第15話「内も外もてんやわんや」


ばさらの森武闘会。Bブロックの第一戦が始まろうという頃。
政宗は試合観戦もどこ吹く風で、何故か泣きながら去って行った小熊幸村の探索を開始していた。

政宗「はあ…。何だって幸村の奴…というか、何で俺はアイツのこと探してんだ…」
慶次「あーっ! 政宗じゃねえかッ!!」(ワンコ慶次、颯爽と登場)
夢吉「キキーッ【喜】!!」
政宗「………」
慶次「あれ(汗)。ねえ何? 何なの、そのおっそろしく冷たい視線は。折角こっちが、えーっと、こういう時、政宗流には何て言うんだっけ? ふ、ふ…? ふれどりー?」
政宗「フレンドリー」
慶次「そう、それ! そんな感じで挨拶しているのにさぁ! そんな、『ウゼエ奴が現れやがった』みたいな迷惑そうな顔してさ」
政宗「分かってんじゃねーか。分かってるなら、おら、さっさとどっか行け」(しっしっ)
慶次「政宗ーっ!!」(ぎゅううううう)
政宗「だからっ! このバカ犬ッ! 気安く抱きつくんじゃねえッ!!」(ばりりとすぐに引き剥がす)
慶次「きゅうーん…【寂】」
夢吉「ききいぃ…【悲】」
政宗「……テメエら、わざとやってるだろ【疲】」
慶次「へへへ…。まあま、そんなピリピリしないで! 何があったか知らねーけど、折角のお祭りだ! 楽しまないと損だよ?」
政宗「分かった分かった。楽しむから、頼むから早くどっか行ってくれ。激しく嫌な予感がするんでな」
慶次「ん?」
政宗「またしても前のパターンと似てきた気がする」
慶次「一体何の事よ? まあ、ともかくさッ。武闘会、楽しみだなあ。俺は政宗とはブロックが違うから決勝行くまで会えねーけど。せいぜい、その隠れた実力とやらを見せつけてくれよな! 楽しみにしてっからよ!」
政宗「何だよその隠れた実力ってのは…」←喋りながらもきょろきょろと小熊の行方を捜す殿
慶次「えー? 森中の奴らは皆、言ってるよ。異世界からやってきた人間の伊達政宗はおっそろしく強い武人で、今この森を支配している表の顔も裏の顔も、みんなぶっ飛ばして天下統一する気満々なんだって」
政宗「全く、人…じゃなかった、動物の根拠ない噂ってのはほとほと傍迷惑だな。俺を妙な動物どもの権力争いに巻き込むんじゃねえよ。俺はな、バカンスに来てんだ、ここには。バカンス。分かるか?」
慶次「んー? ま、何となく」
政宗「何となくでも分かるならいい。だから俺は幸村の師匠だかいう武田の事も、裏の顔だか言う織田だの豊臣だのとも無関係なんだよ。分かるな」
慶次「豊臣……」
政宗「…? そういや、さっき幸村がその豊臣関係の仮面野郎に喧嘩売ってたぜ」
慶次「! 竹中半兵衛!!」
政宗「あー、そうだ。そいつだ。ま、何事もなかったみたいだけどよ、お前等一体…」←関係ないと言いつつ、つい訊いてしまう殿
慶次「……政宗」
政宗「あん?」
慶次「Bブロックで上がってくるあいつには…気をつけろ」
政宗「ん…? Bブロックって言ってもなあ、俺は実際トーナメント表もろくに見てねえし――」
慶次「とにかく舐めてかかるな。気安い気持ちで闘っていい相手じゃねえから。もしやばそうなら…棄権しろ」
政宗「……何だそれ。気に食わねえ言い方だな」(むっ)
慶次「俺は政宗の事が好きだから。怪我とかして欲しくねえんだ」
政宗「俺は隠れた実力者なんだろうが? 他人の心配してねーで、テメエはテメエの心配だけしてろよ。それに実際、お前どこのブロックなんだよ」
慶次「C…」
政宗「は…? お前、そこにはうちのパンダ小十郎がいんだぜ。テメエこそ、あんまり舐めてかかってると――……って、おい! 何処行くんだ!?」
慶次「幸村を探してくる。竹中とやりあったんなら、俺も関係してるし。心配だから」
政宗「あ!? そうだ、幸村! 俺こそアイツを探してんだよ!! ……って、行っちまいやがった。何だあの野郎…急に暗くなりやがって」

市「失礼な話だよね……」(のそり)

政宗「ぬおっ!?」←ちょっとびびった
市「Cブロックの最初の相手は……この市なのに……。犬が獅子に勝てるわけがないでしょう…? 勝ってしまうのはこの市の定め……。負けるのは、あの犬の定め……」
政宗「……アンタ、久しぶりだな。元気だったか?」
市「独眼竜……」
政宗「何だよ…」
市「あのね……長政様が、Aブロックに、いるんだ……。独眼竜と、同じブロック」
政宗「へえ…アンタの旦那だったな。カモシカのくせに獅子のアンタと結婚した剛毅な奴」
市「うん…。長政様はね…とっても強くて、正しい方なの……。それで、とっても美味しそうな…」
政宗「…どうでもいいが、アンタ、もっとシャキシャキと喋ってくんねーか? 聞いてるこっちは疲れるんだよ」←幸村探しに行きたいもんで、じりじり
市「……市と長政様はね……絶対に、優勝しなくちゃならないの……」
政宗「…まぁせいぜい頑張りな。俺はもう行くぜ。幸村を探しに行かなくちゃならねーんでな」
市「……市と長政様は、優勝して……優勝したら――」
政宗「くそ、慶次の奴、犬だから鼻いいだろうし…。勝手に先行きやがって…!」←もう聞いてない。市を置いて歩いていく非情殿
市「市は………」←そんな殿をぼうと見送る黒獅子・市


その頃、Bブロック一回戦は。


審判「物を投げないで下さい! 観客の皆様! 物を……ゴフッ!!」
いつき親衛隊「い・つ・き・ちゅああ〜ん【愛】! 優勝は、いつきちゃんだべ〜【怒】!!」
どっから来たのか、かすが親衛隊「黙れこのロ○コン共がッ! 絶対絶対、勝つならセクシーグラマラスかすがちゃんだろう【怒】!! 見ろ、この見て下さいと言わんばかりのエロカッコ【愛】!!」
かすが「う、煩いッ! 何だ、貴様らは一体【赤面】!? み、見るな、私を見ていいのは、謙信様だけ…ッ!!」
いつき「ふわあ……。何かオラ、激しく眠くなってきただ……」(こてんとハンマーに寄りかかって眠り出すいつき)
いつき親衛隊「はわっ!? か、かかか可愛い! 可愛過ぎるだいつきちゃん! その寝姿!!」(パシャパシャと一斉に写真攻撃を食らわせ始めるうさ耳親衛隊)
かすが親衛隊「かすがちゃーん! かすがちゃんもエロセクシーポーズでカメラ目線こっちにちょうだーい!!」(パシャパシャ)
かすが「し、審判…ッ! こ、この応援団…じゃない、不埒な変態共を観客席から追放してくれッ! 全く試合にならないだろうがッ【怒】!!」
審判「きゅううぅ…【吐血】」←観客に物を投げられて失神中
かすが「くっ…! 何なのだこの状況は…っ! ……こ、こうなったら…!!」
いつき「くーくーZZZzzzz…」
かすが「てえぇーっいッ!!」(寝ているいつきを持ち上げてそのまま場外へ放り投げるかすが)
いつき親衛隊「!!! うわあ、いつきちゃあ〜〜ん!!」(焦ってそんないつきをキャッチしようとするうさ耳親衛隊)


……そんなこんなで、いつき場外アウト。Bブロック1回戦突破はかすがとなった……。
ちっともまともに試合してない武闘大会。次回へ続く。




つづく



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