質問50「バカップルの相手は疲れるから…?」

レンタルビデオショップ「淦」にて。


涼一「………おい、創」
創「貰ってない」
涼一「なっ…。お、お前、何言ってんだ…?」
創「言いにくそうな君の気持ちを先取りして答えてあげたまでだけど?」
涼一「マジで……お前はむかつく」
創「そりゃどうも」
涼一「誉めてねえ!!」
那智「あ。剣さん、いらっしゃい」(店の奥から出てきてにこりと笑う那智)
うさぎ「バカ涼一がいる」(同じく那智の背後から。もぐもぐと何かを口にしている)
涼一「……帰る」
創「いいの? 桐野君、今日ここに寄ってからうちに帰るって言ってたよ」
涼一「……ッ! くっ、ならバイト先に行ってそれを阻止する!」
創「ビデオの返却日今日だから絶対来るよ。彼がそういうとこきっちりしているのは知ってるだろ」
涼一「ああ、分かってるよ! だからこんないたくもないとこにいたんだろーがっ!」
那智「あ、あの…? 剣さん、どうかなさっ…【怯】」
創「ああ、いいんだよ。気にする必要は全くないから。剣君はね、今心配でたまらないんだよ。だったら最初から桐野君に前フリしておけば良かったんだ。そうしてもいい間柄なんだろうから」
涼一「煩ェなっ! こういうのは…! ねだって貰うもんじゃないんだよっ!」
那智「創、一体何の…。あ、もしかして…」
うさぎ「これか?」(手にしていたチョコをこれみよがしに見せる)
涼一「……っ! おいバカうさぎ! テメエ、それは誰に貰ったんだ!」
うさぎ「桐野」
涼一「なっ!!!?」
創「ふっ…」
うさぎ「今日は世間はバレンタインだからな。当然桐野は俺にくれたわけだ。愛の本命チョコ」
涼一「な、な、な……」
創「あのね、剣君。君、面白過ぎるよ。……まあ寛兎のこんな冗談に引っかかる程、今日の桐野君の動向が気になるって事なのかな」
涼一「冗談……?」
那智「あの…このお菓子は私が作ったものですが……」
うさぎ「ばーか」
涼一「テッ、テメエ!!」
那智「ひっ!」
創「那智姉さん。姉さんに凄んでるんじゃないよ。剣君も落ち着きなよ、恋人としての余裕とかそういうものはないのかい?」
涼一「あるわけないだろ、そんなもん!!」
創「いや……そんな事きっぱり言われてもね……」(ちょっと憐れみの目)
うさぎ「創がびっくりしてる」(それに驚くうさぎ)
涼一「……バレンタインなんてくだらねーよ。俺、今までそんなもん全然興味なかった。けど…やっぱり…雪がどう思ってんのかは、やっぱり気になるだろうが…」
創「え? 桐野君が君の事をどう思ってるのかって?」
うさぎ「煩い嫉妬魔だと思ってる」
涼一「……【怒】!?」
創「よせ、寛兎。あのな、剣君。桐野君が君の事をどう思ってるかなんて決まってるだろ?」
涼一「違う! そうじゃなくて…。そうじゃなくて、何ていうか、雪はこういう世間の記念日とかを大切にする方なのか、とか」
創「はあ?」
涼一「俺、雪のそういうところ、まだちゃんとよく分かってないなって…思ったんだよな」
創「……まあ、君たちはこれからなんだから。そういうのも当然なんじゃないの?」
涼一「ホントか!? 本当にお前、そう思うか?」
創「……目を輝かせて顔近づけないでくれ。それで? 君の方はどうなんだい。今まで興味のなかったこの世間のお祭り。今は参加する気満々?」
涼一「ああ! 俺は今日雪の為に超有名店のベルギー産生チョコを用意してある!」
うさぎ「食いたい!」
涼一「バカが、誰がやるかテメエなんかに! これはな! 雪の為だけに買ったんだっ!」(見せびらかすように高いところに掲げる涼一)
うさぎ「食いたい食いたい!」(ぴょんぴょん跳ねてそれを奪おうとするうさぎ)←欠食児童
涼一「ふふん、取れるもんなら取ってみやがれ!!」
雪也「こんにちは。……って、あれ(笑)? どうしたの、何だか凄く楽しそうだね?」
涼一「雪!!!」(全身からラブオーラ発射)
創「やあ桐野君、バイトお疲れ様。……で、その紙袋は何? ビデオが入ってるだけにしては随分と大きな袋だけど」(何やらニヤニヤと笑っている創)
那智「あ……!」
雪也「うん。寛兎だけっていうのも何だし、3人分。はい、チョコレート」
うさぎ「チョコ【嬉】!!」
涼一「………!??」
創「悪いね。俺たちの分もあるの?」
雪也「うん、当たり前だよそんなの。あ、那智さんにはこれ。こっちの創用のはブランデー入っているから。那智さんはお酒とか一切駄目なんだよね?」
那智「ああぁ、はいそうなのですがあのそのあの…っ。私たちの事は一切合財お気遣いなく…! それよりそれより剣さんの分は…!」
涼一「………雪」
雪也「あ、涼一のはないんだ。涼一はこういうの嫌いだと思ったから」
涼一「!?」
創「うんうん、そうだろうとも。さっきも剣君自身言ってたよ。こんな記念日なんかくだらないって」
雪也「えっ? そう…なの…? あ、そうかもしれないけど、でも…」
涼一「雪……何で……」
うさぎ「美味い。桐野、俺も桐野の事愛してる」
雪也「え? あ、ありがと寛兎…(苦笑)」
涼一「雪〜〜〜〜!!! お前〜〜〜〜〜!!!!」
雪也「え、ええっ!? う、うわっ…!!」
涼一「来いっ! お前、よくも俺の前でそんな…! 俺にはなくて、こいつ等にチョコだとおおおおお!?」
雪也「えっ、ちょっ…涼一、ちが…! わ、痛い、痛いって!!」(ずるずると羽交い絞めにされ引きずられていく雪也)

……そして嵐は去っていった……が。

那智「………創」
創「あ…あはははは! 面白い! 本当面白いよね、あの2人!」
那智「……!?」(滅多に見る事のない創の笑顔にぎょっとしている)
うさぎ「創も悪趣味だな。俺にわざと催促させて涼一の反応見るなんて」
那智「え!?」
うさぎ「前から俺、今日の日に桐野にチョコくれるよう頼んでいたんだ。創と那智の分までは頼んでないけど」
創「桐野君なら絶対3人分持ってくると思っていたよ」
那智「……あんぐり」
創「まあこれくらいいいんじゃないか? 桐野君が剣君の為に数日前から手作りのチョコレートを用意していたなんてさ。あまりに出来すぎていて面白くないじゃないか。ちょっとくらいは、ね」
那智「は、創…」
うさぎ「後で苦労するのは桐野だぞ。……まあ俺も面白かったけど」
創「いいんだよ。あんなバカップルは周りでもいじってやらないとな」


……何となくブラック創、降臨。



【完】



…昔SSでバレンタインネタ既に書いてますが、あれとはまた別モノのお話って事で。