ちゃんズ版・七夕



  北川兄弟のアパートには、珍しくバイトが早く終わったという光一郎、それに修司と正人の計「3名の兄」が勢揃いしていた。
  修司や正人がこのアパートへ来ること自体は別段珍しくない。正人は多忙な光一郎に成り代わってよく友之の夕飯(主にホカ弁)を運んで来るし、修司も地元に帰ってきた時は自宅より北川兄弟の元へ転がりこむことが多い。決して広くはないけれど、光一郎と友之がいる部屋は、2人にとって第2の我が家のように居心地良く、落ち着ける場所なのだ。
  しかし、その2人が同時に現れて互いに顔を合わせることは滅多にない。
  それは主に正人の努力によるところが大きい。大嫌いな修司と鉢合わせたくない正人は、修司の父・宗司や幼馴染の裕子、それに光一郎に修司の現在の動向を訊ね、「どうやらアパートにはいないらしい」を確認してから訪れることが多いのだ。
  そう、修司と正人の2人は仲が悪い。昔から。
「……何か嫌な予感はしていたぜ」
  その正人は苦虫を噛み潰したような顔で呟きながら、玄関先、コンビニ袋をぶら下げた格好で暫しその場に留まった。
  ドアを開けた瞬間目に入ってしまった、北川兄弟のものではない靴。そして数メートル先に見える居間で悠々と寛いでいるあの忌々しい身体。笑い声。
  修司がいる。
  今日は仕事が早くに上がってつい直行してしまったのだが、やっぱり確認を怠るべきではなかった。
「正兄…っ…」
  ドアの開く音で正人の来訪を知った友之が小走りでこちらに近づいてきた。修司が来ている事が嬉しくてならないのだろう、いつもより数段明るい顔をして自分を見るその顔が、正人は「嬉しいのに悔しい」。
  ぶすっとした顔のまま片手に提げていたコンビニ袋を友之に押し付けて、正人はズカズカと乱暴な足取りで中へ上がりこんだ。
「おう」
「どうも」
  部屋に入ると、既に酒盛りを始めていたらしい光一郎と修司が正人を見てそれぞれ声を上げた。正人は思わず光一郎の方へ恨めしげな視線を投げた。自分が来ることは告げてあったのだから、修司がいるなら前もって教えてくれれば良かったのにと、言外にでも訴えずにはおれなかったのだ。
  知っていたら今日は来るのを止めていた。
「正兄……、あの、ビール、出すね…?」
「あ? あぁ……」
  しかし今さら帰るというのも憚られる。自分の後を追ってきた友之が未だ嬉しそうな顔であたふたと台所へ向かい、ビールとグラスを用意し始めている姿を認めてしまうと、尚のこと一人いじけて帰るというのは大人気ない気がした。
「俺がコウ君に言ったの」
  すると、諦めてようやくその場に座った正人へ、修司が不意にそう口を切った。
「あん?」
  怪訝な顔で聞き返すと、修司は涼しげな様子でニヤリと笑った。いつもの事ながら「お綺麗過ぎる」その顔が癇に障る。それで正人が思い切りぶすくれていると、友之がさっと隣にやってきてちょこりと座り、グラスとビールを差し出してきた。
  正人はそれを黙って受け取ってから、再び修司へ剣呑な目を向けた。
「言ったって何を?」
「俺がここにいること、正人君には言っちゃ駄目って。言ったら来るのやめるって言うでしょ」
「……どういう事だよ」
  修司にではなく光一郎へ視線をやると、水を向けられた光一郎は軽く肩を竦めながらちらりと友之の方を見やった。
「はぁ?」
  意味が分からず、今度は流されるままその友之を見ると、当の「弟」はそんな正人らの視線には全く気づかず、ひたすらうまく泡が立つようにと、慎重な手つきで正人のグラスにビールを注いでいた。
「ああもう、そんくらいでいい」
  溢れそうになる直前を見計らって正人がそう言うと、友之はふうと緊張を解いたようにビール缶を傾けるのを止め、おもむろに柔らかな微笑を浮かべた。どうやら満足のいく出来だったらしい。確かに、正人の持つグラスには7対3の比率で綺麗に注がれた金色のビールがキラキラと眩しく輝いていた。
「可愛いなあトモは」
  その時、正人が心の中でふと思っていた言葉を修司が照れなく口にした。
  それによって正人はぎくりと身体を揺らしたのだが……、努めて平静を装いながら再びキッと斜め隣の「敵」を睨んだ。
「で? お前は。俺に何か用でもあったのかよ?」
「え?」
「お前だって別に俺と会いたくなんざねーだろ? なのに何でコウに――」
「あー、俺が用あるんじゃなくて、トモが」
「トモが…?」
  修司が可笑しそうに訂正するのに思い切り眉をひそめながら正人が再度友之へ目をやると、急に話を振られて焦ったのか、友之は戸惑ったような顔でしゃんと背筋を伸ばした。
  そんな友之に修司はにこにことしながら続ける。
「トモねー、今日学校のお友だちとここで七夕祭りしたんだよねー?」
「七夕祭り?」
  正人が訊くと、友之は小さく頷いた後すくっと立ち上がり、急いで窓際へ寄って行ってガラリとそのガラス戸を引いた。
  そうしてそこに飾っていたのだろう、実に見事な笹飾りを取ってきて再び正人の隣に戻る。
「どうしたこれ?」
「きょ、今日作ったんだ…。と、友だちが……笹と飾り、持ってきてくれて」
「友だち?」
「橋本さんって女の子だって! トモって学校でもモテてるんだなぁ。まっ、当然だけど」
「女?」
  友之には果てしなく似合わないような気がして正人は暫し途惑ったのだが、それよりも気になるのは友之のどこか興奮したような紅潮した頬だった。こんなに嬉しそうでそわそわした期待に満ちた目を久しく見ていない。最近ではめっきり外にも意識を向けて比較的よく喋るようにもなったけれど、自分に対しては相変わらずオドオドとしていてたどたどしくて。同級の数馬とはよく話しているようなのがまた面白くない。
「ん…? 数馬…?」
  そんな事を考えていたら、たまたまその笹飾りの短冊の中に「かずま」という字を見つけて正人は目を見張った。思わず手に取りまじまじ見やると、「いっぱい幸せ かずま」と書かれたそのふざけた丸文字は、確かに数馬が冗談で書く時のものと同じだった。
「……何でここにあいつの名前もあんだよ」
「あ……数馬も、遊びに来てたから」
「遊びに? あいつ、ここによく来るのか?」
「あとクラスメイトの拡クンだっけ? 彼もいたんだよね。4人で遊んだんだってさ」
  全く面白くないよねえと冗談なんだか本気なんだか分からない口調で修司は言い、不意にピッと一枚の縦長色紙を正人に向かって差し出してきた。
  正人は当然、それを胡散臭い目で見やった。
「何だよこれ」
  しかし修司は動じない。当然だというようにきっぱりと言い切った。
「正人君も書きなよ。短冊に願い事」
「はぁ?」
「だから俺だって別に正人君になんか会いたくないけど、君がここに来るの止めないようにコウが連絡しようとするの止めたし? ね、早く書いた書いた!」
「ざけんなっ、何で俺がそんなこと――……あ」
「あ!」
  正人が如何にも迷惑そうに断ろうした瞬間、しかしそれに気付かず嬉々としてマジックを手渡そうとしていた気まずそうな友之とばっちり目が合ってしまった。
「あ……」
「う……」
  それによって友之だけでなく、正人自身もフリーズ。しかし頭の中は忙しく慌てふためいている。
  そうか。だから友之は浮かれていたのか。だからこんな風に笑顔だったのか。自分にはそういうノリはちっとも理解出来ないけれど、恐らく友之はこの七夕祭りというやつをめいっぱい楽しみたいに違いない。だから高校の友人たちや数馬だけでなく、光一郎や修司や、いつもは恐ろしい「正兄」にも、手作りの短冊に願い事を書かせたいのだ。
  七夕なんて。
  願い事なんて、叶うわけはないのに。
「あ…正兄、嫌なら…」
  しかし正人の不服そうな様子に青褪めた友之は、焦りつつ手にしたマジックを引っ込めようとした。
「〜〜待て!」
  けれどそうなると、正人としても意地を張りたい気持ちになる。むっと唇を尖らせながら急いで友之の手からその黒マジックを奪い取った。
「やらねェとは言ってねーだろが。貸しとけ!」
「……っ。う、うん……」
「あのねえ、正人君。七夕祭りなんだからさ。そんな殺気立った顔で短冊にお願い事書かれても、織姫もトモも困っちゃうよ。なぁトモ?」
「お前は黙ってろ!」
  修司のふざけた物言いに正人はいちいち苛立って声を荒げたが、隣で友之がハラハラしているのが目を向けなくても分かってしまったので、ここはぐっと口を噤み、それ以上言うのは止めた。
  それからテーブルの上に置いた短冊を前に、マジックを持ったままじっと考える。
  願い事。願い事か。こんな、書いたところで何も叶うわけがない紙きれに。
「……トモは何て書いたんだ?」
  あっという間に自分のものを放棄し、正人はそう訊いた。
「あっと…」
  友之はたどたどしく告げようとしたのだが、短気な正人はそれを待つことが出来ず、傍に置いていた笹飾りから友之の願い事を探し出して勝手に見た。驚いた事に、一つだけでなく、二つも三つもある。テストで赤点取りたくないとか、風邪を引かないようにとか。些細な願い事ばかりだ。ますますくだらないと思いながらそれを眺めていると、ふと「修兄が早く帰ってきますように」という一文を見つけて、猛烈に腹が立った。
「正人君、見たあ?」
  すると正人のその様子を逐一見逃さない修司がすかさず声をあげた。
「トモはもう1個の願い事は叶えちゃったな? トモが願ってくれたから、俺もこうやってここにいる。ね?」
  優しい笑みでそんな事を言う修司に、友之はふにゃりと照れたように笑って嬉しそうにしている。正人のイライラボルテージは急激に上昇した。いつだってそうなのだ。このちびっこい無力な「弟」は、何故か昔からこの修司にはこうして無条件で心を開き、無防備な笑みを見せる。この男が一体お前に何をしてやった? ただへらへら笑ってお前を甘やかしていただけじゃないか、そんな奴をどうして。
「……コウ。お前は何て書いたんだ? ここにねーぞ」
  しかしそんな恨み節を発したところで「負け惜しみ」みたいに取られることは目に見えて明らかである。正人は一生懸命己を抑えつけながら、ふうと一旦息を吐いて斜め向かいに座っている光一郎へ声をかけた。
  そういえばこの男は先ほどから一言も発していない。元々無口な方ではあるけれど、こんな居た堪れない空間に自分ばかりを放置してそ知らぬ顔で晩酌など、何だか許しておけない。
  お前もこの生温い七夕祭りにきちんと参加しろ!――という想いを込めて、正人は光一郎を見やった。
「まだ書いてない」
  けれど光一郎は素っ気無くそう言った後、傍にある無地の白短冊をぺらりと見せただけで再びビールをぐいと煽った。正人は「ああ、こいつはそうしてこのままバックれる気に違いない」と思わず据わった目をしてしまったが、修司が「くっ」と意味あり気に笑うもので、忽ち気はそちらへ向いた。
「修司、お前は書いたのか? 人に勧めてくるくらいなんだから当然―…」
「当然書いたよ。もう飾った。ねー、トモ?」
「う、うん」
  友之が途惑ったようにしながらも必死に頷く。正人は嫌な予感に駆られながら、ガサガサと乱暴な手つきで短冊一つ一つを漁り、修司の物を探した。「そんなに乱暴にしたら飾りが取れちゃうでしょ」と修司が窘めるのも軽く無視して。
「……テメエ」
  そうして正人は案の定なそれを見つけて、ひくと片頬をひくつかせる。
  ピンクの色紙に黒のマジックが。気持ち悪いくらい繊細な文字が、堂々と実にくだらない事を訴えていた。

《 7月7日の午後23時59分に、大好きなトモとちゅーがしたい!》

「お前は一体何考えてんだっ!」
「願い事ってのは具体的な方がいいだろうと思って」
  修司ののらりくらりな話口調はいつもの事とはいえ、どうやらこの男、既に出来上がっている。怒鳴りかけたものの何を言っても無駄だと憤りながらも一旦口を閉ざし、正人は仕方なく友之の方へ視線を落とした。
「トモ、お前23時にはもう寝ろよ!?」
「えっ?」
「えっ、じゃねえよ! まさかお前、こいつの願い事叶えてやんなきゃとか思ってねーだろうな!? 絶対許さねーからな、んなバカな事!」
「う、うんっ」
  正人の凄む様子があまりに恐ろしかったせいだろう。友之はこくこくと頷きながら、逃げるように光一郎の方へさり気なく身体を移動させた。
  それにまた面白くないものを感じながら、正人はむうとしてマジックの蓋を取る。
  そうしてヤケクソのようにすらすらと己の願い事とも言えないような願いをその紙面に書き記した。
「ほらよ、俺はこれだ。《バカ修司の願いごとを叶えるな!》」
「本当に大人げないよね、正人君って」
「どっちが!」
「トモが可哀想じゃん。七夕の笹飾りにもちゃんと夢持ってるのに、そんなくだらないこと書いてさ。これじゃ、俺か正人君かどちらかの願いしか叶わない。そういうのずるいよ。反則」
「何が反則だ! こんなもんでどさくさ紛れな事しようとしてるお前の方が反則だろうが!」
「俺は純粋な願いを書いただけ。トモとちゅーしたいと思って何が悪いわけ?」
「俺は、トモにそういうテメエの不健全な空気を押し付けんなって事を言ってんだよ!」
「ふっ…不健全? はは……笑わせんなってもう」
「笑わせてねえ!」
「煩い」
  埒もない言い合いになりそうになったところで、ようやく光一郎がウンザリしたように一言言った。それは別段大きな声でもなかったのだけれど、その声に呼応するように友之がびくんと身体を震わせたものだから、正人たちもぴたりと押し黙った。
「ところでお前ら、今日泊まって行く気なのか?」
  その光一郎が唐突に訊いた。明日は土日でもないし、北川兄弟は勿論、正人も仕事があるから翌朝はきっとバタバタしていて忙しい。
  「俺は帰る」と言いかけて、しかし正人はぴたりと動きを止めてからじろりと修司を見やった。
「お前、どうすんだよ」
「えー、俺は当然、帰んない」
「くっ……なら俺も泊まる!」
「お前らなぁ」
  光一郎が酷く迷惑そうな顔をしたものの、正人としても不穏な願い事をしている修司が気になって帰るどころではない。いつもより早く起きて一旦アパートへ戻る時間さえ作れば、ここで泊まっても問題ないだろう。一通りそれだけを頭の中で計算した後、正人は友之を見やった。
「そういやお前、ここにテストのこと書いてあるけど、いつなんだよ?」
「あ…明日」
「明日? てめ……なら勉強しろ、勉強っ! 七夕祭りどころじゃねーだろ!」
「俺らがここで宴会してるから気が散っちゃって出来ないんだよねえ?」
「ならお前帰れよ! そしたら俺も帰るからよ!」
「やだね」
  修司はしれっとしてそう拒絶した後、ぐびりとビールを煽って友之を見やった。
「トモ、修兄ちゃん泊まってっていいよね? それとも、帰って欲しい?」
「ううんっ。居て欲しい」
  珍しく即答する友之に修司は満足気。正人は思い切り仏頂面で、光一郎は何を考えているのか分からない無表情だった。
  それでも一番に口を開いたのはその光一郎だ。
「ならお前、テストの点数、こいつらのせいで悪かったってならないように勉強しろ。隣でも出来るだろ?」
「うん……あの……」
「ああ、分かんなくなったら来ていいから」
「うん」
  友之は傍に置いていた勉強道具を持つと素直に隣の寝室へ移って行った。一応そこには友之の勉強机が置いてあるのだが、普段友之はそこで勉強しない。通常はこのローテーブルでいつでも光一郎が教えてくれる位置にいてやる。
  だから隣に行く風景とやらを珍しく眺めていた正人は、少しだけ申し訳ない気分になって光一郎を見た。
「ホントにいいのか? 俺らここで飲んでて」
「別にいいよ。トモがいて欲しいって言ってんだし」
「いて欲しいって言ったのは俺にだけだよ」
「こいつ……」
  すかさず修司が口を挟んだものの、正人もぎりと歯軋りしながら後の言葉を続けるのをやめた。無駄に騒いで友之の勉強の邪魔をしてはいけない。正人はいつだって友之には自分などとは違う、光一郎のような「まっとうな道」を歩んで欲しいと願っていた。
  そう、正人にとっての願い事はいつだってそれだ。

《 友之にはちゃんとして欲しい。》

  それこそ、過去の自分がいたような「不健全な所」へは行って欲しくない。
  違う意味での「不健全な場所」にも行って欲しくない。例えば、このバカ修司がいるような所とか。
「ところでコウ君。いい加減君も何か書いたら?」
  正人が物思いに耽っていると、修司が唐突に光一郎へ言った。正人がそれにハッとして顔を上げると、光一郎は憮然としながら「こういうの苦手なんだよ」と正人と同じ感想を述べた。
「コウ君、自分の願いを外に晒すなんて真似、した事ないもんねえ」
  すると修司がバカにしたように笑い、立て続けに、「けど、それってトモもそうだったでしょ?」と、付け足した。
「そうなんだよな……」
  すると光一郎は修司の言われた事にしんみりと考えこむように同意した後、「結局」と諦めたような笑みを薄っすらと浮かべた。
「凄いんだよな、あいつって」
「はぁ…? 何が凄いんだ?」
  これに正人が問いかけると、光一郎は微かに眉を潜めて答えた。
「こんなの何枚も書けるなんて凄いだろ?」
「……そういうもんか?」
「正人だってまともなもん、何も書いてないじゃないか」
「うっ…まあな」
  言われて初めてそうかと思い、正人は「それなら」と修司を仰ぐ。
「お前だってそうだろうが。こんなふざけたもんしか書けないくせによ」
「そうだよ」
  けれど修司の方はとっくに「それ」を分かっていたのか、コツンとグラスをテーブルに置いた後、今頃気付いたのかという風に皮肉気に唇の端を上げた。
「俺らは、トモたち高校生諸君に到底及ばないね。願い事の一つもまともに書けないんだから」
「う………」
「そうだな」
  黙る正人に光一郎がふっと溜息交じりに同意して、何気ない所作で笹飾りに手を触れた。
  それで正人もそれに目を落とす。
  他愛のない願いをたくさん紙に写している彼らのことを今はもう何だかバカにできない。まともな事一つ書くのすら躊躇い恥じる自分こそが情けないような気がして。
「これが……年食ったって事なのか?」
  未だ20代に突入したばかりの身の上でそんな事をぽつりと呟き、それに反論しようとしない幼馴染連中を尻目に、正人は自棄のようにビールの入ったグラスを一気に煽った。

  そんな三人の元へ、「分からない…」と情けない顔で友之が現れるまで、あと数分……。



【おわり】