第17話「目立たぬモグラ」


ばさらの森武闘会。Dブロックの第一戦が始まろうという頃。

政宗「……俺はこのシリーズだと、どうにも不遇な身の上って気がするんだが」
???「独眼竜・伊達政宗ッ!! テメエ、今日こそ勝負! 勝負勝負勝負だあぁッ!!」
政宗「っと、あのなぁ! 地面の下から棒きれ振り回すんじゃねえよッ! 危ねーだろうがぁッ!」(相手の無茶苦茶な振り回し攻撃を片足でひょいと避けつつ文句を言う政宗)
???「るせー! 勝負に危ないも何もあるか! お前もさっさと剣を抜けー!!」
政宗「……剣じゃなくてハンマーの間違いじゃねえの? こんな時こそいつきがいればな」
???「はぁ…!? 何でハンマーなんだよっ。お前の武器はその腰に差してる六爪だろうが!?」
政宗「モグラ相手に剣なんか使うかよ。つか、何なんだお前? 名乗りもしねェで人のこと慣れ慣れしく呼んだ上、俺の武器まで知ってるたぁ…」
???「あ、あほか〜!! 俺はなッ! ずうっと前からお前んとこに行って勝負挑んでんだよ!!」
政宗「……はぁ?」
???「『はぁ!?』じゃ、ねえッ! いいか、よっく聞けよ…! テメエ、何度も何度も名乗らせやがって、俺はぁ、このばさらの森を支配する男ッ! 神出鬼没のモグラ剣士、宮本武蔵様だぁッ!!」
政宗「………」
武蔵「?? ………」

暫し、2人の間にはしーんとした沈黙が走る。周囲はお祭りでざわざわと賑わっているが。

武蔵「な、何を黙ってやがんだ、お前は…(焦)」
政宗「いーや、名乗られた事なんかねえぜ」
武蔵「んなっ!?」
政宗「お前なんか初めて見るし。色んな動物見てきたが、地中から顔出すモグラに会ったのは間違いなくこれが初めてだ。お前、これまでの連載読み返してみろよ!? ぜってぇお前なんか1度も登場してねえから」
武蔵「な、何だとぉ〜!」
政宗「つーか、俺もう行っていいか? 幸村を探さねえと…」
武蔵「待て! 待て待て待て〜!!」(ザザザと土を蹴って去ろうとする政宗をとうせんぽ)
政宗「っと。何すんだよモグラ! うぜえなテメエ!」
武蔵「るせー! テメエ、無視するのもいい加減にしろよ!? いいか、俺サマがわざわざ出没してやるってスゲーレアなんだぜ? ゲームでも『あ、こんな時に出てくんなウゼエ!』とか言われてたらしいけど! 俺サマはなぁ、超貴重な、かなりありがたいキャラなんだからなッ!」
政宗「どういう点で?」
武蔵「どっ…!? そ、そりゃあ、つえーし! かっこいいし!」
政宗「あとは?」
武蔵「あ、あと!? あ、あとはあとは、そうだな……。つえーし!!」
政宗「それさっき言った」
武蔵「かっこいいし!」
政宗「それも言ったぞ。お前、バカだろ?」
武蔵「な!」
政宗「まぁ、まだガキだしな? 無礼なその態度も世間をよく分かってねえって事で大目に見てやるよ。って、わけで俺が優しくしてるうちにどけ」
武蔵「また逃げるのかテメエ! 勝負しろお、伊達政宗ッ!!」(ぶんぶんと棒を振り回す武蔵)
政宗「……また?」(去りかけていた足を止めて振り返る政宗)
武蔵「そうだッ! テメエは毎度毎度俺の勝負から逃げてんだよ、この卑怯者!」
政宗「あぁ!? だから俺はお前に会うのは初めてだっつってんだろ! 一体どこで会って、そんで俺がいつ逃げたってんだよ!?」
武蔵「逃げてるだろ!? 俺が仕掛けた落とし穴、ことごとく避けて行くしよ!」
政宗「………は?」
武蔵「俺はなぁッ! このばさらの森に住む住人は全て俺サマが作った落とし穴に一度は落とすという壮大な目標を掲げてんだッ! なのにお前はッ! 俺が仕掛けても仕掛けても、見知ったように避けて通りやがって! 俺サマの穴に落ちてないくせにこの森の住人ぶろうなんて、百万年早いんだよッ!」
政宗「……落とし穴は避けるだろフツー。あからさまに跡があるから分かるだろうが」(※「どう森」知らない方へ…森の中に仕掛けてある落とし穴はかなり分かりやすい印がついているのでわざとはまらない限りは大抵引っかかりません)
武蔵「分かってもはまれ! それが武人ってもんだろうが!」
政宗「意味分かんねー! 何なんだこのクソガキ! 何か無性に腹立ってきたぜ!」
武蔵「じゃあ勝負だぁ!!」
政宗「ぜってぇごめんだ!」(げしっ【蹴】)
武蔵「ぶごっ!?」←もろに頭を蹴られた

その頃、Dブロックの会場では――。

家康「わぁっはっはっは! 宮本武蔵め! 忠勝の強さに臆して逃げたか!?」
忠勝「……………」
審判「時間ですッ! 宮本武蔵選手の試合放棄により、Dブロック1回戦の勝者は本田忠勝選手!!」
家康「よっしゃあ! 忠勝! まずは1勝ッ! 戦わずして勝つのも兵法の一つよ! もっとも、今回は相手が単なる臆病者というだけだがなッ! はははははッ!!」
蘭丸「ち。何だよ、勝てないまでもせめて痛めつけるくらいはしとけっての。ああいうデカイのが最後まで残ると面倒なんだからよー」(観客席で頬杖をつきながら)
濃姫「上総之介様の次の相手はあの本田忠勝ってわけね…」
蘭丸「まぁ、信長様ならあんな独活の大木、ヨユーだろうけどね! …あれ? ところで明智の野郎は何処行ったんだ?」
濃姫「試合が随分先で退屈だからって会場の外へ出たみたいね。また悪い癖が出ないといいけど」
家康「忠勝、最強ー!!」(未だ武舞台で両手を挙げて万歳三唱の家康)

…己の負けも気づかずに、宮本武蔵、退場…!!
次回へ続く。




つづく



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因みに武蔵の作った落とし穴にはまった事があるのは元親だけらしい。