーマジでむかつくー【怒】!!」(キーッ!!!)


……結局今日も報われない逢坂康久なのでした。



【完】