第2話「ふわふわオムレットサンド!」



片倉「ここが政宗様のお部屋にございます」
政宗「ベッドと電話しかねーじゃねーか」
片倉「ここでは全て政宗様のお好きなようにして頂ければ宜しいかと思いまして。敢えてこのようにしております」
政宗「なーるほど。コーディネートも全部自分で…って事か」
片倉「お気に召しませんか」
政宗「いーや、お気に召したぜ? さすがは小十郎だ。レッサーパンダだけどな」
片倉「はははは! 常のお食事はそのレッサーパンダ小十郎にお任せを。あちらの小十郎は洗濯と掃除を引き受けると申しておりました」
政宗「ん、そっか。じゃあ俺はデザート係にでもなるかな?」
片倉「デザート、ですか?」
政宗「ああ。何つーか、ここではホントのんびりするって決めてんだよ俺は。向こうの世界じゃ天下統一だ何だって忙しねェからな」
片倉「左様で。この森には色々な果物がなっておりますし、蜂の巣も多いですから蜂蜜もとり放題ですぞ」
政宗「へえ、そりゃ楽しみだな! 少し休んだらこの辺り散歩してみるわ」
小十郎「政宗様ー。お茶の用意が出来ましたー!」(階下から声を掛けてくるコミックス版こじゅ)



片倉「ほう、これが今あちら側の流行り菓子ですか。これは珍しい」
政宗「まあ、何も土産がないのも悪いと思ってな。こんなんしか持ってきてねーけど」
片倉「お心遣い痛み入ります。……ん、これは美味い!」
政宗「そいつは良かったぜ」
小十郎「政宗様も召し上がって下さい。ハーブティも」
政宗「ああ。………しかし落ち着かねーな(汗)」
小十郎「そ、そうですね……」(苦笑)



小熊幸村「じいいいいいい〜……」(窓の外から覗き見)
佐助「真田の旦那。偵察するなら、もうちょっとバレないようにしたら?」
小熊幸村「佐助、一体あの人間は何を食しているのだろうか? 気になるな…何やら良い匂いがするし」
佐助「さあねー。都会人だからイイもん持ってきてるんでしょ。それより、もう帰らない? 皆もう帰ったのにさー」
小熊幸村「もうちょっと! もうちょっとだけ見ていこう!」



政宗「あ〜もう我慢出来ねェ!」(ガタリと椅子を蹴って席を立つ政宗)



幸村「……ッ! あ、こっちに――」
佐助「だからバレバレなんだってば」
政宗「おい、お前ら」
幸村「な…何だッ!?」(ずざざと警戒したように後ずさり)
政宗「何だじゃねーよ。あのな、人んちをじろじろ覗くな。そういうのはマナー違反だ」
幸村「ま、まなあ…??」
政宗「マナー違反! ……ったく、しょーがねえな。おい小十郎!」
小十郎「はい政宗様」(勝手知ったるように包みを差し出す)
幸村「な……?」
政宗「ほらよ」(包みの中の物を無造作に取り出して窓から幸村に突き出す)
幸村「あ…」
佐助「何コレ?」
政宗「オムレットサンドだ。生クリームの中に刻み栗も入ってるからうめーぞ」
小十郎「スポンジもふわふわなんですよね、ここの」(にっこり)
幸村「さ、佐助…っ」(オロっとしたように佐助を見る)
佐助「折角くれるって言うんだから貰いなよ。食べてみたかったんでしょ?」
幸村「し、しかし…見知らぬ人間から物を貰うなど…!」
政宗「おいおい、俺は政宗だって言ったろ。アンタは小熊の幸村だったな。もうお互い知り合いだ。遠慮してねえで食えって。顔に食いたいって書いてあんだから」
幸村「な…そ、某は…ッ!」
佐助「旦那が食べないなら俺サマが食べるよ?」
幸村「だ、駄目だっ!!」(ばくりっ)
政宗「ふ……。どうだい?」
幸村「…んぐ。むぐむぐむぐ……。ごっくん。………」
佐助「旦那?」



幸村「う、う、美味い……!!!!!!!」(キラキラキラ〜)



政宗「ははっ。だろ? まだあるぜ、食うか?」
幸村「よ、良いのでござるかっ!?」
政宗「ああ、いいぜ。どんどん食えよ。どうせなら中入って茶でも飲んでけ」
佐助「あ、なら俺サマもー♪」
小十郎(政宗様…もうどうぶつ達を餌付けされるとは…ご立派になられて……ほろり)



政宗「んー…。何つーか。やっぱ変な所だな、ここ」



――とは言いつつ、菓子を頬張る小熊幸村を見る政宗の目は、とても優しいものがあった。




つづく



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