第23話「見舞い」
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ばさらの森武闘会。Bブロックの第三戦が始まろうという頃。 政宗「………」 小十郎「政宗様、少し休まれてはどうですか。真田もまだ目覚めそうにありませんし」(ベッド脇でじっとしている主に心配そうに声を掛けるパンダ小十郎) 政宗「……俺の事は気にすんな。それよりお前、試合はまだだったか? ここにいても平気なのかよ」 小十郎「この小十郎は政宗様よりも後、Cブロックの4戦目ですよ。そして相手は――明智の野郎です」 政宗「! そう…だったな」 小十郎「真田が目覚める前に片をつけてきますよ」 政宗「………そうか」 小十郎「……それとも政宗様が御自ら、奴を討ちたいとお思いですか」 政宗「……そうだな。何だか分からねェが……妙な、気分だ」 小十郎「妙な?」 政宗「こいつ見ても、ちっともあの真田幸村って気がしねェ…。けど…こいつが怪我してて、こうして倒れてて…それが、あの明智のせいだと思うと……胸糞が悪ィ」 小十郎「政宗様…」 政宗「よく分かんねェ! まあ、試合の事は気にしなくていい。お前が奴をぶっ倒す事になってんだ、気にしねェで叩きのめせ。手ェ抜くんじゃねーぞ!」 小十郎「ふ……承知!」 ピンポーン。 小十郎「む…?」 政宗「誰だ? 人間の方の小十郎か?」 小十郎「いえ、あいつではないでしょう。もう直、試合のはずですから。…それはこの真田もそうですが」 政宗「そういや、小十郎は幸村との対戦だったな…。幸村はとても試合どころじゃねェだろうが」(未だ深い眠りに入っている幸村を見つめる政宗) 小十郎「誰だ? ……む!」 松永「突然の訪問、誠に申し訳ない…」(薄っすらと笑う奇怪なワニ登場。尻尾がやけに長い) 小十郎「貴様は…」 松永「こちらに真田源次郎幸村殿が瀕死の重傷を負って運ばれたと聞き及んでね…。これは私からの見舞いの品。どうかお受け取りのほどを」(すっと差し出されたのは何の変哲もない紙袋。中には折り詰めのような物が垣間見えるが…) 小十郎「松永久秀…。普段は村外れで骨董集めに精を出している動物嫌いのワニだな。そんな貴様が何で真田にこんな真似を?」 松永「ふ……確かに私は動物が嫌いだ。だが脱皮し、人間に孵った変わり種には大いに興味がある…。珍しい物には目がないのでね」 小十郎「………」 松永「無論、その逆の貴殿にも」 小十郎「お帰り願おう。その品も受け取る事は出来んな」 松永「毒など入っていないがね。動物から人間への変化には身体にも大きな負荷がかかる。これはそれを和らげる為の良薬だ」 小十郎「信じられんな。第一、真田にそれをしてやり、貴様に何の得がある?」 松永「言っただろう? 興味だよ。大いなる興味、それだけだ。……いや、もう一つ。この大会をかき回す存在として、彼にはまだ働いてもらわねばならん。……それは卿らも同じだ。なぁ、独眼竜?」 小十郎「…ッ! 政宗様…!」(ハッと振り返ると、その背後にはいつからいたのか政宗が立っていた) 政宗「……アンタが松永久秀か。如何にも大食らいって感じの口だな」 松永「ふ…その通り。貪欲だよ私は……欲しい物は全て飲み込む。何の躊躇いもなくね…」 政宗「小十郎、そいつは貰っておきな」 小十郎「政宗様ッ? しかしこいつは――」 政宗「Don not worry! 心配すんな。今のこいつは、何も出来やしねえ。だからこそ動く駒が必要なんだろうよ」 松永「……独眼竜。貴殿とも是非合い間見えたいものだな。無論、正々堂々とはほど遠い、修羅の世界で、な……」 政宗「Ha! 気色の悪い野郎だぜ。……帰りな。幸村はともかく、俺たちは試合を放棄したりしねえよ」 松永「……そのようだ。では、私の方が試合が近いのでね。失礼する」(言って静かに去っていくワニ久秀) 小十郎「政宗様、一体…? あの者は織田や豊臣ほどの勢力はありませんが、明らかにばさ森転覆を謀っている曲者…! 何故…」 政宗「まぁ、やばそうだったら捨てりゃいいじゃねえか。……けど、半分は本当だろうぜ。この大会。いよいよきな臭くなってきやがった」 ――その頃、武闘会会場では。 蘭丸「わああん、何だよーっ! 離せ、離せったらーっ!」 まつ「なりません。悪い子はお仕置きです。五郎丸、ちゃあんと押さえておくのですよ? はい、ぺんぺん!」(熊の五郎丸に蘭丸を抱かかえさせ拘束した上で、お尻ぺんぺんの刑にしているまつ殿) 蘭丸「いったあい! 痛いってば! ひいっ! いてっ! ひあっ!」 まつ「まだまだです! それ、ぺんぺん!!」 蘭丸「鬼〜! 鬼嫁〜!」 まつ「まあ! 全ては蘭丸君、貴方が悪いのですよ。武士たるもの、正々堂々と戦うべきところを、よりにもよって闘技場に蝋を塗っておこうなどと…!」 蘭丸「ふ、ふん! 勝つ為には腕っぷしだけじゃ駄目さ! 策も弄さないと…! いてっ!」 まつ「それでもやり過ぎです! 全く、貴方のせいで犬千代様があのような負け方をしてしまったのね。もっと早くに気づいていれば…!」 蘭丸「もっと後で気づけば良かったのに〜!」 まつ「ともかく、お仕置きです! 覚悟!」 蘭丸「ひ〜!!」 …どうやら、蘭丸の「ずるっこ大作戦」がまつ様には通用しなかった模様…。 無敵の嫁さんパワー炸裂で、この勝負まつ様の勝利! 眠ったままの幸村の行方は!? 以下次号…!! |
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つづく |