第11話「さっさと始まりなさい」



幸村「うう……」(ボーッ)
小十郎「おはようございます、幸村殿。……おや、やっぱり」
幸村「う…?」
小十郎「目の下に隈が出来ていますよ。小熊なだけに“クマ”……ふふふ」←一人でちょっとツボ
幸村「あ、あの……寝過ごしてしまい…申し訳ないでござる」
小十郎「構いませんよ。朝方少しうつらうつら出来ただけなんじゃないですか?」
幸村「な、何故それを…!?」
小十郎「お顔を見れば分かります。それより、朝食をどうぞ。今温かいスープを持ってきますから、先に行っていて下さい。ああ、洗面所にタオルも置いてありますから」
幸村「か、かたじけない…。と、ところで政宗殿は…?」
小十郎「昨日とはうって変わったこの晴天ですからね。パンダの小十郎が畑へ出ると言うので、ついでに森を一回りしてくると一緒に出かけられました。元就殿も帰られると仰ったので」
幸村「元就殿と一緒に…!」
小十郎「パンダの小十郎も一緒ですから」
幸村「………」
小十郎「……(苦笑)。さあさあ、どうぞお席へ。あ、そういえばお供の佐助殿もいらしてますよ」
幸村「佐助が!?」



佐助「あ、おっはよ、旦那」
幸村「さ、佐助…! ここで一体何を…?」
佐助「えー? 見ての通り、朝ごはんご馳走になってんだけど? 旦那を待ってるついでに。小十郎さんのスコーン、マジで美味しいわ。もっと食べたいな〜っと」
小十郎「たくさんありますから、幾らでもどうぞ。今お持ちしますね」
佐助「うっひょー、やったネ。言ってみるもんだ♪」
幸村「さ、佐助! 図々しいぞ、もう少し弁えろ!!」
佐助「んー? それ、真田の旦那には言われたくないねえ」(ニヤリ)
幸村「な、何故だ!?」
佐助「だーって、いきなりお泊まりだもん。何の予告もなくさあ、知り合ってまだ間もない独眼竜の旦那ん家にネ。それって、礼儀的にどうなのー? ご飯もばくばく頂いちゃったみたいだし?」
幸村「うぐ…」
佐助「んで、極めつけは、当の主と一緒に添い寝?」
幸村「な、何故それを(赤面)!!?」
佐助「ここに来た時、ちょうど表で独眼竜の旦那に会ってサ。真田の旦那のこと笑ってたよ〜。ベッドの上を嬉しそうに飛び跳ねて? ふかふかのお布団や枕、ぎゅーってしてたってサ。まったくもう、人様ん家ではしたない」
幸村「……!!!」
佐助「でも、何かもぞもぞ動いたりして寝相が宜しくないとことかも可愛かったってサ。何より抱き心地が良くてサイコーとか言ってたけど。抱き心地ねえ…?」
幸村「………さ、佐助」
佐助「何?」
幸村「こ、この事……お、お館様には……」
佐助「えーっ。どうしよっかな〜♪」
幸村「佐助ッ!!」
佐助「うるっさいなぁ。もう、そんな大きな声で怒鳴らないでヨ。分かってます、俺サマも野暮はしたくないんで。お口にチャック! それで安心でしょ?」
幸村「………」
佐助「独眼竜の旦那に誉められた事は嬉しくないの?」
幸村「…ど、どこが誉めて…」
佐助「言ったじゃん。“可愛い”って言ってたんだよ。嬉しくないの?」
幸村「俺は男だぞ…っ。そ、そのような言われよう、嬉しいわけが…!」
佐助「えーっ。じゃあホントは一緒にも寝たくなかった? なのに、独眼竜が勝手にお布団に入ってきちゃった?」
幸村「そ、そうだ。別に、俺は…」
佐助「あら、そう。じゃあ独眼竜の旦那に言っておいてあげる。真田の旦那が迷惑被ったから、今後二度と一緒に寝ないで下さいって。抱き枕なんてもってのほか! 禁止!ってね?」
幸村「!!」
佐助「まぁ、そうだよね〜。泊めてもらった事には感謝するとしても、いきなり一緒におねむなんて失礼だよねえ? 真田の旦那は客人なのにさ。分かった、俺サマがきっちり話つけときますって」
幸村「佐助ッ!!」
佐助「ん?」
幸村「その………いい……」
佐助「いい? 何が?」
幸村「政宗殿に余計な事は言うな」
佐助「え〜でも〜」
幸村「言うなと言っているのだ!!」
佐助「………フフッ」
幸村「!?」
佐助「フフフフッ。あ〜、やっぱ面白いわ、旦那は♪」
幸村「佐助…?」
小十郎「全く、佐助殿も人が悪いですね」
佐助「俺サマ、人じゃありませんから。…って、でも小十郎サンだって。分かってて知らぬフリでしょ?」
小十郎「まあ…。まさか私も政宗様があそこまで鈍いとは思いませんでしたが」
佐助「そうだよ、独眼竜の旦那も相当だよー。何も分かんないで素でやってるから怖いね。まだ意識しているウチの旦那の方が前進?」
小十郎「そうですねえ」
幸村「……?? 二人とも、一体何の話をしているのだ…?」
佐助「自分で考えなさい」(わざとそっぽを向く)
小十郎「そのうち分かりますよ」(にっこり)
幸村「な、何なのだ…!」(途惑いまくり)


その頃、政宗は――。


政宗「小十郎、動物の毛ってのはいいもんだなぁ、スゲーふかふかだぜ? 初めて知った」
小十郎「先に申し上げておきますが、ばさらの森で狩猟は禁止ですからな」
元就「我の尻尾にも気安く触ろうとするなよ」
政宗「分かってるって。けど、やっぱお前のその尻尾って狙われるんだな? はは、見るからに触り心地良さそうだもんな」
元就「いやらしい目で見るな。日輪の力で焼き殺すぞ」
政宗「おー、怖ェ。物騒なこと言いやがる狐だぜ。ちっとは幸村を見習ったらどうだ?」
小十郎「……政宗様、さきほど猿飛と話しておりましたが。昨夜は真田の部屋に?」
政宗「ああ。ちっとだけ邪魔するつもりだったんだが、つい寝ちまった。あんまり気持ちが良かったもんでよ」
小十郎「………真田は眠れていましたかな」
元就「恐らくは無理であろう」
政宗「あん? 何だ?」
小十郎「いえ、何でもありません」(そ知らぬ顔で他所を向く)
元就「そのうち、否が応にも気づくであろうよ」(冷笑)
政宗「んん??」


周りは既に「分かっている」のに、当の2人が完全無自覚。
おまけに殿は意識すらしてない…!?
……人間と小熊の恋は始まるんだか、永遠に始まらないんだかの境を彷徨っているのでありました。
(※本日のタイトルは↑の単なるツッコミです。)



つづく



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