第19話「各軍、入り乱れ」
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ばさらの森武闘会。Bブロックの第ニ戦が始まろうという頃。 政宗「よう、アンタが武田の大将…信玄公か」 信玄「ん…。おぉ、隻眼の。おぬしが伊達政宗か! 日ごろよりうちの幸村が大層世話になっているようだな! 礼を言う!」 政宗「いや。こっちこそ仲良くさせてもらってるぜ。それより、アンタ残念だったな。試合、負けちまったんだろ?」 小十郎「政宗様」 信玄「ん…わっははは! いや、良いのだ、若いの。そうだな、負けてしまった! 残念無念! 謙信との一騎打ちまでは残っていたいと思っていたが。奴との勝負は、また別の所で行う事にするわい」 政宗「ひゅう〜、意外に潔いんだな。表の森を締めてるって言うから、初戦敗退にさぞかし悔しい思いをしているかと思いきや。相手はそんなに強かったのかい?」 信玄「うむ…。まぁ、奴の実力もなかなかのものだったが…。それよりも、ちと気になる事があってのう。勝負が早目についたのはある意味良かったのかもしれぬ」 小十郎「試合中に突然起きたハプニングの事ですね」 政宗「それか? いきなりヒビが入ったっていうアンタの武器」 信玄「むう…。そして、これよ」(手にしていた戦闘服をかざす。紐が左右にちぎれて履けなくなっている) 小十郎「このような…。もしや、誰かが細工をしていたとか」 信玄「それはない。己の武器は肌身離さず持ち歩いておったし、この衣にしても昨晩うちの者らが念入りに支度してくれていたものじゃ。…まぁ、不幸が重なった事は己の運のなさ、ひいてはまだまだ精進が足りなかったという事で納得できるのだが…」 政宗「幸村の事が気になる、か?」 信玄「む。その通りじゃ。佐助に聞いたところ、またも何処ぞへ走って行ってから行方知れずというが」 政宗「そうなんだ。俺も結構探したんだがな。何せこの森の地理には全く通じてないもんでよ」 信玄「奴の事じゃ、特に間違いはないと思うが…。何せここ最近の不穏な動きは看過出来ぬものがある。従来からある【織田】の勢力だけではない、【北条】や【徳川】、【豊臣】も妙な動きを見せ始めておるでな…」 政宗「……ふぅん? なら尚の事、アンタが早々に敗退しちまったのはまずいんじゃないのかい?」 信玄「ん…。まぁ良い。まだ【武田】全てが崩れたわけではないからの。特に佐助には働いてもらわねばな――」 ???「キエエエエ! ヒイッヒヒヒヒヒ!!!」←何やら甲高い笑い声 政宗「な、何だぁ…?」 ???「ほっほっほ。こりはこりは、まだ負け犬がこのような場所でうろついておったとは。未練たらしく残っておっても、おぬしの負けは負け! 諦めてさっさと去ぬが良い! 武田の大虎めが!」 政宗「煩ェ声…。ロバのくせに甲高い声で嘶きやがって…。誰だよあのジジイ…」 小十郎「彼が北条氏政ですよ。ほら、隣にいるのが北条の忍。風魔小太郎です」 風魔「………」 信玄「風魔よ。怪我は大した事はないか? すまんの、加減が出来なかったもんでな」 北条「なっ!? な、何を言っておる、このワシが従える最強の忍・風魔に向かって! 負けたくせに、妙な言い掛かりをつけるでないッ!」 政宗(……確かに、あの忍。足を痛めてやがるな) 小十郎(信玄公もただでは倒れぬ、という事ですね)←互いにしか聞こえない小声 北条「むぅ…? そこにおるのは、人間の伊達政宗だなッ!」 政宗「そーゆーアンタは、煩いロバだな?」 北条「無礼なッ! 先祖代々、このばさら森に平和と安定をもたらしてきた北条家を愚弄するかッ!? 悪しき余所者はこのワシが直々に葬ってやるで、楽しみにしているが良い! 行くぞ、風魔よ!」(ぷんぷんしながら偉そうに去っていく氏政) 風魔「………」←ちらりと政宗を見た模様 信玄「ふふ……。どうじゃ、独眼竜。この森もなかなかに面白いだろう?」 政宗「…まぁな。変な奴がいっぱいいて、飽きないぜ。……今の忍も、ちっとはやるようだ。アンタに怪我させられて、次の試合で実力が出せるかは疑問だが」 信玄「いつ如何なる状況でも己が力を発揮出来ねば、いつ食われても文句は言えん。それがこの森の掟よ」 政宗「この森ってそんなアブナイ所だったのかよ。もっと平和でほのぼのな所かと思ってたぜ」←まったくだ 信玄「それより、ワシは一旦屋敷に戻るが。うちの手練にも命じてはいるが、もし幸村を見かけたらすぐにワシの所に来るよう伝えてくれぬか」 政宗「あ? OK、お安い御用だ。……しかし、今アンタのもう1人の弟子か子分か知らんが、とにかく佐助の奴が戦ってるだろ。試合、観なくていいのかよ」 信玄「ん…ふはは、必要ないわ! ではな!」(のっしのっしと堂々とした足取りで去っていく大虎・信玄公) 政宗「あのオッサン負けたってのに、全然ダメージ受けてねーな」 小十郎「ええ、この大会で負けたとは言っても、彼ならこの森での立場もそうすぐは揺らがないでしょうね。それだけの存在感がありますから。――それより、政宗様」 政宗「あん? 何だよ改まって」 小十郎「この大会では、実力者が必ずしも勝利するとは限らない。それを肝に銘じておいて下さいませ」 政宗「んー? ……はいはい、と。んな怖い顔するなって」 小十郎「政宗様!」 政宗「それより、俺はもう一度幸村を探しに行く。お前は大会の戦況見てろよ。お前も俺と同じでこの辺りには詳しくないだろうし、代わりにパンダの小十郎の方に幸村捜索を命じておいてくれ」 小十郎「分かりました。…しかし、幸村殿は本当に何処へ行かれたのでしょうね」 ――そして、試合会場では―― 佐助「なかなかやるね、徳川の」 家康「ハァハァ…ッ! じ、時代は、ワシが、作る…! 三河の、意地に、かけ、て…」(槍は携えているものの、息も絶え絶え。佐助の連続攻撃に既にボロボロの状態) 佐助「無理しない方がいいんじゃない? アンタ、どっちかっていうと戦闘タイプじゃないんだし」 家康「黙れ…! わ、わしとて、いつも…忠勝の後ろに、隠れているわけでは…!」 佐助「まあ、そういう健気な主は嫌いじゃないけど、ね」(言いながらシュッと飛び去り、家康の前から姿を消す) 家康「は…ッ!?」 佐助「悪いけど、俺サマもう別の主いるし? こっちもお仕事しなくちゃなんない身なんで、そろそろ失礼しますよ…っと」(家康の背後に回り、手刀を一発) 家康「がッ…! ……ッ」(白目を向いて倒れる家康) 佐助「……ごめんねえ」 審判「勝負あり! 佐助選手のKO勝ち!!」(ワアワアと歓声の上がる場内) 佐助「どうもどうも。悪いねぇ、忍なのにこんなに目立っちまって」 秀吉「フン………徳川め。惰弱なり」(会場の最後尾から試合を眺めていた秀吉) 半兵衛「まぁ順当だろうね、ここで武田が駒を進めるのは」 秀吉「半兵衛か。何処へ行っていた」 半兵衛「出場者の戦力分析をちょっと、ね。まあ多少予定がずれる事はあっても、僕たち豊臣軍の勝利は揺るがないよ。安心して」 秀吉「フン」 半兵衛「それじゃあ、次は僕だね。行ってくるよ、秀吉」 ――着々とトーナメントが進む中、幸村の行方は!? 次回へ続く。 |
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つづく |