第20話「陽気なゴリラだったのに」


ばさらの森武闘会。Cブロックの第ニ戦が始まろうという頃。

政宗「ち…しかし探すっつっても粗方は見て回ったしな…。これ以上捜索範囲広げてもキリがねえな」
慶次「政宗〜ッ!!」(抱きいっ)
政宗「うおっ!? て、てめ…!!」←勢いよく抱きつかれて不覚にもよろめいた
慶次「俺負けちまったよ〜! ちくしょー、絶対負けちゃいけなかったのによ〜ッ!!」(パタパタ尻尾振りながらぐりぐりと胸に鼻擦り付け攻撃)
政宗「こ、この…っ。いい加減、離れろっ! うっとうしいっ【殴】!!」
慶次「イテッ!!」(頭を思い切りがちこんされた)
政宗「ったく…このデカ犬が…!」
慶次「ううう…相変わらず政宗は俺には冷たい…」
政宗「はあ!?」
慶次「ちっとは慰めてくれたっていいじゃねえか。初戦敗退だぜ? こう見えてかなりショック受けてんだけど、俺」
政宗「知るか。負けたのはテメエが……そういや、お前の相手」(がさごそと懐からトーナメント表を出す政宗)
慶次「うん。黒獅子のお市ちゃん。初っ端から女の子と対戦なんてツイてねえよ、まったく」
政宗「…どういう負け方したか知らねェが、甘いぜ? 勝負に男も女もねーだろ。絶対負けらんねえ戦いなら、どんな手を使ってでも勝たなくちゃな」
慶次「えっ、何それ〜。政宗ってそういう考えの人だったの?」
政宗「フン。…それより、お前犬なんだから幸村の捜索を――」
慶次「政宗っ!」
政宗「な…んだよ? 突然シリアスな顔しやがって…」
慶次「俺がいたCブロック。竹中半兵衛」
政宗「うん?」
慶次「あいつには気をつけろ…。勝つ為なら…ってのは、まさにあいつの常套句なんだ。勝ち進む為ならどんな手を使ってくるか分からねえ」
政宗「……ふうん?」
慶次「あいつは今回の大会で秀吉を勝たせる為にそれこそ何か仕掛けてくる。勿論実力のある奴だし、真っ向に戦ってくる事もあるだろうけどな。――けど、心配なんだ。特に、俺が負けちまったせいでお市ちゃんの次の相手は半兵衛になっちまったし。ホントは俺が闘る予定だったのに…ッ」
政宗「珍しいな、お前がそんな熱くなるなんて。どんな因縁があるんだよ?」
慶次「………」
政宗「……? 別に言いたくないってなら、無理には訊かねェけどな? それによ、市…だっけ。次って言っても、その半兵衛って野郎だって初戦があるだろ。相手どんな奴か知らねーけど、そいつに負けるかもしれねーじゃねーか。今回の大会は大番狂わせが多いらしいしよ」
慶次「いや…。あいつがこんな所で負けるなんてありえねえ…」

秀吉「その通りよ……」

政宗「ん…?」
慶次「秀吉…っ!?」
秀吉「慶次よ…。無様だな」
慶次「!」
秀吉「あのような情けない戦いを我に見せおって…。負け犬に用はない。さっさとこの森から立ち去るが良い」
慶次「お前のやる事を見過ごして…こっから逃げられるわけないだろうが!」
秀吉「フン……」
慶次「……ッ」
政宗「……何か妙な火花が散ってるようだが…俺は行っていいんだよな?」
慶次「秀吉ィッ! そう簡単にお前の思う通りに事が運ぶなんて思わない方がいいぜ? 俺は負けちまったけど、コイツ! まだ政宗がいるからな!」
政宗「は?」
秀吉「む……」(ぎろりと政宗を睨む)
慶次「お前の間違った考えはこの政宗が正してくれるさ! きっとな!」
政宗「おい…お前は何を勝手な事をほざいて――…」

――その時、ワアと一際激しくなる武闘会場――

政宗「何だ…?」
秀吉「ふ…。どうやら、我の半兵衛が勝ったようだな」
慶次「く…!」
政宗「もう試合が終わったってのか? まだ始まって5分も経ってないと思うが…」
秀吉「我と半兵衛に並ぶ力の主などこの森にはおらぬ…。愚弄な惰弱者共など、ことごとくちぎって捨て去ってくれるわ…!!」(のっしのっしと去っていく秀吉)
政宗「…前から思ってたけど、あいつって結構アブナイ野郎だな」
慶次「ちくしょう!」
政宗「What!? 何だよ、びっくりさせんな…!」
慶次「秀吉は前はあんな奴じゃなかったのに! 本当によ、陽気なゴリラだったんだ! いっつもバナナばっか食ってるような! うちのまつ姉ちゃんとこで飯ばっかたかるような大喰らいゴリラ!!」
政宗「そ、そうなのか…?」
慶次「それが! 何だってあんなに力、力って…! っくしょう、やっぱ俺がぶっ飛ばしてやんねえとあいつは目が覚めねえのか…!」
政宗「もう試合関係なしにぶっ飛ばしてきたらいいんじゃねえか?」
慶次「政宗っ!」(がしいっと両肩を掴むワンコ慶次)
政宗「な、何だ!?」
慶次「後は頼んだぞ!」
政宗「……人任せかよ(汗)」

――またしても他所の動物関係トラブル?に巻き込まれ、立ち往生の政宗。
幸村はどうなったのかと謎を残したまま、次回へ続く!
(そして半兵衛vsザビーの正確な試合結果も次回に続く…!)




つづく



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