質問8「娘を嫁にやるなら…?」 |
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日曜日。河川敷近くのバッティングセンター「アラキ」にて。 社会人草野球チームのメンバーたちの会話。 男A(45才)「この間よー、うちの娘、夜の0時過ぎに帰ってきたんだよ」 男B(37才)「あれ、やっちゃんって幾つになったんだっけ?」 男A「今年で18」(ハアと深くため息) 男C(29才)「それってまだ高校生じゃないですか。そんな夜遊びさせて良いんですか?」 男A「バカやろう、許してるわけねーだろ。帰って来た瞬間、はっ倒してやったよ」 男B「うそうそ、この人はホント家ではだらしないから。大方何処へ行っていたのかも訊けないでオロオロしてたんじゃないの?」 男C「そんで奥さんにも無視されて? 可哀想な結婚生活だなあ」 男A「………くーっ、言い返せねえーっ」(カウンターに突っ伏し泣き崩れる) マスター「はいはい、可哀想なAちゃんにはコーヒーサービスするよ」 男B「そういやマスターの方こそ、あの放蕩息子はどうしてんの。修司は0時帰宅なんて騒ぎじゃないでしょ」 マスター「あいつは3日で帰ってきたら、まぁ良い方だな」 男A「うう…深夜に街中なんぞウロウロして、修司みたいな男に引っかかってたらタダじゃおかねえぞ…」 マスター「実の父親を前にひどい言い草だなーもう」(苦笑) 男C「でも修司はいいよなー。裕子ちゃんみたいな可愛い彼女がいて」 男B「まったくだよ。うちの息子がもう少し大きかったら、絶対裕子ちゃんを嫁にもらったのに」 男C「あ、でもその裕子ちゃん。うちのキャプテンが狙ってるそうじゃないですか。果たして正人の奴に勝機はあるんですかねー?」 男A「ないな。まるでないと見た」 男C「ひっでー(笑)。何かAさん、妙な八つ当たりしてません?」 男A「でも修司みたいなのと一緒にさせるくらいなら、俺は正人に娘をやりたい」(きっぱり) マスター「だから〜実の父親がここにいるんだけどね?」 男B「ふーむ。しかし実際父親の立場としたら、定職に就いている男の方をどうしても評価しちゃうよねえ。正人も今じゃ、真面目にバリバリ働いてるし。統率力だって抜群だ。その点、修司の奴は…まあ、そのうち何かどえらい事をしてくれそうな気もするけど、何にしろあの放浪癖がな、心配だよ」 男C「突然蒸発とかしそうですしね」 マスター「まあ…事実してるしな」(がっくりと肩を落とす真似をするマスター) 光一郎「こんにちは」(ガランと店の扉を開けてやって来た光一郎) 一同「あ……」 光一郎「そろそろ練習も終わりかなと思って。友、いますか?」 マスター「もうすぐ来るんじゃないかな? 来月のグラウンド使用料払ってる正人と一緒に後から来ると思うから」 光一郎「そうですか。それにしても皆どうしたんですか? 人の事じろじろ見て」(苦笑) 男A「なあ、コウ! お前、年下好きか!? 俺の娘と見合いしねーか?」(光一郎の両肩をがくがく掴みながら) 光一郎「え…(汗)?」 マスター「こらこら、コウはまだ学生だよ?」 男B「いやあ、やっぱり可愛い我が子をやるならコウみたいな男じゃないとねーっ。ああ、うちの娘がもう少し大きかったらなー!!」 男C「……この人たち、さっきまで正人を誉めてませんでした?」 マスター「どうせうちの息子は評価Cだよ」 友之「あ……コウ…っ」(その時、店の扉が再び開いて友之登場) 一同「あ……」(一斉に振り返って友に視線集中) 友之「…来てると思わなかった」(たっと駆け寄って光一郎に控えめな笑みを向ける友之) 光一郎「早い時間に帰れたからな。楽しかったか?」 友之「……うん」 一同「ボー……」(見とれ状態) 男C(……いつもの事ながら…か、可愛い…!) 男A「……ごほん。やっぱしあれだな、最近の女は男に寄り添うだけじゃあ、駄目だよな?」 男B「あ、俺も今丁度そう思ったところだよ!」 男A「だろー!? 男の収入なんか当てにしちゃーいけねえ、逆に男を養えるくらいの女になってもらわんとな、娘には!」 男B「そうそう、いよいよとなったら自分が働いて旦那を家に置いておくみたいな女にな!」 男A「そうそう、男が女を養う時代なんつーもんは終わったよなー!?」 男C「俺も友なら幾らでも養ってやりた……」(両サイドからAとBに殴られて後の言葉途切れる) 光一郎・友之「………?」 中原「………なあ、マスター。このおっさんたち、どうせまた良からぬ事を話しあってたんだろ?」(何やら見透かしたようにため息をつく中原) マスター「ちょっと前までは割と健全な話だったんだけどね…」 |
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【完】 |