第14話「特別」


ばさらの森武闘会。Aブロックの第一戦が始まろうという頃。
政宗は大会そのものの偵察は小十郎に任せて、自分は賑やかしい屋台へと足を運んでいた。

政宗「幸村の奴、一体何処行きやがったんだ。佐助が探すって言ってたが、こんな人…じゃなかった、動物の入りで見つかんのかよ…」
いつき「あーっ! 政宗さ、発見!!」(ぴょこんと突如現れるうさぎいつき)
政宗「んあ…? 何だお前か。今日はお供のむさい男共はいないのか?」
いつき「オラの友達さ、悪く言わねーでけろ! 皆、オラの次の試合を最前列で見る為に席取りに行っただ。オラの試合、あのAブロックの後だでな!」
政宗「そういやお前もエントリーしていたな。試合、次なのか。こんな所いて大丈夫なのかよ。というか、そもそも武闘大会なんかに出て大丈夫なのか?」
いつき「甘く見るでねえ! オラの力さ、政宗さにも見せつけてやるだよ! オラ、この神さまから貰ったハンマーで絶対優勝さして、オラたちの畑を今よりももっともっと大きくするだ!」
政宗「へえ…。それがお前の願いか?」
いつき「そうだ! 政宗さは何を願うんだ?」
政宗「さあなあ…。それより、本当にもう行けよ。普通次の試合の奴は、こんな所にいちゃいけないはずだろ?」
いつき「んー。分かってるだ。けど、その前に……へへっ。政宗さ、あれ!」(ぴょこんと政宗の腕に抱きついてある方向を指差すいつき)
政宗「何だよ急に…。ああ、あれか」
いつき「あれだ!」
政宗「俺に買えってか?」
いつき「んだ! おら、あの屋台のりんご飴が大好きなんだ! 毎年この大会が始まる前は絶対あの飴を買って試合に臨むんだ!!」
政宗「ならさっさと買って行けばいいじゃねーか」
いつき「だから買って買って、買ってけろ! 政宗さがオラに買ってけろー!!」(ぴょんこぴょんこと跳ねながら可愛くおねだりするうさぎいつき)
政宗「……お前を慕ってるあのうさぎ軍団なら喜び勇んで買うんだろうが、俺はそんなに気前良くねえぞ……って、イテ! 痛ェな、んなバカ力で引っ張んなって! 分かった! 買ってやるっての!」←早い
いつき「わあい! 政宗さ、大好きだ〜♪」
政宗「ったく、しょうがねえガキだな……」

しかし、政宗があっという間に根負けしていつきにりんご飴を買ってやった時。
またしても、似たような事件は起きた。

いつき「政宗さ、これ、すっごーく美味しいだ!」
政宗「ああ、そうかよ。良かったな」
いつき「政宗さ、大好きだー♪」
政宗「分かった、分かったから、そんな腕にひっつくのは止め……ん?」

幸村「う………」(2人の姿を見てボー然と立ち尽くす小熊幸村)

政宗「お、幸村。一体何処行ってたんだよ。探したんだぜ?」
いつき「およ? 幸村さ、どうしただ? 何か顔が真っ赤だ」←無自覚に政宗にひっついたまま
政宗「幸村?」←同じく、無防備
幸村「政宗殿は……政宗殿は、いつき殿とそういう関係だったのでござるか……」(うる)
政宗「はぁ…?」
いつき「そーゆー関係って何だ??」
幸村「某…某、政宗殿に美味しい団子の屋台をお教えしようと、意地悪な猫から逃れて戻って参ったのに……。政宗殿はりんご飴の方がお好きだったのですな…!」(うるうるる)
政宗「……何か話が見えねえが。もしかしてお前、泣きそうなのか(汗)?」
いつき「政宗さはりんご飴買ってねーだぞ。オラにだけ買ってくれたんだ」
幸村「い、いつき殿にだけ! いつき殿にだけ、特別に…!!」
政宗「どうでもいいけど、アンタあの竹中半兵衛から逃げてきたって、元々は自分から喧嘩売ったんだろ? 試合前にくだらない事で怪我でもしたら大変だぜ? あんまり考えなしに突っ走るのはよしておけよ。俺だってこれでも心配した――」

幸村「政宗殿など、嫌いでござるー!!」(ダッシュ)

政宗「はあ…っ!? お、おい、幸村…!?」
幸村「団子は一人で食べるでござるー!!」(叫びながらどんどんと遠ざかって姿を消す幸村)
政宗「な……何だ、ありゃあ……?」←半ばポカーン
いつき「政宗さ、何か幸村さの気に障ること言ったんじゃねえか?」
政宗「バカ言え、今の一瞬の出会いの間に俺が何したってんだ。お前だって一緒にいただろうが」
いつき「んだな」
政宗「それで何か気づく事あったか」
いつき「んー。オラ、分からねーだ!」
政宗「……お前に訊いた俺がバカだった」
いつき「ただ、幸村さ、政宗さと団子を食べるの楽しみにしてたみたいだから…。一緒に食べてやればいいんじゃねえか?」
政宗「ん……まあ…そうだな。けど、あいつまたどっか行っちまったしなあ」
いつき「そんじゃ、オラもうそろそろ行くだ! ズバッと行って、一回戦突破してくるだよ!!」
政宗「ん? あ、ああ…気をつけていけよ」
いつき「政宗さも頑張るだぞー!」(だだだと手を振りながら去っていくいつき)
政宗「しかし……。分からねえ……クマの考える事は」


その頃、Aブロック一回戦は。


審判「勝負あり! 一回戦の勝者は、魔王の正妻、美狼の濃姫殿!!」
まつ「犬千代様〜【悲】!」
利家「うぅー、すまん、まつ……。負けてしまったぞ……」(胡坐をかいた格好でぽりぽりと頭をかく利家)←無傷
濃姫「ふふっ、利家……修行が足りないようね。また来年、出直してきなさい」
利家「っかしいなあ、まつの飯もたんと食ってきたのに、ちょっと足がもつれて場外アウトとは」
まつ「元気をお出し下さりませ、犬千代様! 後はこのまつめが! それに、濃姫様を傷つけないお優しさ、このまつめにはしっかりと伝わりました!」
利家「へ…? い、いやあ、別にそういう事で負けたわけじゃあ…??」
濃姫「ふふ…そうよ。全ては実力。上総之介様の天下統一の為、少しでも障害を除去するのが私の務め…。だから私は誰にも負けるわけにはいかないの…!」
利家「濃姫様のこの執念に負けたのかなぁ…」
まつ「犬千代様、とりあえずご飯に致しましょう。元気を出して頂く為にも!」
利家「む! そうだな! とりあえずは飯にしよう! 行くぞまつ【愛】!」
まつ「はい、犬千代様【愛】!!」←仲良く手に手を取って退場の猪夫婦


会場裏で。。。


蘭丸「ふう…。見つからないように事前に蝋塗るのって大変なんだぜ…。しかも前田の立ち位置予想してよー。明智の奴、自分はサボりやがって! ま、お陰で濃姫様が一回戦突破したからいいけどな!」


…何でもありなのか武闘大会!?次回へ続く。




つづく



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