第21話「事件…!?」


ばさらの森武闘会。Dブロックの第ニ戦が始まろうという頃。

小十郎「政宗様」
政宗「お、丁度良かった。Cブロックの試合はどうなった。竹中半兵衛って野郎が勝ったのか」
小十郎「はい…。それが、対戦相手のザビーなる異教徒が突然自らの負けを宣言しまして」
政宗「何…?」
小十郎「交戦の合間、ほんの一瞬ですが竹中が異教徒に何事か囁いているようではありました。その直後、奴が自身の負けを宣告したのです」
政宗「……何かあるな。あの竹中半兵衛って野郎、どうにもキナ臭ェ」
小十郎「おや」
政宗「ん…何だよ」
小十郎「政宗様は今回のこの大会には何も興味がないのだと思っておりました。幸村殿の頼みで仕方なく、と」
政宗「そうだが?」
小十郎「ふふ…。その割には…何かムキになっていらっしゃるようにもお見受けするのですが」
政宗「チッ、厭味な野郎だな! まぁ、ちっと暇してた分、悪い癖が出たってところだろ!」←ちょっと照れくさい様子
小十郎「いいえ、それでこそ政宗様です。本格的に目覚めた竜の力、この森の者たちに知らしめておくのも…元の世界へ帰る前の肩慣らしには丁度良いかと存じます」
政宗「おっかねえな。お前がそういう企み顔すると怖ェんだよ。もう行くぞ! 俺らの試合まではまだ間があるし、一旦帰ろうぜ。幸村も腹空かせて戻ってくるかもしれねェ――」

佐助「旦那ァ〜! 独眼竜の旦那ッ! 大変だッ!!」

政宗「ん……真田の忍」
小十郎「どうされたのですか。真っ青な顔をされて…」
佐助「さ…真田の旦那が見つかったんだッ! お宅ンとこのパンダ小十郎サンが森の奥で倒れている旦那を見つけてくれて…ッ!」
政宗「倒れてた!? 何かあったのか!?」
佐助「詳しい事は俺サマもこの伝書烏に聞いたばかりだから分からないッ! けど今、真田の旦那は独眼竜の旦那ン所に運ばれたらしい…! 怪我もしているみたいで…!」
政宗「怪我だと…ッ!?」
小十郎「一体何が…」
佐助「俺サマはこのこと大将にも報告に行かないといけないから、後から行くよ! とにかく、旦那は真田の旦那の所へ早く行ってやっ――」
小十郎「政宗様ッ!」(佐助の話も途中に走り出す政宗。それを慌てて目で追う小十郎)
佐助「……命に別状はないらしいけど、随分派手にやられているらしい。真田の旦那にそんな傷を負わせられる奴、この森には大将くらいしか思いつかないよ。けど…」
小十郎「……?」
佐助「ああいう性格だからね。まっとうな勝負で真田の旦那と肩を並べられる奴はいなくとも…何か卑怯な手を使われて、心を乱されるような事があれば―…」
小十郎「は…ッ!?」(佐助の異変と突然の殺気に振り返る小十郎)

濃姫「あら…。武田の飼い猿に、もう一匹は……異世界から来た人間ね」

佐助「濃姫…織田信長の正妻だよ」(ぼそりと小十郎に耳打ちする佐助)
小十郎「貴女が…この森の裏社会を支配せんと欲する信長公の…」
濃姫「……その表現は的確ではないわね。上総之介様が支配する世界に表も裏もない…。そしてその支配は欲するまでもなく、既にあの方の掌中にあるのだから」
佐助「そんな事、この森の動物たち誰も認めてないだろって。勝手なことを言うのはやめてくれるかなぁ!?」
濃姫「ふふ…威勢の良いお猿さんだこと…。でも、いつまでそんな強気の態度でいられるのかしら? そちらの大将は早々初戦敗退…。そして、その大虎の懐刀の姿も見えない…」
佐助「!? お前…! もしかして真田の旦那に…!?」
濃姫「……何の話かしら。兎に角、武田が大きな顔をしていられるのもこの大会までよ…。勝利は我が織田軍、上総之介様のものなのだから…!」(言い捨てて去っていく女狼)

小十郎「……凄まじい殺気。どうやら私の方まで敵認定されてしまったようですね」
佐助「悪いね。けど、織田軍が要注意勢力だって事は前にも話しただろ? 別に俺サマたちとつるんでなくたって、“異世界から来た人間”なんて、最初っから魔王が目をつける理由には十分だよ」
小十郎「なるほど。あの女は信長公が支配する世界には“表も裏もない”と言っていた。この森での支配を完遂させたら、次は我ら人間界というわけですね」
佐助「そういうこと」
小十郎「それにしても…気になる眼をしていました。幸村殿の事も何か知っている風な…」
佐助「実は俺サマも思い当たる野郎が1人いるんだ…」


政宗(幸村…! あいつ、一体何やってんだ…!!)←一足先に幸村の元へ疾走中



――その頃、既に試合の始まっている会場では――

審判「……ッ!!」←あまりの恐ろしさに声が出ない
信長「……フン! つまらぬ……」(剣を勢いよく仕舞い、足元の相手を冷酷に見下ろす)
顕如「………」←既に気を失っている
審判「は…ッ!? しょ、勝負あり…ッ! 本願寺顕如選手、戦闘不能、よってDブロック第2戦の勝者は織田信長公…ッ!」
蘭丸「やったあッ! 信長様カッコイイー!! へっへーんだ、だあれも相手になんかならないねッ! 瞬殺だよ、瞬殺ッ! あ、でも殺しは出来ないんだった。つまんないのー!」
信長「このような者では我の乾きは癒えぬ…! 誰ぞ、出てくるが良い…! この第六天魔王が剣に美味き血を吸わせよ…!」

半兵衛「……そんなに急かさなくても、もうすぐ吸わせてあげるよ。君自身の血を、ね……」(会場の端から試合を臨み、不敵に呟く半兵衛)


――全てのブロックで第2戦が終了! そして幸村は!? 次回に続く!!




つづく



戻る